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精神保健福祉対策

神奈川県海老名市
岩手県一関市
石川県小松市
愛知県半田市
三重県青山町
島根県三刀屋町
広島県向島町
徳島県相生町
山口県阿武町
鹿児島県吹上町


神奈川県海老名市 精神保健福祉対策
人口規模 120,831名 高齢化率 12.3%

事業の内容
 平成14年4月から精神保健福祉法の一部改正により,通院医療費公費負担事務,障害手帳の申請業務,居宅支援事業,社会復帰施設の斡旋・調整・相談・訪問等業務が市町村の業務となりました。
 そこで,当市では,精神障害を理解し,相談業務の円滑化,社会復帰施設へのスムーズな斡旋・調整を行うために,生活教室を開催することにしました。開催にあたり,1年前から準備を行い(実務研修,関係機関とのネットワークづくり,情報交換,予算化,必要な書類・要項作成等),精神障害との関わりから疾病と生活障害を併せ持っていることを理解しないと相談業務は難しいと思いました。そのためにも,個別で関わることも大切ですが,教室を開催し,よりよい援助ができればと思い,取り組みました。
 目的としては,在宅の精神障害者の意欲の向上を図り,対人関係をより円滑にし,日常生活の改善及び社会復帰を目指します。参加できる人は市内在住者で,精神障害を持つ人です。プログラム内容は,ミーティング,音楽鑑賞,陶芸,料理,昼食会,コーラス,絵手紙,バスハイク,イチゴ狩り,みかん狩り等で,参加者の希望をできるだけ取り入れながら計画しました。


事業の成果
 効果としては,(1)相談業務が円滑に行え,症状の変化に早期に気づき,状態の悪化防止など的確な助言ができる,(2)参加者の生活状況や考え方などが理解でき,また,集団の中での個人の動き,対人関係の取り方,個別相談では見えなかった部分が集団の中では見極めることができ,社会復帰施設への紹介や斡旋調整がしやすかった,(3)生活教室という場を提供することで,参加者個人・家族とも信頼関係ができ,家族支援がしやすくなった,(4)参加者同士の相互作用を意図的に活用することで,同様の課題・問題を持つ者同士の活動や語り合いで他の参加者のやり方を見て,様々な見方・感じ方,解釈に耳を傾けることで,いつしか自分の問題に気付くようになる,(5)自分の言動が他の参加者に役立つ機会となったり,教室の中で役割があることにより,自分を尊重できるようになる,(6)一人ひとりの生活実態がわかり,他の福祉サービスの紹介,具体的なサービスを検討する機会となった,(7)保健所の支援を受けて実施し,相談援助技術のレベルアップにつながりました。
 参加者の感想は,生活リズムが整った,自分のリズムがわかった,皆に会えてうれしい,一緒に何かを行うことが楽しい,安心できる,ほっとできる,話すことで皆と共感できた,仲間ができた,自信が沸いてきた等,様々な意見が聞かれました。関わる側としても,参加にあたって必ず面接を実施し,本人と確認するようにしています。ゆっくり慣れていくこと,自分の調子に気付けるように上手に休むこと,体調に合わせて参加すること,自分から意思表示できるようになること等が大切です。これからも参加者やその家族の疑問点や困ったことにいつでも耳を傾け,本人が自分の病気や障害と付き合いながら自分なりに生活していけるようにバックアップしていこうと考えています。

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岩手県一関市 精神保健福祉対策
人口規模 61,847名 高齢化率 22.8%

事業の内容
 当市には,408床の精神科単科の県立病院(昭和30年開設),無床のクリニック(平成13年開設)があります。県立病院では,退院者への訪問看護も早い時期から取り入れており,その中で,当事者の日中の居場所について話題にしており,その場を行政にとの声があり,平成元年7月に「場の提供」という位置づけでセンター会場で一関ふれあい会を開催致しました。第1回の参加者は4名で,病院のPSW,看護師,保健所の保健師,市の保健師でした。参加者は,病院からの紹介でした。今では,主治医の紹介は勿論ですが,当事者間の情報で参加する方もあり,また,色々な病院の方々にも参加していただいております。平成7年に地域精神保健対策促進事業のモデル指定を受け,月1回から2回定例開催として,内容も当事者との協議のもとに計画実施しております。また,当地区の特徴だと思いますが,事業展開当初から,近隣の2町と合同で年2回ふれあい会を開催しておりましたが,近年では,社会参加訓練施設も一同に集まり,スタッフ込みですが100名以上の方々が集っています。
 平成元年10月には,地域精神医療推進のために県立病院主催で,保健所・1市2町の行政をいれての地域精神医療調整推進会議が病院で開催されました。その後は会議場所を持ち回りで移動し,年4回開催しております。平成5年には一関地区精神医療連絡会に名称変更し,参集者も行政機関の福祉関係者を加え,社会参加訓練施設も参加しております。年間の事業計画,各々の最新の動向などの情報提供会議となっております。平成13年からは,地域生活支援センター主催の実務担当者会議が,年4回にわたってケース検討を中心に主治医の参加の下で開催されております。
 地域住民への精神障害者に対する偏見を一掃しようと,健康教育として,精神科医等の健康講話・行政での取り組みを各地区で開催し,平成10年にはシンポジウムを開催し,翌年から当事者の意見発表の場として参加いただいております。シンポジウムは,講演と当事者をいれての意見交換の2部構成となっております。
 ボランティアについては,平成8年に保健所でボランティア養成講座を開催し,修了者の方が平成8年に「あおぞら会」を結成し,一関ふれあい会にスタッフとして参加・協力いただいております。その後,「ふれんど」というボランティアも結成され,県立病院・社会参加訓練施設等で活躍してもらっています。
 平成10年には社会福祉法人「ハッピーライト」が結成され,精神障害者社会参加訓練施設,地域生活支援センター,精神障害者通所授産施設,GHが開設されました。
 平成14年に精神保健福祉業務の一部移管により,精神障害者居宅支援事業も制度化され,サービス提供の充実に努めております。


事業の成果
 県内においても,精神障害者社会参加訓練施設等の整備が充実されている方であるのは,早くから地区一丸となって精神保健福祉に取り組んだ成果であると思っています。保健・医療・福祉の連携の大切さを痛感しております。精神障害者の病気と障害特性の理解は難しく,住民への啓蒙も大変です。シンポジウムなどでの当事者の方の意見提言をいただくことにより,理解・感動・共感をいただいております。それでも,彼らを取り巻く状況は,複雑化・多様化で厳しいものもありますが,当事者・家族・主治医・地域を巻き込みながら,事業を推進していきたいと思います。
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石川県小松市 精神保健福祉対策
人口規模 109,531名 高齢化率 19.4%

レスパイトケア事業
事業の目的
 本事業を平成15年4月1日から実施しています。本事業の目的は,精神障害者及び当該精神障害者の介護などを行う者の日常的な負担を軽減することです。


取り組みに至った経緯
 当市は,ショートステイを実施できる施設を有しておらず,精神障害者やその家族などから,日頃のストレスや介護疲れ等を軽減できるようなサービスを求める声がありました。


事業の内容
 レスパイトとは「休息・息抜き」を意味しています。精神障害者及び当該精神障害者の介護などを行う者が,日頃の疲れやストレスの軽減のために一時宿泊などを利用し,心身のリフレッシュを図るために利用するものです。


事業の実施方法
 精神障害者社会復帰施設に事業を委託して実施しています。一時宿泊の費用は,一泊400円です。


保健師の役割
 手帳の交付時や相談があった時などに障害福祉制度の冊子を渡し,本事業の周知を図っています。また,委託事業所に毎月の利用者状況の報告書を提出してもらい,利用状況などの把握に努めています。必要時には事業所と連絡を取り合い,互いに連携がとりやすい体制づくりに努めています。


事業の成果
 平成15年4月に開始したため,事業の周知が不十分であると感じますが,利用者は徐々にではありますが増えてきています。現在の利用者は,一人暮らしをされている精神障害者の方がほとんどで,孤独感の解消や日頃の疲れの軽減のために利用されています。
 本事業を必要としている方々の少しでも多くが利用できるよう,更に周知に力を入れ,安心して地域に住めるように努めていきたいと思います。
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愛知県半田市 精神保健福祉対策
人口規模 113,552名 高齢化率 15.8%

はじめに
 平成14年4月,精神保健福祉法の改正に伴い,保健所(県)から市町村に委譲された精神保健福祉業務と居宅生活支援事業(ホームヘルプ・ショートステイ・グループホーム)が開始されました。当市においては,窓口の一元化ということで福祉課に精神保健福祉士(嘱託)と保健師が配属されました。職種の異なる専門職2名体制で,福祉課障害者援護担当の中で他の身体障害,知的障害と併せた3障害を同じように支援できるよう体制づくりに努めています。


事業内容
1)精神障害者保健福祉手帳・通院医療費公費負担制度(患者票)申請交付事務

2)相談・援助業務
 相談は,手帳・患者票の申請交付受付時に本人及び家族からの相談や民生委員や隣近所からの苦情及び相談,ケアマネジャー等からの相談,医療機関ケースワーカーとの連絡・相談が多くなっています。手段として,来庁(約45%),電話(約40%),訪問(約15%)となっています。内容は,(1)日常的生活相談,(2)福祉サービスの利用援助,(3)受診援助,(4)介護や接し方,(5)苦情対応,(6)社会参加,の順になっている。

3)精神障害者居宅生活支援事業の実施
(1) 精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプ)
(2) 精神障害者短期入所事業(ショートステイ)
相談は数件あったが,利用に結びつくケースはまだない。
(3) 精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)
市内にグループホームはないが,近隣を含めて県内に3人の利用者がいたが,現在は1名となっています。グループホームの数が少ないので,利用が困難な状況です。

4)啓発活動
 精神障害の正しい知識の普及と障害に対する理解促進を図るため,平成14年から年1回はシンポジウム方式で200人規模にて開催,また,保健センターの保健推進委員等と協力し,地域組織を活用し,ミニ講座等による地道な啓発を進めることが大事であると思っています。

5)精神障害者小規模保護作業所に対する運営補助及び支援

6)半田市精神保健福祉業務定例調整会議の開催
 平成14年度は月1回,15年度は隔月で半田市,半田保健所,愛知県精神保健福祉センターの職員により,事務連絡及び事例検討,今後の地域での精神保健福祉活動のあり方について意見交換を行っています。


成果及び課題
1)福祉と保健と医療の連携
 福祉課に精神保健福祉の窓口を一本化し,保健師と精神保健福祉士という医療系と福祉系の専門職を配置したということは,精神障害者の実態を把握しやすい体制ができたと思います。精神障害者保健福祉手帳や通院医療費公費負担の申請時に声かけをし,必要に応じて相談も実施してきました。相談数はかなりの数になり,日々の悩みや困りごとを含め,健康相談的なことが主ですが,経済的問題については,障害者年金の対象となるか等収入源の確保とか,収入が少ないことから借金を重ね,多重債務者となる深刻な相談も何件かありました。福祉の現場へ異動して,保健との違いを改めて実感しました。保健師の役割は何か。患者票の交付者増加や自殺者の増加に対する予防対策の構築を,保健センターの保健師と連携をとりながら検討をしていく必要があると考えています。

2)地域での生活支援体制

 3障害同じように福祉課が窓口になっていますが,歴史の差があり,格差があります。住民のニーズを把握して整理し,住民自らが自覚的に行動できるように援助することが重要であり,保健師としての視点を生かした自助・共助・公助の三位一体となった総合的な支援体制が必要です。

3)ケアマネジメント
 精神障害者に必要な社会資源(サービス)を結びつけ,地域生活を支えるということで,今まで保健師としてケースの援助目標をたて,支援してきたことと同じであると思っています。しかし,担当者個人の技量や主観によって,援助内容に格差が生じないよう工夫され,ツールを使用することになっている点などから,学習が必要です。当市においても,ホームヘルプサービスの利用者に対して,必要に応じて部分的にアセスメント票を使用しています。


おわりに
 福祉課に保健師として配属され,福祉サービスの窓口を経験することで,現状と実態を肌で感じ,どんな障害を持っていても「地域でいきいきと生活できる町づくり」の必要性を改めて強く感じ,そのために何をすべきか考えさせられています。また,保健師はどこの職場に配置されても公衆衛生の生命を守ることが基本であることを忘れてはいけないと思います。
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三重県青山町 精神保健福祉対策
人口規模 12,055名 高齢化率 20.1%

事業の内容
 青山町の精神保健デイケア“ふれんどつつじ”は,平成7年から精神障害者の社会復帰と自立を目指して行われている事業です。保健所保健師,町保健師が精神障害者の自宅を家庭訪問する中で,本人,家族から「退院しても外へ出かける機会,気軽に集える場がない。」「本人が自立できるようになってもらいたい。」といった社会復帰やその準備への切実な声が聞かれました。そこで,町内に精神障害者の方々が活動できる場を提供すること,精神障害者が地域で安心して楽しく生活できるように,また自立と社会復帰ができることを目的にデイケアを実施することになりました。
 最初は,活動日が月1回のみでしたが,活動回数を徐々に増やし,今では週1回行われています。活動日は毎週木曜日10:00〜14:30で,第一・三木曜日は作業日とし,紙袋づくりや青山名産のけんかん茶の袋詰め作業をしています。作業日は家族会も兼ねているため,家族も一緒に作業に取り組んでいます。家族会では,同じ悩みを持つ家族と話せること,不安や悩みを話せることから家族も積極的に参加してくれています。第二・四木曜日はレクリエーションで,調理実習や外出,スポーツや手芸など様々な活動を行っています。また,他の市町村のデイケアや作業所等との交流会も実施しています。
 また,町の健康福祉フェスティバルではバザーを行い,クッキーや手芸品を販売することで,その収益を活動費に充てています。地域の人々に精神障害者や“ふれんどつつじ”をよく理解してもらえるよう,写真や活動内容を掲示し,啓発も行っています。
 現在,デイケアに参加している精神障害者(メンバー)は5名,スタッフは保健師2名,看護師1名,事務職員1名,ボランティア6名で活動を行っています。保健師,看護師はメンバーの心身状態を把握すること,話を聞くこと,服薬確認などが主な役割であり,中心となってデイケアの活動を運営しています。


事業の成果
 平成12年度から始まった袋作業にも慣れて,スムーズに作業ができるようになったとともに,デイケアを楽しみにしているメンバーが多く,メンバーの表情も明るくなっています。地域でも“ふれんどつつじ”にクッキーの材料を安く提供してくれたり,ケーキや野菜などを寄付してくれたりと何らかの形で協力してくれる人が増えています。今後も,あらゆる人々に精神障害者や“ふれんどつつじ”のことを知ってもらい,理解してもらえるように啓発していくことで,精神障害者への偏見を無くし,新たなメンバー,ボランティアの発掘につなげていきたいと考えています。ボランティアの育成,障害者への偏見を無くすという面では,子ども達に,心を病むということ,精神障害者について学んでもらい,精神障害者との交流をはかっていければと考えています。また,メンバー,家族などの意見を尊重しながら実施回数の増加,活動内容の検討などを進めていきたいと思います。
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島根県三刀屋町 精神保健福祉対策
人口規模 8,497名 高齢化率 29.3%

事業の目的
 障害者の社会参加,社会復帰を通して,住民の地域精神保健についての理解を求め,障害者の生活支援をするまちづくり,共に生きる地域を作ることを目指しています。


事業の内容
昭和50年代
 昭和50年に家族会が発足。精神科通院時の交通費補助開始。昭和53年断酒会発足。住民向け精神保健健康教育の開始

昭和60年代
 精神デイケア(家族会と患者会合同活動)

平成年代
平成2年… 共同作業所開始
平成5年… 第一次保健計画策定(心の健康教育,障害者の社会復帰,痴呆性患者への理解)
第一次老人保健福祉計画策定
平成6年… 通院医療費助成開始
平成7年… 住民グループによる実行委員会形式を取り入れた“健康と福祉のまちづくりフォーラムの開催”開始(家族会20周年,作業所5周年)
平成8年… 第二次保健計画策定(ストレス対策,リフレッシュ事業)
平成9年… 障害者プランの策定 町単独精神障害者ホームヘルプ事業の開始

平成10年代
平成11年 心の健康と福祉を支える会の発足(母体:家族会,断酒会,手をつなぐ育成会)
第二次老人保健福祉計画策定(痴呆予防,自殺予防の心の健康づくり)
平成12年 エンゼルプランの策定(思春期保健・育児不安への対策)
平成10〜12年 精神障害者社会復帰施設整備への取り組み
平成13年 精神障害者社会復帰施設整備(近隣町村合意により,広域施設)
通所授産施設(町単独),福祉ホーム・地域生活支援センター(広域施設)
健康みとや21計画策定(第三次保健計画)(心のバリアフリー,思春期保健)
平成14年 公費負担,手帳申請の業務,施設の利用調整等委譲
平成15年 地域福祉計画策定に合わせて障害者プラン見直し作業中


保健師の役割
 当事者の声を住みよいまちづくりに反映できるよう,個別,グループ活動から地域全体の活動につなげるよう,また,精神保健業務と他の業務とも結びつけて縦横のつながりの中で事業を進める要としての役割を担っています。


事業の成果
(1) “健康と福祉のまちづくりフォーラム”を継続する中で,心のバリアフリーのまちづくりが少しずつ推進できています。
(2) 心の健康と福祉を支える会として,グループ活動の横のつながりができはじめています。


今後の課題
 1年後に6町村による合併を予定しており,新市への活動の波及について協議が必要です。

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広島県向島町 精神保健福祉対策
人口規模 16,734名 高齢化率 27.0%

事業の内容
 これまで,精神保健福祉行政は,都道府県及び保健所を中心に行われてきたが,平成14年度から「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下精神保健福祉法とする)の改正に伴い,精神障害者の社会復帰を促進し,地域生活の支援を充実させるため,身近で利用頻度の高いサービスなどについては,市町村が実施することになりました。それに伴い,精神障害者やその家族,また民生委員・地域住民などからの相談を受ける頻度が高くなり,処遇困難なケースをかかえるようになりました。ある時,担当の保健師が傷害事件に巻き込まれるようなことが起こり,保健師全員大きなショックを受け,精神保健福祉業務を再度整理していく必要性を感じました。相談業務等において,基本姿勢,対応の仕方,保健師が陥りやすい事項などを整理し,スタッフ間においても共通認識を持って業務を行っていかなければならないと痛感するようになり,保健所や県立総合精神保健福祉センターの協力を得て,向島町精神保健福祉マニュアルを作成することになりました。
 マニュアルは,向島町における精神保健福祉業務,相談業務の対応方法,事例別対応方法の3つの章から構成されています。

I 向島町における精神保健福祉業務
1)精神保健福祉相談業務
2)家庭訪問指導業務
3)精神障害者居宅生活支援事業
(1)精神障害者訪問介護事業(ホームヘルプサービス),(2)精神障害者短期入所事業(ショートステイ),(3)精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)
4)精神障害者保健福祉手帳申請窓口業務
5)精神障害者通院医療費公費負担申請窓口業務
6)普及啓発事業
7)組織育成
8)医療保護入院に伴う町長同意事務

II 相談業務の実施方法
1)相談の基本的姿勢 2)面接相談 3)電話相談 4)家庭訪問 5)関係者との連携

III 事例別対応方法
1)状態別事例として
(1)緊急性の高い相談 (2)訴えの多い当事者からの相談 (3)地域からの相談 (4)家族と本人がともに病的な場合 (5)受診を拒否して困っている家族からの相談 (6)単身者の場合の相談 (7)服薬管理についての相談 (8)社会復帰についての相談
2)疾患別事例
(1)統合失調症 (2)気分障害 (3)人格障害 (4)摂食障害 (5)アルコール依存症 (6)老年期性心疾患相談記録は,スタッフ間の共通認識が持てるように,また,ケアマネジメントの手法を使用し,アセスメントしていく初期の情報収集のために,精神保健福祉相談ケース受付・精神保健福祉相談記録表(継続ケース)を使用するよう作成した。


事業の成果
 向島町精神保健福祉マニュアルを作成することにより,精神保健福祉対策の流れを踏まえながら,(1)法的根拠を基に実施すべき市町村の役割を整理することができた,(2)保健師として,相談の受け方,業務の進め方などを,再度基本姿勢に立ち返り確認することができた,(3)個々のケースに,より質の高いサービスを提供していくためには,相談者に共感しながらも,相手のペースや感情に保健師が巻き込まれないように,所属機関でできること,できないことも把握しながら,関係機関と連携をとることが大変重要であることも学びました。
 また,様々な文献を集め,今までの会議資料を読み返していくことは大きな実りになったと思われます。
 人間関係が希薄化し,ストレスの多い現在,精神的な疾患を抱える方が増え,今後,相談業務は増え続けると考えられます。対象者・家族に接する中で,マニュアルを作成するきっかけとなった傷害事件の原点に立ち返り,地域精神保健福祉の向上のための共通認識をもつ重要性を痛感できました。
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徳島県相生町 精神保健福祉対策
人口規模 3,433名 高齢化率 34.0%

事業の内容
 相生町を含む丹生谷地区は,徳島県の南部に位置する山間僻地で3町2村で構成されています。人口の高齢化が進み,社会資源も乏しく,保健所まで遠い村では車で2時間もかかります。デイケアなどのサービスも,継続して受けられないのが現状でした。丹生谷地区は,精神障害者が多く,社会の偏見の中で入退院を繰り返し,受けるサービスもなく引きこもりの状況の中,打開策の一環として保健師が中心となって家族会の結成に取り組みました。

家族会の育成と活動内容について
 昭和59年に,精神障害者を支えるために家族会を発足させ,年金制度や障害者に対する接し方の勉強会や定例会を実施して家族会の育成を図り,家族会の自立を支援してきました。
 昭和62年に障害者が交流できる場としてデイケアを発足させ,社会参加,仲間づくりなどを図ってきました。入退院の繰り返しや治療の中断も減少しました。
 平成6年に障害者が毎日通所できる場の確保を図るため,家族会が主に5か町村に陳情し,県下で初めて3障害者が通所する小規模作業所(あすなろ作業所)を開所しました。メンバーもいきいきと参加しています。
 家族会では,会員の増員を図るため,会員が家庭訪問をしたり,広報に体験談をのせたりすることにより,若い50歳代の母親の加入により活発に活動ができ,自立できつつあります。主な活動は,行政への陳情,ボランティア活動,定例会,グループホームの運営,全国・四国大会への参加等幅広く活動しています。県下に町村単位で家族会が結成されるよう陳情し,丹生谷地区では既に3町村で設立しています。町単位で活動をすることにより,町村の理解が得られつつあります。

○グループホーム,生活支援事業について
 平成15年4月,丹生谷地区精神障害者家族会が主になり,相生町の旧診療所を改造し,1階に障害者を支える生活支援センターを,2階に3障害のグループホームを開所しました。運営費は,3障害が利用する施設は全国で初めてのため,補助金がないので5か町村単独で運営していますが,まだまだ駆け出しで,試行錯誤の段階です。軌道にのるまで時間がかかりますが,利用者も次第に増えつつあり,障害者が安心して行ける場,相談できる場としてなくてはならない場所として確立しつつあります。1階は地域住民や作業所へ行けないメンバーのふれあいの場として事業を開催しています。
 保健師の役割は,あらゆる組織(行政,家族会,保護者会,ボランティア,地域住民,心身障害者会等)との連携を図り,各種事業の支援と自立の促進を図ってきました。


事業の成果
 地域にこれらの施設や小規模作業所があるおかげで,メンバーは勿論,指導員,ボランティア,地域住民も意識が変わりました。障害がある人もない人も共に助け合って生きていける地域になりました。
 小規模作業所では,毎週木曜日に木曜市を開催していますが,地域住民とのふれあいにより社会性が育ち,また,年に1回のあすなろさくら祭りでは,家族会,ボランティア,県下の作業所に参加いただき,盛大に開催し,毎年400人余りの参加があります。障害者に対する理解を深めて,ご協力・ご支援をいただいております。地域住民への啓蒙普及活動に多大な成果を上げています。


今後の課題と展望
 精神障害者が地域で生きていくための支援として,現在あるサービスの充実と選べるサービスの拡大が望まれます。ホームヘルプサービスやショートステイも,現在のところ利用者がありませんが,今後,PRをして利用者拡大を図りたいと思います。
 社会資源の乏しい丹生谷地区においては,3障害が利用できるサービスが必要であり,国や県においても,柔軟性のある地域の実情に合わせた政策を認めて欲しいと思います。今後も,障害があっても安心して住める地域づくりを目指していきたいと思います。
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山口県阿武町 精神保健福祉対策
人口規模 4,526名 高齢化率 40.6%

事業の内容
1)取り組みの背景と経過
 阿武町では,精神障害者数が多く,人口比率が高いという問題に加え,国保の高額療養費該当疾病の件数と費用額ともに上位を占め,入院が長期化し,国保財政を圧迫しかねない状況になってきているといった状況にありました。
 そこで,家族会の発足と共同作業所の開設に取り組みました。

2)精神保健福祉事業の概要
  精神保健家族会 萩共同作業所阿武分室 萩共同作業所阿武分室
開始年月 昭和55年4月 昭和61年9月 平成3年4月
開催回数 年6回 週3回(月・水・金)
9時〜15時
月1回(年12回)
参加者数 14人 11人 15人
内容 定例総会
研修視察旅行
講演会・座談会
作業所の運営
菓子箱の組み立て
牛乳パックの作品づくり
(座椅子,座布団など)
ふるさと祭りへの出店
調理実習
スポーツ・カラオケ
梨狩り 等
パソコン教室
スタッフ 町保健師,
健康福祉センター保健師
家族会会員,看護師,
ボランティア
町保健師,ボランティア,
健康福祉センター保健師
(参加者数は平成14年度実績)

その他
○個別相談,訪問指導(対応困難な事例などは健康福祉センターと連携)
○健康福祉センター事業への協力(精神保健巡回相談・精神保健福祉ボランティア講座)


今後の課題
1)家族の高齢化による影響
○家族会の運営が困難になりつつあるため,共同作業所の運営体制を整えていく必要がある
○新たな作品の開発,販売ルートの確立
○障害者自身が自立して生活できる力を少しでも早く身につける必要がある
○個人目標の共有,目標達成に向けての支援

2)住民に対する意識啓発
○住み慣れた地域で生活していくためには,住民の理解が欠かせない
○ボランティアの輪を広げる支援
○障害者自身が,町の行事や町内へ出かける等住民とふれあえる機会を多くもつ
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鹿児島県吹上町 精神保健福祉対策
人口規模 9,935名 高齢化率 35.7%

目的
 精神障害者が地域でいきいきと過ごすことができる。


経緯
 地域で一番困っているのが精神障害者であるという保健師の思いが,日頃の保健業務の中であった。国保医療費では,一般(若人)の3割を精神疾患が占めていました。
 地域に当事者の行き場がない状況(保健所デイケアは遠く,医療機関も社会復帰事業未実施)。まずは家族の理解を深めようと平成8年度より保健所の支援を受け,家族教室を開催しましたが,家族よりも当事者が定期的に集いたいと希望があり,教室を開催することにしました。


内容
「ハートふれあい教室」の開催
月1回開催
  レクリエーションや調理手芸,交流会,友愛フェスティバル参加,家族教室
対象者は本町及び近隣町精神障害者とその家族


方法等
 精神保健ボランティア毎回参加
 手芸講師などはなるべく地域の方に依頼し,地域に精神障害者への理解者を増やすように努めている。講師料・材料費予算は国保会計
(この教室以外には,うつスクリーニング・こころの健康づくりについての積極的な情報提供や健康教育を行っている)


事業の成果
業務分担により,市町村保健師は精神疾患や精神障害者に対して苦手意識が強かったが,まず,スタッフ自身の理解が深まった。
集まる場があることで,当事者がいきいきとしてきた。作業所に通所できたり,交流範囲が拡がったりするなど,当事者一人ひとりの生活の質が向上してきた。
ボランティアや地域講師など,理解者が増えてきた。
住民のこころの健康づくりに対する意識が高まった。

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