こくほ随想

一体改革は緒に就いたばかり

今年の国政のいちばんの成果は社会保障・税一体改革関連法案の成立であろう。大局的な見地に立って、民・自・公の三党が修正協議において合意し、関連法案を成立させた。

とは言え、社会保障の充実と財政健全化の同時達成という目標に対しては、道半ばにも達していないのではないか。

可決されたのは、税制改正法案、子ども・子育て支援関連法案、年金関連法案。医療・介護については法案提出に至らず、最大の争点であった公的年金制度と高齢者医療制度の改革は、今後の国民会議での検討や三党の協議に委ねられた。

財政健全化の目標は、2010年6月に策定された「財政運営戦略」に掲げられた。そこでは、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、遅くとも、2015年度までに赤字対GDP比を2010年度から半減させ、2020年度までに黒字化することとした。一体改革関連法案は、このうち2015年度までの目標達成を目指したものだから、当初から道半ばまでの目標に止まっていた。

しかし、現状は道半ばにも達していない。税制改革では、三党合意の修正により、消費税の逆進性を緩和するために、引上げの際には低所得者に配慮した給付付き税額控除等及び複数税率を検討するとともに、暫定的及び臨時的な措置として簡素な給付措置を実施することとしている。消費税の逆進性を緩和するためではあるが、歳出増・歳出減になるわけだから、予定していた収支バランスが相当に崩れることになる。

また、大きな財政効果が期待されていた短時間労働者への社会保険の適用拡大がごく限定されたものになり、高所得者の年金給付の見直し、マクロ経済スライドの検討、標準報酬の引上げの検討、支給開始年齢引上げの検討など、給付の重点化・効率化における課題とされていた事項が軒並み先送りされた。

こうしてみると、「増税先行・社会保障先送り」という批判も、あながち的外れではないように思われる。実際に、5%の消費税引上げのうち、社会保障の充実に向けられるのは1%にすぎず、その1%についても一部先送りされた。残る4%は、社会保障水準の維持に充て、財政健全化に資するものとされているからである。

しかし、過去を振り返れば、バブルの崩壊以降の約20年にわたって、歳出と歳入の乖離が拡大し、それを埋めるために公債を発行してきた。その累積により、今では国・地方を合わせて対GDP比で約200%という国際的にも突出した長期債務残高になった。この間に増えた歳出は主に社会保障予算であったから、公債の発行によってその財源を賄ってきたことになる。

つまり、過去20年は「社会保障先行・増税先送り」であって、その先送りされた増税に向けてやっと決断したという評価の方がより適切ではないか。なお、この間に、1989年に消費税3%が導入され、さらに1997年に5%へと引上げられたが、同時に所得税・法人税が引下げられたから、税収が増えたわけではない。

いずれにしても、将来世代への社会保障負担の付け回しをやめ、当該年度の税収で公費財源を賄うことは社会保障の安定した発展に不可欠な条件である。

本稿が掲載される頃は、総選挙後の新たな政権がスタートしていよう。が、どのような政権の枠組みであろうとも、社会保障・税一体改革の流れを止めてはならない。

幸い、今回の総選挙では社会保障が争点にはならなかった。近年、社会保障改革がしばしば政局になってきたことからすると画期的なことである。これを機に、わが国の政治がいっそうの成熟を遂げ、対立から対話と協調へ、決められる政治へと向かうことを期待したい。

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

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