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介護予防

岩手県滝沢村
栃木県茂木町
愛知県大府市
愛知県高浜市
島根県湖陵町
広島県東城町
山口県徳地町
徳島県阿南市
大分県日出町


岩手県滝沢村 介護予防
人口規模 51,978名 高齢化率 12.0%

1.筋力アップ教室
目的
 高齢者の運動の習慣化により,心身機能の維持・増進を図る。本事業の効果を把握し,高齢者対策の予防体制を構築する。


経緯
 平成14年度滝沢村老人保健福祉計画見直しの際の住民の声として,「いつまでも元気で,やりたいことができる」など,加齢に伴うADLの低下を心配し,健康づくりに関するサービスの希望がありました。また,先駆事例での高齢者の筋力向上にかかる効果が明らかになり,本村でも上記のようなニーズから取り組みの必要性を認識しており,14年度から事業を実施することになりました。


内容
 60歳以上の一般高齢者を対象に,平成14年4月〜平成15年3月までの期間,理学療法士,エアロビクス指導員,レクリエーション講師,保健師,看護師が従事し,セルフチェック,ストレッチ,エアロビクス,セラバンドによる筋力トレーニングを行いました。


役割
 教室の企画において,岩手リハビリテーション学院や県立大学看護学部と事業の流れやそれぞれの役割,評価に伴う事前の準備について確認しました。実施においては,セルフチェック定着のための見守りと,体調不良者,不整脈等の状況確認が中心となりました。終了前後は,自主グループ活動のための情報提供や,主観的健康観の把握と継続のための要因について検討しました。


連携
 自主グループ活動に結びつくような情報提供,自主活動開始後の状況確認や見守り


成果
 参加者の具体的評価では,開眼片足立ちや脚筋力の項目で改善がみられました。また,参加者にお願いしたアンケートの記入内容をみると,教室前後の主観的健康観の評価では,「体調が良い」「生活に満足している」「生きがいを感じる」とのコメントが多くなっています。生活面の変化では,「体力がついて疲れにくくなった」「気持ちが前向きになった」「運動の習慣がついた」等のコメントがみられました。運動継続のための重要な要因は,「仲間・友人」「運動できる場・施設」「専門スタッフの指導」が上位3項目として挙げられていました。
 今後は,運動の継続が出来ない人に対する精神面のフォローや自己管理を行い,安全に楽しく参加できる環境づくり,仲間同士のつながりを深める関与が必要です。15年度は,虚弱,要支援,要介護1の方を対象としたパワーリハビリテーションも行い,参加者が活動的な生活を送るための行動変容と自立度の改善を目指して活動中です。

2.いきいきサロン
目的
 既存施設を利用し,近所の人たちとの交流を通して気分転換を図ることにより,高齢になっても自分らしく生活が送れるよう,また,住宅で生活する上での各種相談を行い,支援の必要な方へ早期から関わりを持つことにより,閉じこもりや機能低下を防ぎ,自立を促すことを目的とする。


経緯
 平成11年度策定の老人保健福祉計画の方向性(住民のニーズより目標化)においても「近くに集まれる場所がある」「生きがいを持っていきいきと暮らせる」「集まって楽しく交流・気分転換ができる」等が挙げられ,それらの目標に対応する事業として平成12年度より事業を開始しています。


内容
 地域で高齢者を見守り,支えていく事業として,自治会や協議会により「いきいきサロン」を立ち上げていただき,村が立ち上げや運営を支援する(実費程度分の委託料等)ほか,月1回の健康相談・支援センターによる相談,地域型在宅介護支援センターによるIADL訓練教室を行っています。ボランティアや自治会などの方が,会場の鍵の開閉,利用者の話し相手,レクリエーション,手工芸の講師等を自主的に行っています。


現状
 平成15年時点では6カ所の地域で開催され,中には世代間交流の場やボランティアの拠点となっている地域も見受けられます。平成14年度は1,091回開催され,利用延べ人員は11,999人です。


成果
 利用者から,「自分も通うところができた」「このようなボランティアをしたいと思っていた」「集まって皆と集うのが楽しい」等の声が聞かれている他,自然に地域での顔のつながりができ,見守りにつながっている地域も見受けられます。


今後の展望
 本事業の目的から,各地域での開催に向けて取り組んでいく必要があります。また,サロン相互の情報交換会等を通し,内容の充実を図っていく必要があります。将来的には,高齢者のみならず,様々な年代の方が気軽に立ち寄れる地域のサロンに育って欲しいと願っています。

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栃木県茂木町 介護予防
人口規模 17,684名 高齢化率 28.0%

事業の内容
 山間地の多い当町では,腰痛や膝痛を訴える高齢者が多く,ウォーキング等の運動指導は無理な状況でした。そこで平成4年度より,どのような健康状態の人でも実施可能な運動として「生命の貯蓄体操」を導入し,高齢者の運動の習慣化を目的に実施しています。
 教室は,まず保健師が地域の老人クラブ等に呼びかけ,最寄りの公民館などで町主催の健康体操初心者教室を1週間に1回,1時間30分程度,8回コースで開催します。講師は,(社)生命の貯蓄体操普及会に派遣を依頼するとともに,町保健師が指導にあたります。修了後,継続希望者が自主組織を作って毎週1回,体操教室を続けており,意欲のある住民が研修を受けて指導員として指導にあたっています。継続教室を支援するため,指導員の研修サポート及び組織運営も町が側面から支援しています。
 現在7教室,100名が継続教室に参加しています。指導員数12名です。


事業の成果
 平成10年1月〜平成12年9月にわたり,体操実施者に対し,医療費の変化及び自覚症状などの調査をしたところ,多くの実施者に医療機関受診の適正化傾向及び不定愁訴やADL動作の改善がみられました。自宅でも毎日実施している方が多いようです。体操を継続することにより,できなかった動作もできるようになり,体力や筋力が向上し,尿失禁等も改善し,旅行に出かけたり外出が多くなる等の積極性がみられるようになりました。今後は,教室継続者への体力測定等を実施し,客観的データを増やし,評価の正確性も高めたいと思います。
 長期継続者の体操効果が口コミで広がり,初心者教室の開催希望が地域からでるようになりました。本教室を各地に増やし,高齢者の体力を維持し,寝たきりの予防に役立てていきたいと思います。

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愛知県大府市 介護予防
人口規模 77,570名 高齢化率 13.6%

事業開始の経緯
 地域住民に向けて集団健康教育を通して知識の普及や啓発を行っても,健康づくりのための重要な部分である運動や栄養を中心として,その教育内容が長期間にわたって継続的に実践されることは多くありませんでした。
 そこで,個々の住民の意識を高め,継続的に実践してもらうためにはどうしたらいいかということを検討し,有効な事業展開を図るために,13年度から始めている介護予防事業の見直しをすることにしました。
 介護予防事業の目標を「誰もが興味をもてるタイトル」で「誰もが簡単にできる」「効果測定のしやすいもの」とし,教室修了後も「継続」してもらえるように内容を見直しました。


1.運動指導事業・個別健康教育
目的
 40〜60歳の方を対象にした,健康づくりのための生活習慣の改善及び健康増進のための教室を,「ボディデザインスクール」と銘打って,スポーツ課との共催で≪キレイで,カッコイイカラダになってみたい≫と思っている方を対象に募集しました。また,個別健康教育の対象者は,個別指導の効果をより高めることができるよう,運動指導事業へも参加してもらうことにしました。


内容
 誰もが無理なく取り組むことができる健康づくりのための運動及び食生活週間を身につけてもらうためのレジスタンストレーニング(スクワット,シットアップ,プッシュアップ),食事,フェイスエクササイズ,リラクゼーション等の講義と実技を,医師・健康運動指導士に依頼して年11回で実施しました。

■プログラム
日程 10回コース(各回のテーマ)と同窓会 内容
1 5月31日 今からでも十分間に合う「キレイでカッコイイ」カラダづくり 1 内容説明
2 6月7日 ドクター都竹が伝授する,実践!!「カラダを変える方法」 2 健康チェック(1)
3 6月14日 タンスの肥やしになっているお洋服を蘇らせてみましょう! 3 初回指導
4 6月21日 リバウンドしない,させないボディデザインの極意    
5 6月28日 自分のカラダの声が聞こえていますか? 4 1ヶ月後指導
6 7月5日 お金も骨も今からコツコツ貯めよう    
7 7月12日 自分でやってみよう,リラクゼーションとフェイス・エクササイズ    
8 7月19日 ちょっと気になる海の向こう,アメリカ人って本当に健康オタク? 5 健康チェック(2)
9 7月26日 キレイになって病気予防,ボディデザインは家計の味方 6 2ヶ月後指導
10 8月2日 一家でボディデザイン!キレイな奥さん&カッコイイ旦那さん 7〜10 3ヶ月後指導
健康チェック(3)
4・5ヶ月後指導
11 11月15日 ☆★ボディデザインスクール同窓会☆★ 11 健康チェック(4)
12     12 6ヶ月後指導


事業の特色と保健師の役割
 生活習慣病の改善をうたったアプローチではなく,個人の健康レベルや興味に応じて継続して取り組むことができ,日々の生活において僅かな工夫や心がけで“健康になれる”という気づきを促し,“時間のない人”“運動が苦手な人”“今まで失敗を繰り返してきた人”でも健康づくりができ,そのモチベーションが持続するように,1回ごとに参加者の意見や反応を取り入れて教室を運営しました。
 保健師は事業実施の企画,教室全体の運営,参加者の募集,その他事業の実施に伴う事務を役割として,講師は企画に基づいた教室の講義・実技のプログラム作成,アンケート集計・評価を担いました。勿論募集を開始するまでは,綿密に保健センターと講師の間で打ち合わせを行いました。


事業の成果
 事前事後でアンケートを行い,自覚症状・ライフスタイル等の変化を確認しました。参加者の感想は,「ただの健康教室だと堅苦しいですが,ボディデザインスクールはキャッチコピーもいいし,内容もわかりやすく,自らの健康を考えさせられる講義でした」「美容にも健康にも効果があると誘われれば,積極的に参加したいと思うのは当然です」「最初は1回もできなかった腕立て伏せが,毎日やっていたら30回はできるようになった」「頑張りすぎず,あきらめず,ボチボチという呼びかけがよかった」等好評なご意見を頂きました。
 また,同時に開催した個別健康教育参加者の生活改善の効果も,他市町村の改善データよりも良い結果が得られました。


今後の課題
 昨年度実施した教室参加者に対し,継続支援と1年後の状況を把握するために,アンケートを実施しました。現在,結果を集計中ですが,健康へのモチベーションを維持し,継続につながるように指導内容を検討していくことが課題となっています。加えて健康日本21大府市計画に合わせ,ライフサイクルに応じた事業展開を継続していくことも必要であると考えています。


2.転ばぬ先の塾(転倒骨折予防教室)
目的・内容
 60歳以上の市民を対象に,転倒を防ぐための体力づくりと転倒骨折に対する意識を高めるため,転倒予防教室(高齢者のための簡単な筋力トレーニング,住まいの危険あれこれ,栄養の話等)を市内5会場で実施しました。7回コースとし,講師を健康運動指導士,1級建築士,管理栄養士に依頼しました。


事業の特色と保健師の役割
 転倒の予防を,身体面・環境面から考えてもらうように提案しました。特に運動の実技は回数を多く取り入れ,参加者に日常的に実践してもらうとともに,参加者の転倒骨折予防,運動習慣を意識づけてもらうことに重点において実施しました。
 保健師は,教室の企画・運営・評価など事業一連を担い,講師との事業前後,開催中も随時綿密な打ち合わせを行い,目的が達成できるよう検討を重ねながら進めました。


事業の成果
 教室終了2〜3ヶ月後のアンケート結果から,数ヶ月経過しても転倒予防への意識の高さが伺えました。また,参加者の中から自主グループが組織され,毎年少しずつメンバーを入れ替えながら会を続けていきます。


今後の課題
 多くの高齢者が参加しやすいように,市内の各地域で開催し,個々の日常生活の中で予防意識を高めることが大切になります。また,多くの市民に転倒骨折に対する予防意識と行動を生活の中に取り入れてもらえるように啓発していくことが課題となります。


3.痴呆探検教室〜不思議の国のジミー&バミー〜(痴呆予防教室)
目的と内容
 対象者を「痴呆について学んでみたい方」と「痴呆症状のある方及びその家族」とに分けて痴呆について正しい知識をもってもらい,その予防に取り組んでもらうと共に,現在痴呆の方を介護している方には,その対応の仕方について学んでもらうために,医師,看護師,音楽療法士,管理栄養士に依頼して,どちらも4回コースで実施しました。


事業の特色
 市内の4つの在宅介護支援センターと共催で,託老を設けて行うことにしました。しかし,その前に人集めが肝心ですので,まず人を集めるためのネーミングに時間をかけて検討しました。ありきたりの名前では集まりにくい事業ですので,奇抜な名前にしようと皆で知恵を出し合い,このタイトルにしました。
 教室の内容も,教えるのではなく知ってもらうことを前提に内容を考え,講師を選びました。いつも患者を診ている“物忘れ外来”の医師,痴呆介護の現場に携わっている看護師,楽しく音楽療法をしてくれる先生,それにスタッフ一同による事実に基づいた寸劇の上演などにより,痴呆を知ってもらうことができました。


事業の効果
 両コースとも定員には至りませんでしたが,教室終了時のアンケートでは「少し気が楽になった」「色々な角度から痴呆を見つめることができた」「声を出すことの大切さ,食事の大切さがわかった」「寸劇は,痴呆の内容を優しくまとめたものでとても良かった」など,「良かった」と回答する方が多く,好評を得ました。
 在宅介護支援センターは,各施設ともすべてデイケアあるいはデイサービスを併設し,介護現場をよく把握しています。また,参加対象者と接触する機会が多く,痴呆に対する現場情報も豊富です。寸劇を行うにも人手が要るため,何より保健センターだけでは参加者が集まらないので,共催するメリットはとても大きなものがありました。
教室の打ち合わせを重ねる中,企画・運営等の充実が図れたこと,教室運営の話し合いを通じて他の業務についても連携が図りやすくなりました。


今後の課題
 体験者の話,参加者同士のディスカッションなど参加型の内容を検討すると共に,生活に沿った具体的な話が聞けるような内容と講師を選び,より多くの参加者が集められるよう教室の開催方法を検討していくことが課題となりました。
 ちなみに15年度は対象者を分けずに8回コースとし,希望する回だけの受講でも良いという自習度の高い教室にしたところ,定員を大きく上回る申し込みがあり,多くの人にお断りをするような事態になってしまいました。
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愛知県高浜市 介護予防
人口規模 39,943名 高齢化率 15.6%

事業の内容
 市内4カ所の宅老所において,各会場月1回ずつ「わかぎ塾」を開催しています。内容は,体操やものづくり,ゲームなどのレクリエーションを主に行っています。参加者の方に季節感を味わっていただくため,お正月やクリスマスなど,季節にあったテーマを選ぶようにしています。右脳刺激や身体軽運動を行うことで,痴呆を予防することを目的としています。
 宅老所は,高齢者が立ち寄り,一緒に話や食事をしたりすることで,利用者の精神的サポートや閉じこもりを予防することを目的としています。施設の運営は,地域のボランティアの方が中心となって行っているため,家庭的でアットホームな雰囲気の憩いの場です。
 教室には保健センターのスタッフが出向きますが,その他に宅老所で活動しているボランティアや,わかぎ塾で活動してくださるボランティアも参加し,麻痺や難聴など参加が困難な利用者の方をサポートしていただいています。わかぎ塾ボランティアは,次月に行う内容の検討や準備のため,ほぼ毎月1回の打合会をしています。
 教室では保健師が血圧測定を行ったり,健康相談を受けることもあり,参加者との関係の中から,生活や体調の変化に気付くこともあります。年度末には二段階方式かなひろいテストを行っており,参加者の痴呆傾向早期発見に努めています。


事業の成果
 わかぎ塾での様子や,宅老所管理者・ボランティアから得た情報をもとに,自立援助事業や介護保険事業に結びつけることもあります。普段,なかなか知ることのできない地域での情報を得るのに役立っています。

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島根県湖陵町 介護予防
人口規模 5,860名 高齢化率 26.2%

事業の内容
 高齢化が進み,特に独居や高齢者世帯の多い本町では,高齢者の閉じこもり,介護予防が課題となっており,平成9年度から保健師と社会福祉協議会が協力して自主活動の熱心な大池地区へ働きかけ,民生委員,保健部長,婦人会等の地区役員を中心にネットワークを組織し,高齢者の見守りや空き家を借りてのミニデイサービス事業(閉じこもり予防,介護予防,健康づくり事業)をスタートしました。この事業は高齢者の楽しみとなり,運営する組織の役員は,介護予防,健康づくり,地域福祉への理解が深まりました。
 そして,この事業を全町に普及させようと,平成11年度には10地区より代表者を選出してもらい,「保健福祉リーダー養成講座」を実施し,6ヶ月で64時間の講座を21名が受講されました。また,介護保険開始前年の「介護予防拠点整備事業」により,地区公民館の段差改修や備品整備も行いました。養成講座修了者を中心に協力員を募り,介護保険制度開始と同時に9地区で「ミニデイサービス事業」をスタートし,半年後には全地区で実施できるようになりました。月平均2回実施,10時から3時まで,昼食は協力員の手作りで(体制が整わないところは弁当),一日の過ごし方など大池地区を参考に運営モデルを示し,町からの補助金(開催回数,参加人数に応じ)により,それぞれの地区で実施してもらいました。
 初年度は,地区代表者と定期的に話し合いを持ちましたが,話し合いのたびに喧々囂々となり,不安なスタートとなりました。そこで,それぞれの地区を巡回して協力員との話し合いも実施し,要望により協力員を対象としたレクリエーション教室や食品衛生の話,救急法講習を実施するなど,内容の検討や改善を図りました。また,年間計画の中に健康づくり講演会,高齢者歯科教室,筋力アップ体操,栄養講座等を組み入れてもらうよう働きかけ,保健師や栄養士,歯科衛生士,運動指導士は講師として活動に参加しました。
 現在活動は4年目となり,ミニデイサービスの実利用者は480人で,65歳以上の約4割の人が参加していることになります。また,協力員も40代から70代までの約300人が,自分の都合のつく日に協力員として活動し,住民の自主活動による相互支援体制ができました。


事業の成果
 利用者からは,「皆さんとの話がとても楽しみ」「一人でご飯を食べるより皆で食べると美味しい」という声が聞かれ,一緒に食事をしながらお話しをし,笑うことで高齢者の閉じこもり予防,介護予防,健康づくりに役立ち,月2回の利用を楽しみにされるようになりました。また,高齢者の状況がよくわかるようになり,初期痴呆等の高齢者の変化に早期に対応できるようになってきました。
 活動開始当初,役場や社会福祉協議会の仕事を肩代わりさせられると感じていた協力員も,活動を進めるうちに「高齢者の方に喜んでもらえるのがとてもうれしい」「自分たちも元気に年をとりたい」など,高齢者と関わることで,高齢者を地域で支え,いずれ自分たちも住み慣れたこの地域で支えてもらいたいという相互支援の意識や健康への関心も高まってきました。今では,それぞれの地区の創意工夫により,地区特性も生まれ,地域の大事な活動として位置づけられ,定着してきています。

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広島県東城町 介護予防
人口規模 10,446名 高齢化率 37.0%

目的
 高齢者に転倒予防のための知識と運動習慣を身につけてもらうこと,また,公民館や自治館単位など地域で集うことにより,交流を持ち,閉じこもりを予防する。


経緯
 要介護に至った原因疾患に筋骨格系疾患が多かったため,何か高齢者の運動の事業がしたいと考えていました。保健師だけでなく,在宅介護支援センター職員からもそんな意見を聞いていたので,運動指導のNPOを紹介してもらい,国保の健康推進事業で経費の見通しがたったのをきっかけに,保健師で素案を考え,高齢者サービス調整チームでまとめていきました。


内容と実施方法
 原則週1回1時間30分の運動指導,30分の座談会や講義等を6〜7回年間3地区で実施しました。
(1) 高齢者サービス調整チームの中で,福祉担当者,3カ所の地域型在宅介護支援センターと協議を重ね,計画を作りました。
(2) 対象者への周知と参加を促すため,また,教室修了後の地域での継続の必要性を考え,地域の組織に役場と在宅介護支援センターとともに主催になってもらいました。
(3) 地域組織の役員,在宅介護支援センター,福祉担当者,保健師で事前説明会を開催しました。
(4) 会場までの交通手段は,参加者同士の乗り合わせに加え,在宅介護支援センターにお願いしました。
(5) 教室修了後,地域役員,在宅介護支援センター,保健師が協力し,地域での自主活動につながるよう後押しし,介護予防の予算で継続して自主活動をしている地区へは,講師のNPOに出向いてもらい,活動を支援しました。


保健師の役割
 町,地域の実態を考慮しながら素案を考え,協力してもらえる社会資源を見つけて活かすこと,地域の協力者,対象者に十分理解してもらう機会を作ること,使える予算を見つけてくること,在宅介護支援センター,地域の協力者等との良いコミュニケーションを保つこと,地域や組織の悩みや相談等にのりました。今後は,住民の工夫やアイディアを共に協議し,実行に移すことも必要と思います。


地区組織及び地域住民との連携
 これが成功の鍵だと思います。沢山ある地域の中から3地区を選ぶときに,他の運動の機会が少ないこともですが,特に初年度は各地域型介護支援センターの担当地区の中で,まとまりがあり,活発な役員さんがいることも考慮しました。まず,電話などでの下話や,各組織,例えば民生委員協議会,公民館会議などへの説明,そして事前会議の開催,必要に応じて地域に出向いた説明会,その都度の電話連絡など,十分に趣旨を理解してもらい,自分たちの事として地域で盛り上がっていくよう,連携していきました。


事業の成果
 体力チェックのデータの向上,身体機能の向上,また,集うことにより,人とのふれあいが持てたこと,こけないように注意するなど,生活面でも意識付けができたこと。そして,運動指導の専門家に頻繁に来てもらうことにより,スタッフ研修にもなり,今回の「こけまぁーで」の対象地区でないところへも,広まっていったことなど地域のニーズと結びつくことができたと思います。
 また,在宅介護支援センターには,高齢者の要介護状態の予防や発見,ケアといった役割がありますが,今回の「こけまぁーで」運営は,在宅介護支援センターのより積極的な介護予防の取り組みにつながりました。当町の広い面積と高い高齢者人口割合を考えると,住民も含めて既存の各組織が,一つの事業を協働で行うことにより,それぞれが力をつけていくことは,とても大切なことと考えます。


今後の展望と課題
 未実施地区に広めていくこと,実施地区の自主グループ支援をしていくことにより,長期に渡り,高齢者の体力向上を目指すこと。そして,集い交流をすることにより,心の元気を育んでいきたいと考えています。課題は,第一に予算確保,次に現在の自主グループは,特定の人に負担がかかり,マンネリ化し,疲弊してしまいやすい傾向があるため,どのように支援・強化していけば良いかということ,そして,住民の意見や考えをしっかりと聞く場と仕組みをつくることだと思います。
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山口県徳地町 介護予防
人口規模 8,449名 高齢化率 36.9%

経緯
 我が町は広大な面積(約290km2)を有する過疎の町で,交通の便が悪いことから,虚弱高齢者が気軽に出かけたり,仲間と交流を図りにくい状況にあります。しかし,高齢者の元気づくりには仲間とふれあうことが大切であると考え,虚弱高齢者の集う場として,B型機能訓練事業「まめに暮らそう会」を全町域に開設しました。


内容
対象者
(1) 介護保険認定者を除く,概ね65歳以上の虚弱者及び一人暮らし等
(2) 介護保険認定者のうち,要支援者(参加者の要望により,平成14年11月から対象としました)

実施会場・回数

 公民館など14カ所で実施。会場まで遠い人は送迎あり。各会場にて月2回開催。

実施内容
 2事業所に委託して実施。担当職員は看護師(1人)と補助員(2人)で,毎回健康チェック,健康相談,体操,日替わりメニューとして手工芸,ゲーム,レクリエーション,講話など趣向を凝らしています。

保健師の役割
(1) 介護保険制度開始とともに,介護予防事業として本会を創設。
(2) 運営に関する業務連絡会を毎月1回開催。
(3) 健康教育や要注意者への訪問指導など,他の保険事業に連動
(4) 適切な時期に介護保険サービスを導入


地区組織との連携
 特技を持つボランティアの参画(音楽や手工芸の指導),地元小学生との交流,食生活改善推進員による健康的な食事の試食提供等の支援を受けています。


事業の成果
 地域で集う場ができたことで,高齢者の生き甲斐づくりにつながっています。回数を重ねるにつれ,内容が充実してきたことと共に,福祉祭りにおいて活動状況の写真や作品を展示して,会の活動を目に見える形で紹介したこと等から,地域に高齢者が集う元気づくりの場という認識が徐々に広がっています。


課題と展望
1)地域住民への啓発
 閉じこもり予防として本当に必要な人に,まだ十分利用されているとはいえない現状にあり,今後,さらに地域全体に「虚弱高齢者の元気づくりの会」であることを啓蒙し,さらにより多くの住民にボランティアとして関わってもらうことで,介護予防意識の啓発につなげていきたいと考えます。

2)内容の充実
 男性の参加が少ないので,今後,男性の参加に向けて内容の検討も必要です。

3)事業評価
 13年度に東京都老人総合研究所が開発した「老研式活動能力指標」を使った調査票で全員に実態調査をしましたので,今後,その追跡調査を実施すると共に,客観的評価方法を模索していきたいと考えています。
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徳島県阿南市 介護予防
人口規模 57,274名 高齢化率 23.6%

 介護保険開始後,給付費は年々増加(平成12年度約28億円が14年度見込み約41億円)し,市の財政逼迫が問題となってきました。阿南市では,介護保険給付費と医療費の削減を目的に,平成15年度より,従来の委託事業での生きがいデイサービスや宅配食に加えて,保健センターによる介護予防などの事業を進めることになりました。

1)介護予防事業
 介護予防事業は,高齢者を対象に高齢者ができる限り要介護状態になることなく,健康でいきいきとした老後生活を送れるよう支援する観点から,転倒骨折予防教室(寝たきり防止事業),アクティビティ・痴呆介護教室,IADL(日常生活関連動作)訓練事業を実施しました。市内13カ所で,講師(健康運動指導士・レクリエーション指導者・介護支援専門員・管理栄養士など)による健康教室を行っています。また,同時に保健師・看護師による健康確認(健康度評価・健康相談)を実施しています。また,精神科医師や介護福祉士などによる痴呆介護や転倒骨折予防を目的とした運動についての講演会も実施しています。

2)高齢者食生活改善事業
 高齢者食生活改善事業は,高齢者及びその家族,その食生活に関する指導を行う者を対象に,高齢者の食生活を支援することを目的としています。老化を防ぐ食生活・寝たきり予防食生活・元気で長生き食生活・男性健康料理教室など多様な視点から食生活の基本講義,調理実習などを交えながら実施しています。

3)運動指導事業
 運動指導事業は,40歳以上の者で基本健康診査や健康度評価等の結果から運動指導を行うことにより,生活習慣病予防の効果が期待できると認められる者を対象に,市内6カ所で,月8回実施しています。講師(健康運動指導士)による健康教室を行っています。また,同時に保健師・看護師による健康確認(健康度評価・健康相談)を実施しています。


事業の成果
 本事業を実施するにあたり,健康ボランティアの活用,在宅栄養士の育成,在宅看護師の雇用などスタッフの育成から行う必要がありました。また,地域住民への周知に努める必要もありましたが,回数を多く実施することと,複数の会場を設定したことで浸透していったようです。
 また,ボランティアや在宅のスタッフによる草の根の周知がされたことも大きいです。老健事業と介護予防事業を同時進行で実施することで,相乗効果がみられ,参加数も住民の健康への認識も上がってきたことがうかがえます。今後の課題として,健康度評価事業を効果的に活用し,より個人個人に合わせた健康増進を進めていきたいと思います。
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大分県日出町 介護予防
人口規模 27,278名 高齢化率 21.6%

1.ハッピィ教室(転倒骨折予防教室)
目的
 転倒予防に効果的な運動方法を実践することで,転倒による骨折を予防し,要介護状態になることを防ぐために開催しています。


経緯
 介護保険の要支援・要介護認定者の主治医意見書から疾病状況をみると,筋・骨格系疾患(骨折を含む)が2番目に多いこと,日出町の医科費用額で高額の要因のひとつに老人の骨折の入院が多いことから,教室を企画しました。


内容
 自分で会場まで来られる60歳以上の人を対象に,2地区の公民館で週に1回6週間にわたって体力測定,講話やストレッチ体操,筋力増強のための運動,歩き方などを実施しました。その後,筋力アップを図るために,保健福祉センターのトレーニングルームで運動機器を体験し,各自の個別プログラムをたて,トレーニングルームの利用につなぎました。


スタッフ
 講師(運動指導士),保健師,看護師,健康運動普及推進員,ボランティア


課題と展望
1)対象者について
 運動習慣のない人等リスクの高い人が参加できるように働きかけをしていきたいと思います。

2)運動ボランティアの養成について
 教室の内容の充実,継続性を考えると,ボランティアの育成が必要であると思います。

3)トレーニングルームの指導者の確保について
 今年度は半年間トレーナーが配置されましたが,来年度以降はトレーナーがいないため,指導者を確保する必要があります。


事業の成果
参加状況を見ると,参加者の半数以上が全回出席し,1回のみの欠席も含めると参加者の83%を占めました。また,アンケートから教室をとても楽しみにしていた,まあ楽しみにしていた人が98%にのぼりました。
教室前後の体力測定では,集団の平均で6項目全てが,個人の総合評価も約44%の人がアップしていました。
最後に実施したアンケートから,98%の人が生活や気持ちに何らかの変化があったと回答がありました。具体的には,運動回数が増えて運動習慣ができたこと,健康に注意が向くようになったこと,気持ちが明るくなった,友達ができたと心身両面の変化がありました。中には布団の上げ下ろしが楽になった,階段を昇るとき足を交互に出して昇れるようになったと具体的な声がありました。
来年度以降,他の地域での教室の開催を検討しているところです。


2.脳のリフレッシュ教室
目的
 高齢者がふれあう場をつくり,明るく楽しくふれあいながら,脳を刺激して痴呆の予防につとめるとともに,痴呆を早期に発見し,支援することで,痴呆の重症化を防ぐために開催します。


経緯
 介護保険の要支援・要介護認定者の主治医意見書から疾病状況をみると,痴呆で認定を受けた人は認定者の13.5%で3番目に多く,介護度を見ると要介護度4と5の人が約半数を占めていました。これは痴呆が重症化して受診するためではないかと思われます。今後,高齢者の増加に伴って,痴呆高齢者が増えることも予想され,痴呆予防活動が重要と考え,当事業の企画に至りました。


内容
 痴呆予防のための講演会を実施し,その後,脳をいきいきと活性化させる体験ができる場として痴呆予防教室を開催しました。月に2回集まり,運動,歌,創作,調理,ゲーム等を通して脳をいきいきと使って脳の活性化を図り,また,脳のいきいき度テストを教室のはじめと終わりに行います。


スタッフ
 地区の健康づくり推進員,保健師,看護師,講師


課題
脳のいきいき度テストから,その人にあった生活指導ができるように保健師のスキルアップをはかる
教室が楽しく,笑いがはじけるようにする
教室修了後,自主教室になるように支援していく
他の地域へも広げていく


事業の成果
 笑顔のなかった人に笑顔がでたり,一人暮らしの人は仲間との交流を楽しんだりできるようになった。まだ,教室の途中であるので,前後の脳機能の変化を楽しみにしています。

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