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介護予防事業モデル事例 | ||
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人口:42,463人 高齢化率:14.4% 保健師数:3名 | |
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1. 師勝町の概要 2. 事業の背景 |
3. 事業の内容 4. 今後の課題 |
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師勝町は濃尾平野のほぼ中央に位置し,平均標高5メートルの平坦な地域で,東西3.1km,南北4.2km,面積8.39km²です。名古屋市の北部に隣接していることから,名古屋市のベッドタウンとして発展してきました。 昭和40年代急速に人口が増加し,農村的形態から都市的形態の町へと変容をとげ,毎年人口が増加を続け,平成15年1月現在では4万3千人を超える愛知県下有数の町となっています。 高齢化率は14%台で,県下でも比較的若い町の部類に属しています。しかしながら,寄る高齢化の年波には逆らえず,昨今は毎年約1%の割合で高齢化率が上昇し続けています。 |
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普段の日常生活の中で高齢者は,家族や周囲の人が忙しく,自分の昔話などにゆっくりと耳を傾けて聴いてくれる人もなく,またそのような機会がほとんどない方が多いと思われます。高齢者の多くの方々は,現在の社会の速い流れについていけず,置き去りにされている状況にあります。そのような中にあって,自分を受けとめてくれる良き聞き手が現れ,話すことが出来る機会や場があれば,多くの高齢者にとって日常生活が活き活きとしたものになると考えられます。
そこで,師勝町では,平成14年度から「回想法」を介護予防・痴呆予防を図る保健福祉活動に位置づけ,師勝町回想法センターを拠点に「思い出ふれあい事業」と称して先駆的に取り組んでいます。 |
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本事業を立ち上げるにあたり,初年度(平成14年度)に次のことを実施しました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1)師勝町回想法事業運営委員会の設置 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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事業の円滑な運営を図るために,回想法に携わる学識経験者,ボランティア,職員などから成る師勝町回想法事業運営委員会を発足しました。本町の福祉部長を委員長に,事業計画の審議,回想法スクールの運営や効果測定の検討,事業評価,次年度の計画等について協議しました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2)回想法スクールの開催 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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平成14年度は,回想法センターが建設中であったため,師勝町の歴史民俗資料館で回想法スクールを開催しました。スクールは,週1回の教室を連続8回,各回ともテーマを決めて実施しました。参加者は65歳から85歳までの高齢者で,それぞれの健康状態に応じて3グループ(組別)に分けて行いました。 まつ組:介護が多少必要な方・・・・・・・・・・・・・8名 たけ組:虚弱または外出の機会が減ってきている方・・・9名 うめ組:健常な方・・・・・・・・・・・・・・・・・・9名 |
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1回の教室の所要時間を60分として実施しました。最初に20分程度のテーマに沿ったビデオ(テレビ回想法)を視聴し,その後,リーダーにより,そのテーマに沿って参加者と懐かしい用具を手に取りながら語り合うグループ回想法を実施しました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3)ボランティア団体の育成 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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回想法事業を実施するにあたり,回想法スクールを補助してもらうためのボランティア団体の育成は必須です。師勝町には,住民参加型のボランティア団体「在宅介護・家事援助の会 YOU・愛」があり,こちらに協力をお願いしたところ,気持ちよく引き受けていただくことが出来ました。ボランティアスタッフの方々に回想法スクールでコリーダーを努めてもらえるよう,回想法を習得してもらいました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4)効果調査,事業の評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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回想法には,まだ確立された効果の参酌数値や事業実績が少ないことから,本町での回想法スクール参加者の効果の実態をみるため,効果調査を行いました。14年度は,4種の認知機能スケール,3種の行動観察評価スケール,閉じこもり度,抑うつ度,QOL評価,介護負担度を測定しました。また,3グループそれぞれにコントロール群を設け,同様の測定をし,比較も行いました。 要介護グループでは,介護負担が軽減される可能性が得られ,閉じこもりがちな虚弱者のグループでは,閉じこもりの改善やQOL向上が期待できる可能性が得られました。健康なグループでも,認知機能や抑うつ傾向の改善の可能性が示唆されました。 それらを集計した結果を運営委員会に報告し,委員会は様々な視点から検討を加え,最終的に効果の考察を行いました。ほとんどの項目に右肩上がりの結果を得て,良い事業評価へとつながりました。 |
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5)教材の開発 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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本事業では,初年度の事業実績を形あるものに記録しようと,そして,そのもの自身を活用できるものにしようと,本町事業の紹介用と回想法実践用の2種類のビデオと,実践に応用できたり,一人で楽しむことができる教科書を作成しました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.ビデオの作成 ・本町事業の紹介用ビデオ「思い出ふれあい(回想法)事業」 →本町の平成14年度回想法事業のあゆみを紹介 ・回想法の実践ビデオ「師勝町で探す懐かしい話 魚とりの巻」 →回想法で実際に用いるテレビ回想法用ビデオ 2.教科書の作成 ・「昭和のキオクの小片思い出ふれあいハンドブック」 →見て,さわって,読んで,使って楽しめる回想法に関するテキストブックを作成 |
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6)シンポジウムの開催 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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回想法の意義,事業の取り組みを多くの人に知ってもらうため,平成15年1月26 日(日),師勝町民総合体育館で,「時をつなぐ,人をつなぐ,地域をつなぐ」をテーマに師勝町回想法シンポジウムを開催しました。 定員を大幅に超える参加者(500名)があり,回想への関心の高さが示される熱気ある大会となりました。 |
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平成14年度の事業実績から,回想法の効果について,参加者の声や表情,そして効果測定値から良い結果を得ることができました。さらに,家族介護者の負担軽減,回想法スクールに参加した人としない人との間に効果の面で有意差がみられたなど,様々な角度から検証を行ってきました。 この結果を踏まえて,平成15年度は,地域に出向いて回想法スクールを開催するなど回数を増やし,より多くの高齢者の方々に回想法を享受していただくことを主眼に取り組んでいこうと考えました。 また,回想法センターを有効的に活用し,回想法の普及啓発を図るため,基礎研修の開催,教科書やビデオなどの教材作成,回想法キットの貸し出しを行うなど,全国へ回想法を発信していく責務を果たしていきたいと考えています。 |
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1)回想法スクールの継続実施 | ||
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健康高齢者を対象に年間4クール(各8回コース)のスクールを実施しています。スクールの後半には,テーマを参加者が決められる回を設けたり,最終回には感想をまとめる作業を取り入れるなど,内容の工夫をしています。スクール終了時には参加者個別に「介護予防プラン」を渡し,介護予防の継続を図っています。 | ||
2)回想法センターの開館 | ||
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当町の六ツ師地区にある国登録有形文化財の旧加藤家住宅内に,師勝町回想法センターを開設しました。旧加藤家は,明治時代に建てられた和風木造平屋建ての家屋で,主屋・離れ・茶室を備えており,回想法を実践するのに適していると考えたからです。回想法センターは,回想法スクールの開催をはじめとした,回想法の実践,研修,普及促進の施設として,その役割を担います。また,施設内には懐かしい玩具などを常備し,子ども達も集える世代交流のサロンとしての役割も果たし,健やかで活力のある地域づくりを推進する施設でもあります。
また,回想法センターは,お年寄りから子どもまでが集える世代間交流のサロンとして地域に開放しています。 |
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3)専任指導員の配置 | ||
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回想法センターに,回想法を習熟している専任指導員(心理カウンセラー)を配置し(週2回),来客者への説明,紹介を行っています。また,当指導員には,回想法スクールのリーダーも担当してもらっています。 | ||
4)教材の開発 | ||
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昨年度に続き,回想法教科書(第2集)及び実践用ビデオ(回想法キットを楽しむ内容)を作成します。 | ||
5)回想法基礎研修の開催 | ||
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多くの人に回想法を習得してもらい,普及を図るために,回想法基礎研修を開催します。 | ||
6)回想法キットの貸し出し | ||
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回想法の普及促進を図るため,「小学校の思い出」「身近な暮らしの品々」など多様なジャンルの内容の懐かしい生活用具や玩具などを詰め込んだ箱(キット)を開発し,施設,自治体などへ貸し出します。 | ||
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7)歴史民俗資料館の活用 | ||
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師勝町には,昭和時代に使われていた生活用具や食品,各種資料などを集めた「昭和日常博物館」と呼ばれている歴史民俗資料館を開設しています。博物館の懐かしい情景展示や資料が,高齢者のケアに一つの役割を果たすことは,これまでの来館者の笑顔から実証され,また,「思い出ふれあい(回想法)事業」の中でも,効果測定の結果,有効性が確認されました。
したがって,高齢者ケアとして博物館を活用するシステムが各所で確立されることが期待され,また,博物館のアウトリサーチ,あるいはキオクを誘発する実物資料の貸し出しを行うことにより,より広い場で博物館資料の活用が想定されます。 本館では,貸出用の回想法キットを,館内,回想法センター等で活用するとともに,積極的に外部への貸し出しを行う計画で,博物館と福祉,医療機関と連携してその運用を始めています。 また,博物館などに展示協力を行うことにより,普及活動にも力を注いでいます。 いずれにせよ,高齢者ケアの古くて新しいツールである懐かしい実物資料は,既に多くの博物館が抱えています。回想法を軸として各地で博物館と福祉と医療の連携を図ることができれば,高齢者ケアの新しい可能性が広がっていくと考えられます。もちろん,博物館側が高齢者ケアについて理解を深めることも不可欠で,本館の活動がそうした一翼を担えればと考えています。 |
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回想法は,対象の健康レベルに関係なく,その有用性が示唆され,また,高齢者にとって負担が少なく,楽しく参加できるなど,介護予防のツールとして有効で活用しやすいと考えられます。15年度からは,ミニデイサービスの活動メニューにも回想法を取り入れています。また,スクールの修了者は「いきいき隊」員に任命し,介護予防活動の継続性と組織化を図っています。 今後は介護予防事業としての充実と共に,若い世代にも回想法を普及させ,世代間交流やボランティア育成などを進め,生きがいのある町づくりにつなげていきたいと考えています。 |
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調査員:全保協専門委員 竹澤 良子 ヘルスケア総合研究所 正代 剛一 |
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