space space space
space space space
「健康日本21地方計画」推進活動モデル事例
space
住民とともに策定した「いきいき笠岡21」と健康づくり諸活動
space space space
岡山県笠岡市 人口:58,833人 高齢化率:26.1% 保健師数:12名
space space space
1. 笠岡市の概要
2. 事業の背景
3. 事業の内容
4. 事業の成果
space space
笠岡市の概要
  1)位置
 笠岡市は,岡山県の西南部に位置し,広島県と接しています。南には美しい瀬戸内海を望み,高島,白石島,北木島,真鍋島,大飛島,小飛島,六島をはじめとする大小約30の島からなる笠岡諸島が広がっています。
 また,笠岡湾を締め切って造成した日本でも有数の干拓地であり,昭和41年に国営笠岡湾干拓事業として着工し,平成2年3月に完成しています。1,191ヘクタールに及ぶ広大な大地は,笠岡市の総面積の8.76%を占め,大規模な畜産や畑作,花卉栽培をはじめ,農道空港を利用したフライト事業,ラジコン飛行機の世界選手権大会など,多目的な利用が進んでいます。
2)面積
 東西13.6km,南北33.6km,面積135.97km²です。
3)気候
 気候は温和で,平成12年(2001年)の年平均気温は15.6℃であり,年間の降雨量は758mmです。
space  
space
topへ TOPへ
space
space space
事業の背景
   笠岡市の健康づくり課では,これまで疾病予防・健康増進に重点をおいて市民の健康づくり活動を展開してきました。しかし,実際の健康教育や健康相談の場面において,知識をもっていても実行に結びつかない現状を感じていました。健康情報があふれ,疾病構造も多様化する現在,今までのように行政が健康問題を捉え,知識を市民に提供するだけでは限界があると感じていたところに,健康寿命の延伸を目指し,国から「健康日本21」が示されました。笠岡市では,市民と健康づくり計画を共有できる良い機会と考え,平成14年度に市民と話し合いながら計画づくりを進め,「いきいき笠岡21」を策定しました。
space
topへ TOPへ
space
space space
保健師の役割
space 市民とともに策定した「いきいき笠岡21」
   計画を策定するに際し,市民の生の声を聴き,暮らしに即した市民主体の計画策定とするため,健康づくりの組織である愛育・栄養委員会や,健康に関わる自主グループから「いきいき笠岡21を考える会」のメンバーを募りました。また,働き盛りの若い世代の意見を求めるため,青年会議所にも協力を依頼しました。
   
space 「いきいき笠岡21」を考える会のメンバー
 
愛育委員:6名 栄養委員:5名 健康の自主グループ:4名 青年会議所:2名
保健センターと井笠保健所職員:11名
   
   健康な町づくりを進めるため,「10年後にどのような暮らしがしたいですか?」というテーマで話し合いを進めたところ,健康に対するニーズが第一に挙げられるかと思っていたのに反して,「ふれあい」を求める声が多くあがりました。行政だけで考えれば,「身体的な健康が第一」となるところですが,実際に市民を交えて話し合うことで,市民が「ふれあいがあってこその健康」「心豊かに暮らしたい」という考えを持っていることに気付かされました。
 健康は,市民の心豊かな暮らしのための基盤となるものですが,市民の暮らしの視点から健康をとらえたとき,心身の健康にとどまらず,社会的健康も大きく関係していることがわかりました。
 計画策定を進めていく中で,健康づくりは市民の暮らしに密着して実行されなければならないことや,健康という同じ目的に向かって,個人,家族,地域,行政,関係機関がそれぞれどのような役割を持たなければならないか等,多くを学び得ました。
 また,「いきいき笠岡21を考える会」での意見交換により,市民と行政が互いに健康づくり活動に対する意識の高まりを感じ合うことができました。そして,市民と行政が手を取り合って健康づくりに取り組むことで,市民も行政もいきいきとし,地域も元気になるのだと実感しました。
space  
space space
  夢の実現に向けての願い,必要なこと,行動計画の関連表
space space
 
space space space
10年後の夢   地域でのふれあいを通していきいきと心豊かに暮らしたい
    image
space space space space space space space space space
夢を実現する
ための願い
space 人との交流がもてる space 人とのふれあいの気持ちを育む機会がある space 気軽に集え活用できる場所がある space 心も体もいきいきとしている
    image   image   image   image
夢を実現するために必要なこと  
お互いに挨拶ができる
交流できる行事がある
音頭をとり,リーダーとなる人がいる
行事や人材の情報提供をするネットワークがある
声をかけたり誘ってくれる人や友達がいる
気軽にボランティアをしたり受けたりできる
 
お互いを助け合う気持ちを育む
情報を伝える
 
誰でも気軽に集える施設がある
誰でも利用しやすい公園がある
屋外の空間をバリアフリー化し,安全な環境にする
送迎など,出かける手段がある
 
自分の健康を自分で考えられる
おいしく食べられる
楽しく体を動かせる
ストレスと上手につきあえる
休養が十分にとれる
寝たきりにならない工夫ができる
歯の健康を保てる
明るく前向きな気持ちで暮らせる
生きがいをもつ
環境問題に関心を持つ
    image   image   image   image
space space space
行動計画   自分たちでできること
space  
space space
space 「どんがめの会」を組織
 
 「いきいき笠岡21」の策定を終え,「いきいき笠岡21 を考える会」を解散することになりましたが,計画策定にご協力いただいた市民の方々と今後も協働関係を保ちたいと考え,「どんがめの会」(笠岡市では“カブトガニ”のことを“どんがめ”と呼んでいます)と命名した会を組織しました。「いきいき笠岡21を考える会」のメンバーのほとんどの方に残っていただくことができました。
 今年度は計画の周知を狙い,市政だよりの活用や健康づくり組織である愛育委員会,栄養委員会等の地域での集まりや,保健事業の中でダイジェスト版の活用をはかり,「どんがめの会」とともにPRを行っています。
 今後も継続的にメンバーを募り,更に大きな組織に育成していきたいと考えています。
   
space ウォーキング事業
   計画書と併せ,健康づくりの観点からウォーキングマップを作成しましたが,計画書に基づき,マップ活用にあわせて市民から「おすすめコース」を募集しました。 20コース以上の応募があり,安全性,時間,歩数,景観,設備(トイレ,休憩所など)の有無などの観点から,どんがめの会・愛育委員会・栄養委員会の協力を得ながら優秀コースを選定しました。健康福祉まつりで表彰するにあたり,実際にウォーキングしたり模造紙に記載するなどを行いました。
 健康づくり活動を広げるため,ウォーキングを題材として,どんがめの会が選定されたコースを歩くミニウォーキング大会を企画し,行政とともに実施しました。愛育委員会・栄養委員会では,従来の活動を計画と照らし合わせながらより充実した活動を展開しようとしています。今年度は,どんがめの会と両委員会が健康づくり実践活動を報告するミニシンポジウムを実施しました。
 保健師の役割として,ヘルスプロモーションの理念でどんがめの会と協働しながら計画の趣旨,実行計画を広めていくことに現在重点を置いています。今後,計画の評価を考えた計画管理や,庁内や関係機関との連携に向けて役割を発揮していかなければならないところです。
 ウォーキング事業においても,「どんがめの会」の方々の意見を第一に採り入れる方向で事業を推進しています。ウォーキング大会を行うに際し,どんがめの会の方々とコースの下見を行い,どのようなコースをとるか,時間はどうするか,雨天の場合はどうするか,傷害保険をどうするか等,様々な内容についてどんがめの会の方々の意見を求めて内容を決定しています。
 会の発足当初は,なかなか話が進まない,話がまとまらないなどの問題がありましたが,回を重ねる毎にそのあたりの問題が解決され,今ではスムーズに会議が進行するようになりました。できるだけ行政は口をはさまないようにし,市民の皆さんが自主的に考えていけるよう支援していくことが大切であると痛感しました。
   
space 「てくてく笠岡歩行マップ」の作成・配布
 
 笠岡市では,少しでも多くの市民の方々に,安全で楽しく,且つ継続的にウォーキングに取り組んでいただくことを目的に,「てくてく笠岡歩行マップ」を作成し,これを市民の皆様に配布しています。
 内容は,おすすめコースの紹介だけではなく,ウォーキングするときの姿勢や服装,靴の選び方,準備体操の方法,長続きさせるための方法,足の疲れのとりかた(マッサージ方法など),ウォーキングする際の心がけなどを掲載しています。
 市民に大変好評なのは勿論のこと,他の市町村からも引き合いが多くあります。
   
space 島嶼部対策
   笠岡市の南に広がる瀬戸内海には,大小約30の島からなる笠岡諸島が広がっています。そのうち人が住んでいるのは,高島,白石島,北木島,真鍋島,小飛島,大飛島,六島の計7つの島々です。これらの島々では,高齢化率が50%近くに及んでいます。
 笠岡市では,陸地部だけではなく,島嶼部に住んでいる市民の方々にもウォーキングを楽しんでいただこうと,島嶼部にもウォーキングコースを設け,これを紹介しています。
 特に白石島ウォーキングコースは,季節毎に自然とふれ合える楽しみがあり,コース途中の眺めもよく,たいへん好評を得ています。また,白石島ではハイキングコース,オリエンテーリングコース,江戸時代中期に造られた島八十八カ所のコース地図を独自に作っており,毎年オリエンテーリング大会を開催しています。
space  
space
topへ TOPへ
space
space space
事業の成果
   実行計画の輪が少しずつ広がろうとしています。ある地区の愛育委員会では,計画に沿って人とのふれあいが健康づくりになることから,「あいさつ運動」の取り組みがはじまりました。
 また,どんがめの会から市民へ計画の趣旨を伝えることで,市民の間でも理解を深める人が少しずつ増えています。どんがめの会のメンバー自身が自分達市民にとって大切な存在であると感じ,行動計画の実施を行政とともに検討していることは大きな成果と思われます。
space  
調査員:全保協専門委員 竹澤 良子  ヘルスケア総合研究所 正代 剛一
space
topへ TOPへ
space
space
平成15年度 Topへ戻る