給付と負担の選択肢

社会保障の給付と負担といえば、「高福祉・高負担」「中福祉・中負担」「低福祉・低負担」の選択肢で語られることが多い。

わが国の現状はどうか。北欧のような「高福祉・高負担」ではないし、アメリカのような「低福祉・低負担」でもない。3つの選択肢から選ぶとすれば、「中福祉・中負担」だというのが大方の見方だ。ただし、負担に関しては、税収を上回る多額の国債発行に見られるように、将来世代に負担を大きく先送りしている現状は、「中福祉・低負担」だというのがより正しい理解であろう。

しかし、わが国の将来にあっては、「中福祉・低負担」が成り立たないのはいうまでもない。欧米諸国をはるかに超えて高齢化が進展することからして、現在の「中福祉」の水準を維持するだけでも、相当な「高負担」にならざるを得ない。

ちなみに、社会保障・税一体改革において、消費税率5%の引き上げのうち、社会保障の充実に向けられるのは1%にすぎない。残る4%は社会保障水準の維持に充てられる。国債に依存し、先送りされている負担が消費税に置き換えられるということなのだが、それでもなお基礎的財政収支を黒字化するという目標に対しては、その2分の1が達成されるにとどまる。水準維持に要する負担増の大きさを物語るものである。

厚生労働省が今年2月に実施した「少子高齢化社会等アンケート調査」は、このような厳しい現実を踏まえた設問になっている。同調査の選択肢と回答は別表のとおりである。

全体では、「給付水準を保つために、ある程度の負担の増加はやむを得ない」とするものの割合が最も多く46.5%である。「給付水準を引き上げるために、大幅な負担の増加もやむを得ない」とするものは、わずか3.2%にすぎない。給付水準に関しては、すでにわが国がある程度の水準に達していると見ているか、あるいは負担との関係において水準の引き上げが難しいと考えているのだろう。

一方、「給付水準を大幅に引き下げて、負担を減らすことを優先する」あるいは「給付水準をある程度下げても、従来どおりの負担とする」という回答が、合わせて36.2%もあり、決して少なくはない。しかも、年齢別には、高年齢になるほど「水準維持・負担増容認」が増えるが、20〜34歳の若年層では「負担増反対・水準引き下げ」の方が多くなっていることにも注目したい。

いずれにしても、今後のわが国においては、給付よりも負担のあり方の方に政策の軸足が移行せざるを得ない。そのことを多くの人が冷静に受け止めていることが、この調査においても確認できる。

 現実的な選択肢は、セーフティネットとしての社会保障の機能を強化した上で、低所得者に十分に配慮しつつ、給付の重点化・効率化を図り、大幅な負担増を回避することではないだろうか。また、負担については、保険料と公費の配分、医療や介護等の利用者負担のあり方についても見直しが必要であろう。税負担にしても、消費税を社会保障目的税化すれば、抵抗なく負担増が許容されるというものでもないように思われる。



グラフ

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

←前のページへ戻る Page Top▲