こくほ随想
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動き出した「一体改革」のっけから私事で恐縮であるが、菅内閣、野田内閣、第2次安倍内閣と政権交代を挟み3内閣で、足掛け4年にわたり社会保障と税の一体改革の事務局を務めてきた。2月28日付けをもってそのポストである内閣官房社会保障改革担当室長の任から離れた。 1973年に旧厚生省に入省から始まり、厚生労働省退官後の2年間の社会保険診療報酬支払基金理事長職と今回の内閣官房の勤務とあわせて40年にわたり、公務関連の仕事をしてきた。そこから解放されて、正直なところほっとしている。2月に1度、病院でメディカルチェックを受けているが、3月の血圧が従来から10ほど下がったのには驚いた。体は正直に反応するものだ。 さて、社会保障と税の一体改革であるが、民主党政権下で2010年10月から検討が始まった。民主党内では、マニュフェストにない消費税の増税を行うことの是非が終始問題となり、深刻な亀裂が生じた。野田内閣は、厳しい党内の反対論を抑え込む形で12年3月に一体改革関連7法案の国会提出に漕ぎ着けた。国会での法案審議が進む中、当時野党であった自公との合意が6月に成り、14年4月に消費税率が8%に、15年10月から10%とする消費税増税法案と子ども・子育て支援や年金制度改革などの法案が成立した。 「一体改革」とは、様々な課題を抱える社会保障について改革を行い、その所要財源を確保するための税制改革を同時に行うものである。「一体改革」によって、消費税財源は現行の地方消費税1%を除いて、すべて社会保障の財源とされる(消費税の社会保障財源化)。 引き上げられる5%の消費税の使い道であるが、1%分は「社会保障の充実」(いわば上積み)に充て、4%分は財源がなかった基礎年金の国庫負担2分の1の財源に用いることや、現世代が社会保障の給付を受けながら費用の負担はせず、後世代につけ回ししていた部分を減らすという「社会保障の安定化」に充てられる。 政府提出の7法案に加えて議員立法である社会保障制度改革推進法が制定され、社会保障制度改革国民会議が設置され、社会保障制度改革についてはさらに1年間検討することになった。政府は、必要な「立法上の措置」を講じることが義務付けられた。 法案成立後は、いつ衆議院を解散するかが、焦点となった。このため、国民会議の開催は、解散が決まった12年11月末までずれ込んだ。このため、国民会議は、実質9か月間の審議で結論を得なければならず、この短期間に20回の審議を行い、昨年8月6日に清家会長から安倍総理に報告書を手渡すことができた。これを受けて、政府は臨時国会に「講ずべき社会保障改革の措置」を規定し、そのために必要な個別法案の提出時期も明記した「プログラム法案」を提出し、同法案は12月に成立した。 4月1日から実施された消費税率の引き上げは、このような経緯から誕生したものであり、まさに社会保障と税の一体改革の始動である。消費税増税により今年度は5兆円の増収が見込まれているが、基礎年金国庫負担2分の1に必要な財源として2.9兆円が使われる。そして「社会保障の充実」のために5,000億円が使われる。 医療関係者にとって周知のように、4月1日から診療報酬の新点数表が施行されるが、その財源として必要な350億円は上記の5,000億円の内数である。国民会議は医療・介護提供体制の改革のために、診療報酬改定以外の「別途の財政支援の手法」として基金を提案していたが、14年度予算で900億円の基金造成費が計上されている。 現国会には、医療介護総合確保推進法案、難病対策関係法案、次世代育成支援対策推進法改正法案などが提出されているが、これもプログラム法の工程表に沿ったものだ。 一体改革のゴールは、2025年までにあるべき医療・介護提供体制の実現である。これから私たちが歩まなければならない道のりは長い。 記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉
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