新人口推計をめぐって

去る4月、国立社会保障・人口問題研究所から「日本の将来推計人口」が公表された。国勢調査を踏まえ、出生、死亡、国際人口移動について、これまでの傾向を将来に投影し、50年後の2065年までの人口規模や人口構造の推移について推計を行った。将来の出生、死亡の推移は不確実であるため、それぞれ中位、高位、低位の仮定を設け、全部で九通りの推計が行われているが、一般的には中位推計により将来人口が語られている。

移民がごく少ないわが国の将来推計では、出生と死亡が決定的要因になる。

出生の傾向は以下のとおり。①初婚年齢の上昇(晩婚化)により構造的な50歳時未婚者割合が上昇し、選択的な未婚による50歳時未婚者割合の増加も緩やかに進む。②初婚年齢の上昇により夫婦完結出生児数は以前より速いペースで減少するが、1970年代以降生まれの世代では30歳代以降での出生により夫婦出生力の引き下げが緩やかになる。③離婚率は横ばいに推移しており、高年齢層の子ども数の低下はより緩やかになる。

死亡の全体水準および高年齢の死亡率については、速度は緩やかになりつつも改善傾向が続く。その結果、平均寿命は、2065年に男性84・95年、女性91・35年に伸長する。

総括すれば、近年の30〜40歳代の出生動向の改善等を反映し、出生率の仮定が前回推計よりも上方に設定されたこと等により、人口減少の速度や高齢化の進行度合いは緩和されているが、少子高齢化の趨勢は前回推計と大きくは変わらない。

総人口は、2065年には8,808万人へと減少する。50年間に3,901万人、一年間に平均78万人の減少である。また、老年人口割合(高齢化率)は2065年には38・4%へと上昇する。しかも、高齢者の年齢構造がより高年齢層にシフトし、65歳以上の高齢者に占める後期高齢者の割合が約3分の2、80歳以上が約2分の1になる。

どう転んでも、超高齢社会への趨勢は避けられない。この現実にどう向き合うか。子ども・子育て環境の整備、両立支援による女性の就労促進のほか、引退年齢の伸長に向けた本格的な政策努力が必要だ。

今春早々、日本老年学会・日本老年医学会から高齢者の定義を75歳以上とする提言があったところである。提言のとおり、65歳以降も、働ける人は就労を継続し、第一線を退いても地域社会での活動に力を割いていただけないか。そして、将来に向けて75歳を標準的な引退年齢とする方向に向けて政策の舵を切るべきだろう。

介護保険では、新しい総合事業での住民主体の取組みの担い手として高齢者が期待されている。年金では、給付水準の抑制が進むなかで、65歳までの基礎年金拠出期間の延長、65歳以降での雇用延長や繰下げ受給による年金水準の維持・改善などが提案されている。支給開始年齢65歳への引上げが完了する平成37年以降に向けての課題として、準備を進めるべきであろう。

差別的と批判された「後期」が消えて、高齢者といえば75歳以上という理解が実感できる社会の構築を目指したい。


記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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