こくほ随想
第6回
人生と仕事には目標が必要だ
大谷翔平選手が高校1年生の時に目標達成シートを作成したことは有名です。大谷選手のようにはなれないかもしれませんが、人生には目標とそれを達成するための努力が必要です。そして、仕事もそうです。
今年度は、データヘルス計画や特定健康診査等実施計画の新しい計画を策定する年です。その中で頭を悩ませるのが評価指標やその数値目標の設定です。
さて、目標を設定する意味は何なのでしょうか。目標を設定することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
一般的には、目標があることで、(1)モチベーションを維持できる、(2)達成感を感じることができる、(3)やるべきことが明確になる、(4)思考が前向きになるといわれています。逆に言うと、目標がない場合、モチベーションが維持できず、達成感を感じることができず、やるべきことが明確ではなく、思考が後ろ向きになることになります。
目標(値)があることで、良くも悪くも評価されます。今はどんな組織でも人事評価が導入され、期初に目標(値)を設定して、期末にそれをもとに評価されるのが一般的です。目標(値)を達成すれば、高い評価(褒められ)、達成できていなければ、低い評価となります。それが仕事のやる気につながったり、時に報酬にも関係したりします。
特定健診・特定保健指導では、国が指標とその目標値(保険種別)を示しています。特定健診実施率(受診率)と特定保健指導実施率は全保険者で用いられています。国はこれらの目標値を示していますが(国保では、特定健診60%、特定保健指導60%)、多くの保険者で高すぎる目標値になっています。高い目標値を掲げて、それに向かって努力することは悪いことではありません。しかし、達成が不可能な目標値では、達成感を感じることができず、モチベーションも維持できず、達成しようと工夫することもないでしょう。いくら努力や改善をしても達成できないような目標であれば、意欲も高まりません。
つまり、達成困難な目標値を設定していては、評価する(される)こともできず、次への改善にもつながらないのです。したがって、たとえ高い目標(国保の特定健診・特定保健指導での60%)を設定した場合でも、1年あるいは数年で達成できそうな現実的な目標(値)も同時に設定することが必要です。そうすることで、うまくいけば、さらにより高い目標に向けて、うまくいかなければ、実施内容を見直しすることにつながります。その結果、将来的には高い目標値を達成することもできるかもしれません。
例えば、大谷選手の場合、「ドラフト1位8球団」が最終的な目標ですが、それを達成するための一段階下の目標、さらに、二段階下の目標を設定しています。下位の目標をコツコツと達成する努力を積み重ねることで、最終的な目標が達成できるのです(実際にした)。
目標値の設定については、SMARTという言葉がよく使用されます。一般的に、Specific=具体的、Measurable=測定可能、Achievable=達成可能、Result-oriented=結果重視、Time-bound=期限設定の意味です。目標とはこれらの条件を満たすのが、スマート(=賢い)とされています。このすべてを満たす目標値を設定することは簡単ではありませんが、できるだけこれらの条件を満たす目標値を設定しましょう。
なお、大谷選手が使用していたのはマンダラチャートと呼ばれるものです。これは、真ん中に最終的な目標を記入し、それを達成するためのより具体的な目標をチャートに沿って書き込んでいくものです。マンダラチャートの他に、マインドマップ、7月に紹介したロジックツリーなど、目標設定のツールはいくつかあります。是非、調べてみて、仕事や人生の目標設定に活用してください。
記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉