ケアの地域連携

最近、ケアの地域連携あるいは多職種連携ということが盛んに言われるようになってきた。地域、特に在宅ケアにおいては、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、ケアマネジャー、介護福祉士などの多職種が連携して、トータルなケアを提供しないと在宅での生活の継続は難しい。また、退院直後においても、多職種連携によるケアがなければ、自宅に戻ってくることは難しくなる。

この点、在宅ケアの先進国のデンマークでは、ケアの提供が一元化されており、地域連携という域を超えている。つまり、@家庭医が地区ごとに決まっており、在宅医療にも対応していること、A地区ごとに、地区全体について責任を持ってカバーする1か所の公的な総合訪問ステーションがあること、Bこの訪問ステーションには、看護師、リハ職、介護職など多職種が一緒に勤務していること(連携ではなく同一組織に属している。)、Cデンマークでは、施設廃止の方向であり、総合訪問ステーションから高齢者の住宅にケアが一元的に提供される体制に切り替えられつつあること、といった日本とはまったく異なる体制となっている。

これに対して、日本では、自由開業医制、老人病院の存在、福祉における措置制度などの過去の歴史がある一方、介護保険導入時には、在宅ケアに株式会社等の参入を容認した。また、老人病院、老健施設、特養ホームは一元化できないか、医療と福祉の法人の一元化はできないかなど様々な議論があった。しかし、沿革上のハードルは高く、現状はいわば、民間多主体とでもいうべき体制になっている。

この民間多主体の体制は、急速な高齢化のスピードに対しては、民間活力で対応できるというメリットがある。しかし、一人の利用者からみて、様々な提供者からのケアが自分にとってトータルなものになっているか、また、日常生活圏域の地域ケアという視点と民間主体の自由なケア提供にどう折り合いをつけるか、などの課題を抱えている。日本の地域包括ケアにおいて、地域連携が盛んに語られる所以である。

さて、地域連携の系列は、大きく2つに分かれる。一つは、病院での入院治療・リハビリから施設あるいは地域ケアといういわば縦の連携である。もう一つは、保健予防、介護・リハビリテーション、医療・看護、生活支援・福祉、住まいといった地域での横の連携である。そして、それぞれサービス提供事業者間、多職種間での連携上の課題がある。

現在、各都道府県で地域医療構想の策定が進められており、構想区域ごとに、病床再編の協議が始まる。その協議は、構想区域ごとに2025年(平成37年)の医療需要に照らして、高度急性期、急性期、回復期、慢性期ごとの医療機能をどのように再編成していくかが中心課題である。しかし、そのためには、病院で治療が終了した高齢者を地域でどのように受け入れるかという課題を解決しなければならない。高齢者が退院できなければ、社会的入院となり、結局、病床機能の分化・再編成は進まなくなってしまう。

特別養護老人ホームや老健施設に空きがある地域であれば、これを退院後のケアの受け皿として使うことができる。しかし、これらの施設は満床であることが多い。結局、在宅ケア体制を整えなければ、円滑な退院ができないことになる。また、在宅ケア体制がなければ、病状が急変するごとに、救急車を呼んで、入院するという悪循環になってしまう。

現在、第6期の介護保険事業計画が進められている。介護予防、生活支援、認知症初期集中支援など盛りだくさんだが、地域医療構想との絡みでいえば、在宅医療・介護連携事業が重要である。地域医療構想が具体化してくる平成30年度までに、各市町村でどこまで医療と介護の地域連携体制を整備できるか、残された時間はあまりない。

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

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