こくほ随想
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「国保も公法人化の検討を」政管健保は都道府県単位で再編 来年度の医療保険改革に向けた議論が本格化し始めた。社会保障審議会医療保険部会は、三月、四月と健康保険における保険者のあり方について審議を行い、政管健保については都道府県単位に再編する方向でまとまりそうな気配である。平成十五年三月に閣議決定された医療保険制度改革に関する「基本方針」では、「政管健保については、事業運営の効率性等を考慮しつつ、財政運営は、基本的には、都道府県を単位としたものとする」と述べられており、医療保険部会の議論もこれに沿ったものとなっている。
政管健保のあり方については、同じ社会保険庁が所管している年金の組織のあり方とも密接に関連するので、最終的にどうなるのかを見通すのは難しいが、都道府県再編論の背後には、現在のような政府が管掌する全国一本の保険制度では、自主性・自律性のある保険運営が行えず、保険者機能が発揮しにくいという認識があるようである。
見えない国保改革議論 では、国保保険者のあり方はどうなっているのだろう。基本方針では、「都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指す」と述べられているが、三位一体改革に関連して国保の都道府県負担が導入されたほかに目立った動きはないように思われる。国保の場合、保険者=市町村であるため、市町村合併が進行中の状況下では、国保独自で再編を進めにくいという事情があるのかもしれない。基本方針でも「「市町村合併特例法」の期間中は、市町村合併の推進や事業の共同化等により、保険運営の広域化を図る」として、市町村合併にゲタを預けた形になっている。
代表の同質性が問題な市町村国保 しかし、そもそも現在の国保保険者のあり方が自主性・自律性ある保険運営にふさわしいものかどうか疑問である。昭和十三年の国保法制定当時は、市町村の住民も普通国民健康保険組合に加入することになっていた。その後、敗戦後の混乱の中で崩壊の危機に瀕した国保を再建するため、昭和二十三年の改正で市町村公営原則が打ち出され、市町村が国保の実施主体になった。しかもこれは、政管健保と国保を地域組合に統合するまでの当面の対策とされていた。
市町村公営原則の最大の問題は、被保険者の範囲と意思決定機関=市町村議会に代表の同質性がないという点である。国保は、農業・自営業等の被用者以外の者(非被用者)を対象とする保険であり、したがって非被用者が保険料を負担し、その代表が保険料率等を決めるのが筋である。しかるに現在の国保では、被用者も含めた全住民によって選ばれた議員で構成される市町村議会で保険料率や任意給付等を決めている。これは、受益者=負担者の意思で給付と負担のあり方を自主的・自律的に決定するという保険者自治の考え方からは極めて変則的な姿であり、誰が最終的な負担者で、誰が最終的に制度運営に責任を持つのかを曖昧にしてしまうだけでなく、国保運営の責任を市町村という一般行政主体に不当にしわ寄せすることにもつながる。国保への一般会計繰入れは、この意味でも問題である。なぜなら、住民税という形で全住民が負担している一般会計予算を、非被用者という特定の範疇の者を対象とする国保制度に使用することになるからである。
国保も公法人化の検討を このように、現在の国保保険者のあり方には問題がある。保険者機能を発揮しやすくするための再編・統合という観点からは、国保についても市町村と別個の公法人とするなど、保険者のあり方を根本から検討すべきではなかろうか。これによって、代表の異質性が解消されるだけでなく、都道府県等広域的な単位での国保再編への道も開けることになる。
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