こくほ随想
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保健指導の面接技術 ―特定保健指導制度を支えるキーワード―保健指導の実施率向上の課題は重要であるが、一方で質の担保も重要である。保健指導は、効果がなければ実施する意義は小さい。対象者にとっては時間の無駄となり、保険者にとっては、量的な目標を達成しても被保険者の循環器疾患リスクの低下がなければ、事業の意味がなくなってしまう。保健指導は、常に効果(指導の質)を意識して展開すべきである。 以前より、学会や保険者協議会などで行っている保健指導の研修会では、下表に示したように「保健指導の効果を高める技術要因」が6つあることを強調してきた。これらの技術を習得することが、効果的な保健指導につながるということである。近年の循環器疾患予防の疫学研究は急速に進歩しており、様々な知識や技術が使用できる時代になっているため、このような情報はコンパクトに伝えるようにしてきた。知識やその効果的な提供法は、保健指導の教材を整備することで習得することができる。アセスメントや効果評価も同様である。 しかし、保健指導における動機付け・支援技術についてはほとんどトレーニングされておらず、残念ながら簡単な研修では効果が上がったとは言えなかった。研修後も多くの受講者は、「一方的な説明や押しつけ」といった基本的な指導技術の課題を修正できなかった。 その反省から、最近の研修では動機付けを中心とした面接技術に重点を置くようにしている。保健指導における動機付けとは、対象者の弱みや困っていることを短時間で引き出し、最も負担が少なく効果の上がる方法を提供することにより、意欲を高めて実施を促すものである。 面接技術に共通する課題は、「押し過ぎ」である。自覚的に押しが弱く効果が出ないことに悩む支援者も、実は「押し過ぎ」であることが多い。面接の初めから対象者にプレッシャーをかけ続け、対象者が逃げ腰になってもさらに「正しいこと」を押し付けようとする。これでは効果的な指導は難しい。どんなに正しいことであっても、相手に受容する気持ちがなければ、ただのおせっかいとなってしまう。 こうした単調な押し付けの指導から、レベルアップする方法として強調したいことは、対象者との距離の取り方である。サッカーのドリブルを例にあげると、緩急を付けることでうまくゴールに近づくことができるが、どんなに速くても単調なドリブルでは、ゴールに近づくことは難しい。面接でも強弱を意識した組み立てを考えるべきである。 まず、面接の初めに支援者は、意図的に椅子に背中をつけて対象者との距離を保つことを提唱している。こうすることで、対象者が身を乗り出す余地を作る。もちろん対象者の興味を高めるための情報提供も重要である。 対象者の受容度が、提案したい行動目標を受け入れられる状態になったと評価したら、思い切って身を乗り出すのである。この時、距離を保っておいた効果により、対象者に強いインパクトを与えることができる。「押しが弱い」と思っている支援者は、「引く技術」が充分ではない場合があることを理解するとよい。 「引く技術」などの具体的な課題について、支援者同士のロールプレイングなどで繰り返しトレーニングするとともに、課題を意識しながら普段の指導に臨むことで、保健指導の技術が高まり指導効果が上がることが期待できる。 記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉
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