こくほ随想

第10回 
2025年を迎えて

明けましておめでとうございます。本年が皆様にとりまして良い年でありますよう、心からお祈りいたします。

今年は、昨年の能登半島の大震災や羽田空港での事故のような大惨事は起こらず、比較的平穏な年開けになりました。ありがたいことだと思います。ただ、大雪に見舞われた地域も多く、心からお見舞い申し上げます。

今年を見通すと、楽観的な展望は持てません。少数与党による政治運営がどうなるのか、わが国が抱える様々な課題は解決の方向に進むのか、わが国の経済あるいは世界経済はどうなるのか、各地の戦争が終結に向かうのか。トランプ大統領、先進諸国の右傾化や中国・ロシア・グローバルサウスの動向も気になるところです。また、人工知能(AI)の進歩、SNSの急速な普及も、プラスの面だけでなく、その活用に振り回されている現実もあり、そのことへの対応も考えなければなりません。かねてからの課題である地球温暖化や食糧問題、さらには大震災への備えなどについても解決の道筋は見えていません。政府や有識者の方々に対応の青写真を積極的に示していただきたいところです。

一方、私たち一人一人は、基本的には、自分の持ち場において可能な努力をしていくしかありません。上に立つ人は、そのような努力が成果に結びつくように指揮を執っていただきたいと思います。

個人的な話になりますが、子供の頃、「一年の計は元旦にあり」と言われて、元日に「今年の目標」を書いたものです。三日坊主だったり、長くても一ヶ月くらいしか続かなかったりして、父から「毅君は有言不実行だな」と言われたりしました。その癖は社会人になっても続き、毎年、「今年の目標」を定めていました。その目標には仕事に係わることも書いたので、子供の頃より長く続きましたが、貫徹したことはありません。昨年5月に常勤職を辞しましたので、目標が定まらず、今年は何をすべきか、なかなか考えがまとまらずにいます。

私が就任している非常勤職の一つに社会福祉法人浴風会の会長があります。浴風会は関東大震災の被災者であって身寄りのない高齢者・障害者等の救済を目的に、御下賜金と一般義援金を資金として設立されました。浴風会会長は、昭和27年に社会福祉法人に切り替わるまで、歴代内務大臣または厚生大臣が就任されていました。現在は、老人福祉・医療・認知症など老人のための総合施設として運営されています。その浴風会は本年創立100周年を迎えます。記念式典、記念事業をしっかりと行うことが、私の任務です。なお、浴風会の名は、論語からいただいています(先進第十一)。孔子が4人の弟子に「君たちが世間から認められたとしたら何をしたいか」と質問したところ、3人は統治する側から国を治めることについて述べました。曽晳は「沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん」(川で水浴びをし、土手を散歩して、詠いながら帰る)と、平穏な生活こそ望ましいと答えました。孔子は曽晳の意見に賛成されました。この一節から、平穏な生活の象徴として、「浴」「風」をいただいたのです。

私は昭和22年生まれの「団塊の世代」で、今年(2025年)は「団塊の世代」全員が後期高齢者になります。「2025年問題」とも呼ばれ(問題と言われるのは個人的には不本意です)、国・地方が協力して、医療、介護、福祉の体制の充実が進められてきました。高齢化のスピードは緩くなりますが、高齢化はさらに進み、引き続き対応の充実が必要です。私自身は、現在、一病息災状態にありますが、自力で(夫婦して)生活できる期間をできるだけ長く維持し、そのために心身の健康に留意していきたいと思っています。

読者の皆様も是非、自分の目標を持って、充実した一年を過ごしていただきたいと思います。

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

インデックスページへ