こくほ随想
第12回
令和6年度を振り返る
令和6年4月にスタートした私の「こくほ随想」は、今回が最後になる。反省はいろいろあるけれども、お付き合いいただいたことに感謝申し上げたい。
今後を展望するためにも、この一年を振り返ることは大事である。令和6年度はどんな年だったのだろうか。
前年度にはなるが、令和6年1月1日の能登半島地震は衝撃であった。地理・地形上の厳しい条件の中で復旧・復興への努力は重ねられているが、9月には豪雨・大洪水に見舞われ、誠に気の毒でならない。日本中の善意が集まって、早く復興してもらいたいと心から願っている。日本各地を見ると、8月の宮崎県の日向灘地震、各地での豪雨災害や台風の襲来、大雪被害、山火事など、大きな災害が続いている。地球温暖化の影響だけでなく、少子化の進行(人口減少)や人口の高齢化が日本社会の耐久力・復元力を弱くしているような気がする。日本社会の構造的な対応が必要になっているのではないかと思う。
政治のリーダーの交代も世界で起こっている。民意で選ばれているのであるから時代の要請なのかもしれないが、世界が不安定化の方向に向かっているような気がしてならない。ウクライナへのロシアの侵攻、中近東の戦争、その他世界各地で緊張関係が生じている中で、アメリカのトランプ大統領やその政権を担う人たち、ヨーロッパでの超保守系の政党の躍進、中国の動向など、不安定要素が拡大しているような気がしてならない。そういう中で日本はどうすべきか。難しい課題だけれども、我々も当事者として心構えを持たなければいけないと思う。
闇バイトによる詐欺や強盗事件が、東南アジアを拠点とする国際的なネットワークを使って行われていることも驚きである。情報化が年々進化していることは、人々に大きなプラスをもたらしているけれども、悪用も常識を越えたものになっている。最後は、一人一人の心の持ち方に係わることなので、倫理観・人間性という観点からの教育も深めていく必要があると思う。
昨年の明るいニュースは、ドジャースの大谷選手の活躍、オリンピックでの日本選手の活躍であろう。これは言うまでもない。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞したのも嬉しいことである。誰もが(多くの人がかもしれないが)原水爆禁止を願っているが、なかなかその方向に動かない。その現実と向き合いながら、一途に運動を続けていく姿勢に頭が下がる。この受賞が世界に警鐘として受け止められ、原水爆禁止に向かって局面が打開されていくことを願わずにはいられない。
わが国では、少数与党の石破内閣の下で、来年度予算案の国会審議が行われている。与野党が議論を尽くし、協議を重ね、よりよい政策をつくり上げてもらいたいと思う。予算の一部修正について与野党協議が続いているが、深く日本の将来を考えて建設的な意見交換・政策立案ができるのであれば、この流れは前進といえるのではないかと思う。夏の参議院議員選挙に向けて、国民の歓心を買うような主張は願い下げである。国会は国権の最高機関としての矜持を持って、ふさわしい役割を果たしていただきたいと思う。
私にとっても、この一年は節目の年であった。5月に常勤職を辞して自由時間が増えたが、時間の有効活用は難しく、反省することは多い。ただ、夏に前立腺ガンが見つかり、現在治療中であるが、職を辞していてよかったと思う。今年2月に母が亡くなり、長男である自分が一定の役割を果たすことになるので、これも職を辞していてよかったと思う。新年度からは、この一年の反省も踏まえて、生活の充実を心掛けたいと思っている。
お読みいただいた皆さんにとって、充実した令和7年度になることを心から願っています。
記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉