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「健康日本21地方計画」推進活動モデル事例
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住民主体の健康づくりを目指した地区組織の育成・推進
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島根県益田市 人口:49,998人 高齢化率:25.8% 保健師数:4名
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1. 益田市の概要
2. 事業の背景
3. 保健師の役割
4. 事業の成果と課題
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益田市の概要
  1)位置
 益田市は,島根県の最西端にあって山口県と接しており,北は日本海を望み,南は中国山地がつらなり,海と山の自然に恵まれた山陰と山陽を結ぶ交通の要衝地です。
2)地勢
 益田市は,高津川と益田川の流域に形成された三角州状の平野を中心に市街地が開け,海岸は白砂青松の石見潟を形成しています。
3)面積
 東西28.85km,南北22.55km,面積300.44km²(平成12年10月1日現在)で,県内では第2位の広さです。
4)気候
 日本海を流れる暖流の影響を受けて気候は温和で,平成13年(2001年)の年平均気温は15.7℃であり,年間の降雨量は1,683mmです。
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事業の内容
   益田市では,昭和58年から住民主体の健康づくりを目指して,地区組織の育成・推進を図っています。平成10年には,地区の健康づくりの組織から成る「益田市健康づくり連絡協議会」が設立され,平成12年には市内15全地区に健康づくりの組織が設立されました。国から健康日本21が示された中,これまでの活動の評価をしたい,これまで行ってきた各地区の活動を基盤にしながら,健康づくりを全市的な活動に展開したい,今後の方向性(視点・評価)を明確にしたいという思いから,「健康ますだ21」計画策定に取り組みました。
   
space 1)健康行動調査の実施
   平成12年10月に市内全地域における健康行動調査を実施しました。益田市全人口の10%に相当する4,007名の市民を対象に調査を実施し,3,086名から回収がありました(回収率77.0%)。調査内容は,次の7本を柱として設定しました。

 1. 栄養・食生活について
 2. 運動について
 3. ストレスについて
 4. たばこについて
 5. 酒について
 6. 歯の健康について
 7. 糖尿病について

 健康行動の状況を地区別に分析し,地区による健康に対する意識の違いや健康状況の違い等が明らかになりました。
   
space 2)「健康ますだ21」の計画策定
   平成13年3月に,上記の健康行動調査の結果を基にして「健康ますだ21」の計画を策定しました。行動目標を「栄養・食生活をバランスよく」「体を動かそう」「体と心にやすらぎを」「たばこ・酒を減らそう」「歯や口腔を大切にしよう」の5本に設定しました。
   
space 3)健康ますだ21推進協議会及び3つの専門部会設立
   平成13年6月に,「健康ますだ21」を積極的に推進すべく,健康ますだ21推進協議会を設立しました。同協議会は活動の推進母体であり,15地区の健康づくりの会と保健,医療,福祉,教育,環境,経済などあらゆる分野の関係機関・団体・民間業者を取り込んだメンバーで構成されています。活動は,推進協議会主体の専門部会と健康づくりの会が主体の地区活動の2本柱で行っています。
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space  専門部会は,「栄養・食生活と歯科保健」「たばこと酒」「運動とストレス」に分けた3部会に分かれ,健康づくりのための環境整備の確立を目的に活動を展開しています。
 各部会の主な活動は次の通りです。
   
space 栄養・食生活と歯科保健部会
 
 食や口腔についての正しい情報が,生活の場で住民の取り組みを通じて自然に得られる環境を整備することにより,生活習慣病を予防する。
   
space たばこと酒部会
 
 子どもに対して最初の1本を吸わせないための環境を整備し,子どもの頃からの知識の普及と,家族・地域への禁煙意欲の波及効果を期待する。
   
space 運動とストレス部会
 
 安心して楽しく,そして習慣的に運動を続けることのできる健康づくり環境を整備する。
   
space 4)3部会における10年間の行動計画の策定
   平成13年8月に,3部会における10年間の行動計画を策定しました。行動計画は,初めの3年間を短期,次の3年間を中期,最後の4年間を長期とし,それぞれの最後に評価を行うこととしています。
 行動計画の主な内容は,下記の通りです。
   
space 栄養・食生活と歯科部会
 
1.栄養・食生活をバランスよく
 ○栄養・食生活に関する知識を普及しよう
 ○新鮮で安全な地元の野菜を食べよう
 ○学校への働きかけをしよう
 ○職場への働きかけをしよう
2.歯や口腔を大切にしよう
 ○歯に関する知識を普及しよう
 ○学校への働きかけをしよう
 ○職場への働きかけをしよう
   
space たばこと酒部会
 
1.たばこの問題
 ○たばこについての正しい知識の普及活動
 ○分煙・禁煙の推進
 ○禁煙意欲のある人への支援
 ○小学生からのたばこの健康教育
 ○未成年者への非売の推進
2.お酒の問題
 ○男性の多量飲酒者(日本酒3合以上)
  の減少
 ○1日当たり2合以上飲酒する人の減少
 ○適度な飲酒量を知っている人の増加
 ○未成年の飲酒を無くす
   
space 運動とストレス部会
 
1.体を動かそう
 ○運動する機会をつくる
 ○ウォーキング環境の整備
 ○健康教室の開催
 ○体を動かすことについてのPR活動
 ○職域での運動の取り組みを進める
 ○健康学習の実施
 ○運動するための地域環境づくり
2.体と心にやすらぎを
 ○睡眠についてのパンフレットの配布
 ○地区毎の健康教室の開催
 ○講演会の開催
 ○心の110番相談事業の開設
 ○介護の110番相談事業の開設
 ○相談支援者,労働安全衛生,
  保健センターの利用推進
 ○学校での相談の場の設定
 ○学校開放による地域との交流
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space 5)健康ますだ21計画を基本とした地区版行動計画策定
   益田市では,平成14年3月に,「健康ますだ21」に加えて,市内15地区それぞれについて地区版の計画を策定しました。それぞれの地区が「栄養・食生活と歯科」「たばこと酒」「運動とストレス」の中から年度別に主目標を定め, 各地区のニーズに応じた健康づくり活動に取り組むことにしました。
 各地区の計画の概要は下記の通りです。
   
space 健康ますだ地区21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。地域住民に対する「健康ますだ地区21」の理解と啓発に向けて,PR活動の実施,講演会の開催,健康教室の開催に取り組んでいます。
   
space 健康よしだ21行動計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「たばこと酒」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。地域住民に対する「健康よしだ21」の理解と啓発に向けて,推進員の研修会の開催,パンフレット等の作成,健康教室の開催に取り組んでいます。
   
space 健康たかつ21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「たばこと酒」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。“たばこ”については,“たばこ”についての正しい知識の普及,分煙・禁煙の推進,小学生から“たばこ”の健康教育,お酒については,お酒についての正しい知識の普及,小学生からのお酒の健康教育等に取り組んでいます。
   
space 健康やすだ21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。「健康ますだ21」「健康やすだ21」のPRとともに,健康教室や調理実習の実施,地元野菜のPR,歯の勉強会の開催等に取り組んでいます。
   
space 健康かまて21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。地域住民に対する「健康かまて21」の理解と啓発に向けて,講演会や調理実習の開催,健康教室の開催,地産地消の推進等に取り組んでいます。
   
space 健康たね21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「たばこと酒」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。お酒については,飲酒についての正しい知識の普及,“たばこ”については,分煙の環境整備,小学校の保健委員会との交流等に取り組んでいます。
   
space 健康きたせん21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。「健康きたせん21」の意識づけに向けて,横断幕の作成,チラシの作成・配布等に取り組んでいます。また,食生活については,1日3食の実施,食生活の見直し,歯については,1日2回の歯磨き,1年に1回の歯石除去を推進しています。
   
space 健康とよかわ21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「運動とストレス」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。「歩くことを心がけている人を増やそう」「ストレス解消の手段をもとう」との目的に向けて,健康ウォークの開催,万歩計の貸し出し,ラジオ体操学習会の開催,各種教室の開催とPR等に取り組んでいます。
   
space 健康まさご21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。地区の行事の際に,「さわやかヘルス真砂」についてPRしていくとともに,栄養調査の実施,地元野菜の摂取の推進等に取り組んでいます。
   
space 健康とよた21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。栄養・食生活に関する知識の普及,新鮮で安全な地元野菜の摂取の推進等に取り組んでいます。また,併せて歯に関する知識の普及も推進しています。
   
space 健康たかぎ21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。活動について,広く地域の方々に知ってもらうべく,「健康たかぎ21」や健康な生活をおくるためのためのポイントをチラシにして各戸に配布しています。また,調理実習の開催,20歳代と30歳代の人への朝食摂取の推進,地元野菜の摂取推進,歯についての講演会や教室の開催等に取り組んでいます。
   
space 健康にじょう21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「運動とストレス」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。「体を動かそう」との目的に向けて,今までやってきた活動(登山教室,横山城登山等)の継続支援,ウォーキング環境の整備,健康体操やエアロビクス教室等の開催,スイミング体験教室の継続等に取り組んでいます。
   
space 健康みの21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「運動とストレス」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。運動については,「歩く人を増やすことを中心にすすめていきたい」との考えのもと,歩くことの意識啓発に向けて,成人学級や健康教室などの機会を利用した勉強,健康ウォークの開催等に取り組んでいます。ストレスについては,「趣味をもてるように考えていきたい」との考えのもと,サークル活動の充実に取り組んでいます。
また,サブ目標として,たばこ対策,減塩対策に取り組んでいます。
   
space 健康おの21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「栄養・食生活と歯科」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。食については,食生活についての学習会の開催,体験学習の開催,小野地区に合った模範となる食メニューの作成等に取り組んでいます。歯については,フッ素配合歯磨剤使用の普及,歯磨き励行の勧め,年1回の口腔検査の受診勧奨等に取り組んでいます。
   
space 健康なかにし21計画
 
 平成14〜16年度にかけて,「運動とストレス」を行動目標の主目標に据えて活動することとしています。「体を動かそう」との目的に向けて,声かけによる“歩く人の輪”の拡大,意識啓発の推進,学習機会の作成,運動の機会の増加,歩くこと以外の運動環境の整備等に取り組んでいます。
   
   地区活動は,「栄養・食生活と歯科保健」「たばこと酒」「運動とストレス」から3年ごとに主目標を変えながら10年間で全領域を活動するようにしています。各地区の健康を守る会が会長や推進員を決め,組織として自主性を持ち,公民館や関係団体(食生活改善推進協議会など)が協力し,地区行事のテーマを取り上げたりと,地域特性を生かしながら活動を展開しています。
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保健師の役割
   保健師は,専門部会では部会員として,地区活動では地区担当を持ちながら携わっています。その中で,計画や事業を推進していく上でのコーディネーター役を担っています。事業の主旨が計画と合致するように,計画の再認識をしたり,住民からの反応を皆で共有する,地域の思いや人材を引き出すことで,地域の意欲や自主性が保持されるよう支援しています。
 また,住民とともに事業をすることで,部会員や推進員自身が健康づくりに関心を持ち,自分の健康を振り返るきっかけづくりになるようにしています。さらには,住民からの声やニーズを拾い上げ,施策につなげるようにしています。
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事業の成果と課題
space  成果は下記の3点です。
 
1. 部会活動を通して検討する機会が増え,計画・実施・評価が部単位で行え,目指す方向性が確認できたことにより,達成感につながった。
〜部会活動のまとめ作成〜
2. これまで,一緒に活動する機会の少なかった機関との連携ができ,効果的な活動を推進できた。
〜子どもの料理教室,子ども防煙サミットにおける学校との連携
3. 環境整備をはかり,積極的に情報発信していくことで,住民自身の力をつけるための支援(住民のエンパワメント)を行うことができた。
〜歩き隊申請者・ウォーキング参加者の増加など〜
space  また,これからの課題は下記の4点と考えています。
 
1. 単年の活動に終わらず,部会が主体となって継続した活動を行っていく。
2. 部会活動と地区活動が別々のものにならないよう,部会活動の手法を地区活動へつなげ,地区活動をより活発にしていく。
3. 活動をしただけにならないように,3年ごとの評価をきちんとしていく。
4. 住民のニーズへ効果的な対応をするために,庁内の連携をスムーズにする。
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調査員:全保協常務理事 山田 喜久夫  全保協専門委員 有原 一江   ヘルスケア総合研究所 正代 剛一
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