こくほ随想

特定保健指導の効果を上げる ―実施率をどう高めるか―

特定保健指導制度が施行されて10年が経過した。今年度からの第3期ではいよいよ、特定保健指導をどのように行うか、どう成果を得るかが最重要な課題となってきている。

特定保健指導が特定健診と異なる点を述べると、健康診断は長年社会制度として実践され、健診機関側で質をどのように保つかなどの仕組みが整備されているので、保険者は受診率のみを考えておけばよい。対して、特定保健指導は制度が始まって10年しかたっておらず、特定保健指導の質を担保する仕組みがほとんど整備されていない。したがって、特定保健指導を実施しようとする保険者にとっては、常に特定保健指導の量を増やすことと同時に、質をどう担保するかも大きな課題である。

ここでは特定保健指導の量の視点から、これからの課題について述べたい。特定保健指導の量とは特定保健指導の利用率、終了率を指す。特定保健指導制度は、対象者にとってなじみの薄い保健事業のため、周知の仕方が最も重要である。下図は、私ども厚生労働科学研究班が分析した特定保健指導の利用率と関連する保険者要因を分析したものである。特定保健指導の利用率に強く影響を与える因子は保険者規模(大きいほど低い)、委託の有無(委託したほうが低い)、特定健診の結果説明会(実施していると高い)の3つであった。結果説明会を実施している市町村では、未実施の市町村と比較し2倍以上も利用率が高くなっていた。結果説明会は利用率が低迷している保険者にとって最も効果が期待できる事業である。

結果説明会の開催方法はさまざまである。特定健診の結果をすべて説明会で本人に手渡しで行う市町村もあるが、階層化結果が積極的支援や動機づけ支援の人のみを対象としている市町村もみられる。保険者が特定健診の結果説明を含めて医療機関に委託しており、結果説明会という名称を使わず「特定健診の見方説明会」として実施している場合もある。

結果説明会が利用率向上に寄与する要因は、対象者にとって最もわかりやすい「健康診断」という制度のなかで、利用勧奨を行っている点である。「特定保健指導をします」より特定健診の見方を説明し、現状を理解してもらったうえで特定保健指導によって改善できる可能性があることを伝えれば、対象者もやってみようということになる。

こうした結果説明会を対象者の身近な場所で実施できれば、広域合併した市町村にとって保健事業の足場を整備したことになる。結果説明会による特定保健指導の実施率向上がうまくいったら、この仕組みを未治療者の治療勧奨や、糖尿病などの重症化予防事業の対象者の募集にも活用していただきたい。

また、一部の市町村で特定保健指導担当者と特定健診担当者が異なり、十分な打ち合わせが行われないまま事業が実施されている場合がある。特定健診の目的は、対象者の循環器疾患リスクの評価だけでなく適切な支援を提供することなので、特定保健指導に結びつけることは特定健診の効果を高める重要な要素であることを、特定健診担当者が十分理解しておく必要がある。

市町村保険者の要因別特定保健指導利用率

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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