都市部の高齢化

2010年から2025年までの15年間における全国の後期高齢者の増加数760万人のうち、上位6都府県(東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県、愛知県)の増加数は373万人と、約半分を占める。そこで今後、都市部では、高齢化に対応した医療提供体制の充実と地域包括ケアシステムの構築が不可欠となる。しかし、現状は必ずしも展望が開けているわけではない。

まず、医療提供体制において肝心要の救急医療であるが、都市部では厳しい状況が浮かび上がってくる。救急通報を受けてから救急車で病院に収容されるまでの時間を見ると、2014年において都道府県別で最も時間がかかっていたのは、東京都51・8分、次いで埼玉県の45・5分、千葉県の44・5分である。後期高齢者が増え、首都圏の救急需要が増大し、対応できていないということなのだろう。

対策としては、必要のない患者まで救急車を利用することをどのように抑えていくか、入院患者の早期退院をどのように実現するかの2点になるが、いずれも在宅医療の普及が前提になる。在宅の高齢者の病状が急変しても、まず在宅医療で対応してもらう。入院医療と在宅医療の継続性を確保し、早期退院を実現するということである。特に都市部では、急性期病院も在宅の診療部門を持ち、病院の医師、看護師、リハ職員が地域の在宅医や訪問看護師、訪問リハ職員との連携のもとに、在宅復帰を実現していくことが重要になる。

しかし、医療連携だけでは在宅の受け入れは困難で、手厚い在宅介護も欠かせない。

例えば、東京で高齢者が要介護状態になって退院となると、今は大変な実情だ。特別養護老人ホームの整備率は全国で一番低いから、2〜3年の待機は当たり前であり、すぐには対応してもらえない。在宅といっても家族介護には限界があるから、結局、家族は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探すことになる。

そして、ここからはお金との相談になる。一時に比べれば、有料老人ホームの料金は下がってきたとはいえ、23区内では、入居一時金は1000万円強、月々の利用料25万円ぐらいが相場になっている。月々25万円というと、一般的には厚生年金の月額相当になる。老夫婦で暮らしていて、例えば、夫が要介護状態になり有料老人ホームに入ると、在宅に残る妻の生活費はなくなってしまう。

そこで、月額17万円くらいのところがないかと探すことになる。そうなると23区を離れて、神奈川県、埼玉県、千葉県などの周辺の県でということになる。

では、月額17万円も払えないという家庭はどうなるか? 基礎年金しかない世帯は夫婦二人でも満額で月々13万円程度であり、このような家庭も多い。選択肢としては在宅で介護サービスなどを利用しながら、やむを得ず家族が介護するということになる。しかし、在宅では介護できないとなると、無届の老人ホームのようなところで、サービスの質は低いがあずかってもらわざるを得なくなる。いわゆる介護ハウスである。

このようにみてくると、都市部では在宅医療と在宅介護を中心とした新しいケアモデルを組み立てていくしか方法がない。

例えば、空き家を利用して、要介護の高齢者が4〜5人でシェアハウスのように住んで、そこに24時間対応の訪問介護看護サービスを提供するというのはどうだろうか。

また、家族介護ができないのであれば、家族に代わる生活支援サービスと配食サービスを月額6万円ぐらいで提供する。そして、24時間対応の訪問介護看護のサービスを組み合わせる。介護保険の利用料は1割負担だから、30万円分の介護看護サービスを使っても月額3万円の負担である。月額6万円の生活支援・配食サービスとあわせても月額10万円程度で済む。いろいろ工夫して、都市型の新しいケア体制を組み立てていくしかないだろう。

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

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