平成15年度 Topへ戻る

子どもの虐待予防

愛知県木曽川町
愛知県小牧市
愛知県知多市
三重県四日市市
滋賀県大津市
大阪府泉大津市
広島県大竹市
徳島県阿南市


愛知県木曽川町 子どもの虐待予防
人口規模 31,604名 高齢化率 16.0%

目的
 虐待ハイリスクの母親の背景を知り,乳幼児健診アンケートでリスクの高い母親をスクリーニングし,支援していく母子管理システム(虐待予防の健診)をつくる。


経過
 母子保健計画の見直しに合わせて行った子育て実態調査(1,000名アンケート)の中に,状態不安をみる心理テスト「STAI」の10項目を活用し,「虐待していると思う」等高度な育児不安に関する項目とクロスし,分析を行った。その結果,「STAI」項目との関係に有意差が認められた。また,母親の高度な育児不安の背景には,夫など家族との関係,環境などの影響が大きいことが明らかになりました。
 そこで,15年度より乳幼児健診アンケートの中に,「あなた(母親)自身のことについておたずねします」という項目をつくり,「STAI」項目の中で特に有意差のあった項目3点を加え,そして,スクリーニングであがったハイリスクな母親の受け皿として育児相談(月1回)にCAPNのメンバー(精神保健福祉士)を加え,個別面接の場を確保しました。健診時にはスクリーニングにあがった母親には詳しく話を聞く場を設け,必要に応じて訪問指導・育児相談など次の支援ルートにつないでいます。


まとめ
 虐待にまで至ってしまう母親はごくわずかであるが,子育て中の母親のほぼ全員が大なり小なり育児不安を経験しています。この育児不安が重なり,高度になることで,虐待のリスクが上がっていくことは,周知のことです。いかにリスクの高い母親に早く支援の手を差しのべるかが課題であり,今回の「STAI」テストの活用により,数的根拠をもって虐待リスクの高い母親をスクリーニングするシステムができたと思っています。


事業の成果
 現在のところ,1回の乳幼児健診で4〜6名がスクリーニングにあがり,面接の結果1〜2名が訪問指導・育児相談につながっています。また,保健所のMCGにつながった人もいます。今,既に虐待している,または非常に危険という人はごくわずかですが,乳幼児健診後に実施している満足度調査の結果,「子どものことだけではなく,自分自身のことについても話を聞いてもらえてよかった」「自分のことを相談してもいいことがわかった」というコメントをもらっており,乳幼児健診が虐待予防の役割を担うようになったと思います。

TOPへ


愛知県小牧市 子どもの虐待予防
人口規模 148,387名 高齢化率 12.7%

目的
 健康ボランティアである保健連絡員により育児をスタートしたばかりの不安の大きい時期である生後2ヶ月頃までに全戸訪問を行い,この訪問により地域には自分のことを知ってくれている「頼れる近所のおばさん」がいることを親子に知ってもらう。
 そして,このことから親子が孤立せず,また,みんなで地域の子どもを育て,子育てを支援していく地域づくりを目指しています。

保健連絡員とは
 小牧市には119の行政区があり,区長の推薦で各区に1〜3名の保健連絡員が選出されています。
 保健連絡員は同じ地区に住む住民の健康のために,保健センターの専門職を活用しながら活動する健康ボランティアです。

赤ちゃん訪問実施方法
 依頼から訪問・報告までの流れは下記の通りです。
 訪問の結果,専門的支援,継続的支援の必要な親子に対しては保健センターの事業につなげて支援を開始します。

訪問依頼から報告までの流れ
保健
センター
 
保健連絡員
毎月2回訪問対象者のリストの打ち出し
訪問の依頼書,地図の作成
依頼書をもとに訪問対象者の説明
 
結果票をもとに報告を聞く
結果票をもとに報告
きづいた点があれば訪問結果票に記入
依頼書を受け取ってから2週間以内に訪問
依頼書をもとに訪問対象者の説明を担当保健師から聞く


成果
 育児相談や教室などに参加できず,一人で悩んでいる母親達にとって同じ地区の住人=保健連絡員が自分の存在を知ってくれることは,地区で生活していく上においてとても心強く感じることと思います。
 連絡員の皆さんも,この訪問がきっかけで同じ地区に住む親子に気持ちが向くようになり,訪問で知り合った近所の親子同士の橋渡しをしたり,また,ある連絡員は今まで訪問した赤ちゃんの写真を掲載した新聞を作成・回覧することで,新しく誕生した仲間が地区の中にデビューできたらと考えています。
 生後2ヶ月までが育児に対して一番不安があったと多くの母親達が乳児健診の時に言っています。この時期までに連絡員が全戸に訪問し,その報告により早期に保健センターが支援を開始することができることは,虐待予防にもつながっていくと考えています。

TOPへ


愛知県知多市 子どもの虐待予防
人口規模 83,407名 高齢化率 14.4%

事業の内容
 平成15年3月に策定した健康日本21ちた計画「みんなで健康ちたプラン」の中に,母子保健計画の一部を「健やか親子」の分野として加えています。「家族,地域ぐるみで子育てをしましょう」と示し,0〜5歳の子供を持つ母親が「子育てを楽しい」と感じてもらうことや「イライラしてつい子どもを叩いてしまうという母親がなくなり」こと等を目指して,児童虐待の予防活動を行っていますので,活動の中で私たちが大切にしていることを紹介します。
(1) 虐待ケースの早期発見はもちろんのこと,虐待の予防活動が保健センターの役割であると考え,ハイリスクケースをできるだけ妊娠中に発見し,早期からの関わりが持てるように努力しています。妊婦さんと最初の出会いは母子手帳交付の時ですから,その面接を大切にし,必要に応じて妊娠中から関わりをもつようにするとともに,両親学級で地域の育児支援情報を提供しています。
(2) 育児不安が強いなどのハイリスクケースについては,児童センターや子育て支援センターと一緒に関わりながら,他の母親と交流したり,子どもとの接し方を教わったりする場をつくるとともに,複数の相談場所を提供できるようにしています。複数の相談機関が関わることで,密な情報交換が必要になりますが,相談者側から考えると,相談場所を使い分けたり,違った職種,立場の人から複数の意見を聞くことができます。また,育児支援を意識して事業を共催で実施したり,家庭訪問を共同で行うことができます。
(3) ケースに関する情報交換及び各機関の役割分担と今後の関わりの方向性を明確にするために,虐待(疑い)ケース検討会を活用しています。

 当市には,市全体のネットワーク会議が組織されておらず,保健センターでの定例会(月1回)と,必要に応じて行われる臨時の個別ケース検討会の2種類があります。虐待ハイリスクケースを取り上げるのは主に定例会で,児童相談センターの児童福祉士,保健所の保健師,児童課の保育士,学校教育課の相談員,保健センターの保健師が集まっています。


事業の成果
 虐待の予防活動は育児支援活動と一緒で,関係機関と連携をとることで良い活動になると思います。知多市では,職種,立場が異なる者がそれぞれの見方でケースを観察し,その情報を交換しながらケースを把握し,同じ方向性をもって違う立場でフォローするという体制が整ってきました。それにより,連絡や打ち合わせなどの手間はかなり増えましたが,ケースへの関わりの質は上がったと感じています。
 虐待の危険性の高いケースに関わるには,たいへんなエネルギーが必要になり,保健師自身が精神的に疲れ切ってしまい,こころが病んでしまいそうになることを経験します。また,今行っている援助が本当に適切なのだろうか?と疑問に思い,立ち止まってしまう時もあります。そのような時も,複数の関係者で関わっていれば,関係者間で“それでいいんだよ”というメッセージを出し合ったりして,スタッフ同士で支え合いながら何とか乗り越え,前に進むことができているのだと思います。

TOPへ


三重県四日市市 子どもの虐待予防
人口規模 296,563名 高齢化率 17.2%

事業の内容
 四日市市子どもの虐待防止ネットワーク会議についての事務局は,児童福祉課です。保健センターは,当ネットワーク会議内での福祉分野のメンバーとして参加しています。
 会議の活動の内容として,
 (1)委員会の開催
 (2)推進委員部会
 (3)事例検討会
 (4)教育福祉情報交換会
 (5)連携会議
 (6)出前講座
 (7)地域子育てネット0〜6会議
に分かれており,委員としての参加及びケースに応じて地区担当の保健師が参加しています。

TOPへ


滋賀県大津市 子どもの虐待予防
人口規模 298,472名 高齢化率 16.0%

事業の内容
 大津市では,介護保険法の施行をきっかけに,それまで保健師が担ってきたケアマネジャー的役割を他に譲り,行政内で保健分野が行うべき予防活動に保健師の活動の基軸を置き直し,介護保険後も基本的な母子保健活動の質と量の充実を図ってきました。

1)基本的な母子保健活動の充実による子どもの虐待防止活動
 大津市では,南北に細長い地形による行政効率の悪さを解消するための政策として,市内を6ブロックに分け,保健福祉の活動拠点相談窓口としてすこやか相談所を設置しています。平成4年度から10年度までに6カ所順次整備しました。
 すこやか相談所整備前と昨年度の比較では,母子訪問の件数は約3倍(2,200件)に,子育て教室などの健康教育の回数は,4倍(約450回)に増加しました。また,母子保健法の改正により,県が実施していた3歳半健診,新生児訪問,妊婦教室を市の事業として実施しました。さらに新規事業として,両親教室,リプロヘルス健康教育(中学校での性教育や関係者の研修など),子育てが辛い親のためのグループミーティングを立ち上げました。
 このような母子保健の基本的活動の充実を背景として,育児困難家庭との早期の出会い,重度化防止のための対応を,平成10年度に「子どもの虐待防止」に視点を据えて活動を展開しています。

2)子どもの虐待防止活動の実際
 平成14年度の保健分野の虐待防止対象事例数は,予備軍も含めて74件であり,年々増加傾向にあります。具体的には,虐待防止担当を配置して,以下の活動を展開しています。
(1) スタッフの資質の向上のために,マニュアル作成・研修。
(2) 対応漏れ防止のために,対象事例名簿のシステム化・記録ファイルの作成
(3) 困難事例のために,本庁の虐待防止担当とすこやか相談所の地域担当とのチーム対応
(4) ネットワークについては,すこやか相談所では小地域ネットワークを,本庁担当者は,関係機関との大きなネットワークを作っている当市は,教育福祉とは昭和50年代からの障害乳幼児の療育にかかるネットワークのベースがある。また,医療機関とは,ハイリスク妊産婦・児連絡制度(県事業)がある。
(5) 子育てが辛い親のグループミーティングの実施


事業の成果
 当市では,保健分野が福祉に先行して虐待防止の取り組みを始めましたが,児童福祉分野の体制が今年度ようやく整備されました。このことにより,保健分野の役割は妊娠出産にかかること,精神保健の対応事例,就学前の幼児への対応に絞り込み,早期対応重度化防止を活動目標にしています。中でも,年間6事例ほどの妊娠期から関わりをはじめた事例は,未然防止をできたと考えています。また,親のグループミーティングは,親には好評です。親子の関係性の改善の気づきを目標としているため,関係性の改善の評価は,今後の課題です。

TOPへ


大阪府泉大津市 子どもの虐待予防
人口規模 77,538名 高齢化率 15.3%

目的と取り組みに至った経緯
 健やか親子21を踏まえた第2次母子保健計画策定にあたり,母子保健の入り口である周産期の施策が乏しく,地域の実態も明らかになっていないという課題と,支援を必要とする親子の多くは周産期から把握が可能で,早期から関わりをもつことがその後の虐待防止にも有効であることから,この時期に焦点をあてた事業展開を見直してきました。同時に児童虐待防止ネットワークにおいても,予防的観点からの活動として周産期におけるシステムが必要という議論があがり,行政と医療機関それぞれがハイリスク妊産婦の把握に努め,早期から支援し,育児不安の軽減と虐待防止を目的にこのシステムを開始しました。


内容
 現在,虐待防止ネットワークメンバーの市立病院の産科と小児科を中心に,若年初産婦やうつ傾向,育児不安などのハイリスク者を本人の承諾のもと保健センターに連絡してもらい,これを受けて地区担当保健師が訪問や電話で支援を開始します。一般的な育児指導と児の発達確認及び母のメンタル面への支援を中心に,必要に応じて医師や助産師との連絡調整を行います。まだ問題が表面化していない場合もありますが,児の成長に伴い,育児困難も予測されるので,健診での確認と年齢別の親子の集まる場への勧奨などを通した長期に渡る見守りを続けます。
 また,逆に事前に虐待防止ネットワークなどで把握されていた人が,妊娠・出産した場合も同様に医療機関に連絡するシステムとなっています。連絡方法としては,連絡票を用いた場合と電話や面接などの口頭での連絡の場合もあります。医療機関から連絡を受け,支援を開始した経過については,必ず文書や電話にて担当者に報告します。
 医療機関からの紹介理由は,半数以上が若年初産婦であり,その他産後鬱,強い育児不安,高齢初産婦などがあります。強く虐待が心配されるケースは今のところなく,保健師の個別対応で経過しています。


事業の成果
 早期から関わりをもつことは,産後直後の不安やしんどさが表出されやすく,受け入れも良好な場合が多いため,この時期に相談機関として認識してもらえることに今後の活動への手応えを感じます。若年産婦など比較的育児知識の少ない場合も知識を押しつけず,適宜育児のアドバイザー的な関わりをもつことで,楽しく育児できている様子がうかがえ,有効性を実感しています。


今後の課題
 市域全体のシステムとして定着させるために,他の関係医療機関に広げていくことや,関係職種に周産期からの支援の必要性の認識を高めるためのPRが必要です。そして,虐待予防も含め,長期的な予防活動となるので,経過を整理し,評価するシステムも検討しています。また,ハイリスク者の把握には,妊婦届票や新生児訪問など既存の保健事業での視点も含め,見直していくことが重要と考えています。

TOPへ


広島県大竹市 子どもの虐待予防
人口規模 31,043名 高齢化率 23.2%

タッチケア講習会の開催
事業の目的
 世界的にもスクリーニング効果が認められている,エジンバラ式産後うつ病自己評価票を取り入れたアンケートを,乳児を持つ母親を対象に実施し,アンケートの結果,ハイリスクとされたもの等にタッチケア講習会を通して育児不安の軽減・子育ての仲間づくりを図ります。


具体的な内容
 生後1〜2ヶ月の乳幼児を持つ母親全員に,エジンバラ式産後うつ病自己評価票を取り入れたアンケートを送付する際,タッチケア講習会の案内を同封し,電話で申し込みの受付をしています。また,ハイリスク等のものには,保健師が勧誘します。


講習会の進行手順
 会場で受け付け→はじめの言葉とタッチケアの紹介→タッチケアのビデオ鑑賞→タッチケアの効果と注意点の説明→参加者でタッチケア開始


事業における保健師の役割
 アンケート及び案内の送付。アンケート結果よりハイリスク者等へのフォローとして電話,家庭訪問,タッチケア等の保健事業の紹介。タッチケア講習会の開催。


今後の課題
 アンケートを返送してきてハイリスクとされた方には,タッチケア講習会でフォローできるが,返送がなかった方へのフォロー体制が十分ではないと感じます。新生児の家庭訪問も含めて,今後,より充実した体制づくりが必要であると考えます。
 また,上の子がいるため,タッチケア講習会に参加しにくいなどという方には,家庭訪問時にタッチケアを紹介するといった柔軟な対応も必要と考えます。


事業の成果
 講習会後日に参加した母親と話しをすると,「寝付きが良くなった」という声が時々聞かれます。また,タッチケア講習会の事後アンケートより,「子供とふれ合うことが楽しくなった」「子供よりも自分自身の気持ちが楽になった」「今まで赤ちゃんの扱い方がわからなかったが,講習会を受けてどんどん触れていいんだと勉強になった」など,子供と関わることについて肯定的な意見が多く見られ,母性愛着の向上に有効であると考えます。

 

TOPへ


徳島県阿南市 子どもの虐待予防
人口規模 57,274名 高齢化率 23.6%

事業の内容
 少子化社会にあって,親と子の心の健康問題,特に児童虐待の増加が社会問題となっており,地域保健行政としても対応すべき重要課題となってきています。子どもの心の安らかな発達と育児不安の軽減及び虐待の予防や早期発見などの虐待予防対策への取り組みが地域保健医療に求められています。
 そこで,虐待または虐待に至る可能性の家族を,既存の母子保健事業の活用により早期に発見し,対応するシステムを検討し,虐待の発生を未然に防ぐ予防活動を充実させるということを目的として,徳島県では,平成14年度より虐待予防検討委員会を発足し,乳幼児健診に新たな虐待予防の視点を取り入れ,虐待の早期発見,援助方針の検討などについての試行事業を実施しました。
 阿南市でもこの機会に乳幼児健診を見直し,問診項目を新たに追加し,健診会場では母親の話が十分に聞けるよう,今まで以上に配慮することにしました。

(問診追加項目)
(1)子育ての相談者の有無
(2)子育ての協力者の有無
(3)子育て中のイライラ感の有無
(4)子どもの時愛された思いの有無
(5)悩みの有無

 健診の後のカンファレンスで,要フォロー者の拾い上げをし,問題点の把握・虐待のレベル判断や援助目標・支援方法についてスタッフ間で検討し,共通理解をしました。また,必要に応じて関係機関との連携をとるようにしました。


事業の成果
 試行事業実施であったので,毎回健診方法を検討しながら改善していきました。その意味では,従来の健診を見直す事ができたと思います。また,虐待予防に視点をもった健診や事後カンファレンスの場の経験を積むことにより,虐待予防に対する保健師の意識が高まったように思います。一方,保護者には健診の場が子どものためだけではなく,自分のことも相談できる場として受け入れられたと思います。
 今後の課題として,健診スタッフの充実や,要フォロー者への個別支援の質の向上,教室などのフォロー体制の充実,関係機関との連携の充実などが挙げられます。
 以上のように問題は山積していますが,虐待予防検討会で各市町村の意見を聞きながら,今後もこの「虐待予防に視点をもった健診」を続けていく予定です。

TOPへ
 
平成15年度 Topへ戻る
「健康日本21地方計画」モデル事例集へ戻る