こくほ随想
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一般衛生と切れ目のない保健事業高齢者の医療確保に関する法律により保健事業が保険者に義務付けられた結果、医療保険に加入するすべての人が保健事業の対象となった。市区町村の一般衛生が想定する若年の住民は皆、国保か被用者保険による保健事業の対象となり、一般衛生における成人保健の事業はいわば対象を失った。若い年齢層を対象とした事業を実施しても募集がますます困難となった。一般衛生における今後の健康づくりは、どこに視点を置くべきだろうか。ここでは年齢や退職に伴う医療保険制度の切れ目に着目して、一般衛生の果たすべき役割と可能性について述べたい。 医療保険者の保健事業では、退職などに伴う制度の切れ目が大きな課題となっている。まず定年後の住民は、国保に加入する時点ですでに疾病を持っていることが多く、若い頃からの健康づくりが重要であることが強調されている。また制度の切れ目は、国保と後期高齢者医療制度の間にも見られる。74歳までは国保の対象だが、75歳になると後期高齢者医療制度に移行する。しかし、後期高齢者医療広域連合には保健事業の人的資源が十分にないのが実情である。一般衛生の重要な視点の一つが、国保と後期高齢者の切れ目のない保健事業であることを確認したい。 下図は、住民を年齢層ごとに区分して、国保・被用者保険・後期高齢者医療制度に分けてまとめたものである。60歳未満における国保加入者は住民の4分の1に過ぎないが、60歳を超えると急激に国保の割合が高くなり、7割程度を占める。75歳以上は皆、後期高齢者医療制度に加入している。 また、50歳代までは比較的に生活習慣病のリスクは低いが、年齢とともに生活習慣病による高額医療の可能性が急激に高まる。さらに75歳以上になると、脳卒中や心筋梗塞などの合併症が増えることにも着目したい。 従来の保健事業は、健康な人をいつまでも健康に保つという考え方で行われてきたが、実際には高齢になるとともに、生活習慣病で医療機関を定期受診する人が増えている。保健事業の効果を医療費で見ると、現在支払っている医療費が高いほど適正化の余地は大きい。医療機関受診中の人は様々な疾病リスクを持つので、高額医療の可能性も高い。そのため重症化予防などの事業の対象者は必然的に高齢者の割合が高く、効果は後期高齢者に移行してから現れる可能性がある。 国保保険者としては、74歳までは事業の対象であっても75歳以上は医療保険者が変わるため、制度の切れ目により保健事業の継続が難しくなってしまう。しかし後期高齢者の医療費のうち約半分は税金なので、後期高齢者の医療費を適正化することは行政にとって極めて重要である。 一般衛生は、制度の壁を意識することなく継続的に保健事業を実施できる唯一の存在である。保険者の保健事業では、庁内委託などの手法により必要な事業費を一般衛生以外から受け入れることが可能である。せっかく取り組んだ事業を、国保と後期高齢者医療制度の切れ目なく支援することができれば、住民にとっても行政全体にとっても望ましいことは言うまでもない。一般衛生にとって、国保と後期高齢者医療制度の両方にわたる事業の推進を図ることは、住民の健康を守るために重要であることを確認したい。 記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉
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