友人や同僚から悩みを打ち明けられたり、愚痴をこぼされたりすることがあります。
そういう話をしてくれるのは、自分を信頼してくれている証拠。
それ自体はうれしいことなのですが、
ついついアドバイスしたり解決を図ろうとしたりしてしまうと、実は相手の期待は
そこにあったわけじゃないという場合もあるので要注意です。
ある50代の男性が同僚女性に「うちの娘の部屋が汚くて困る」という話をしました。女性は、「掃除術の本を買って渡したら」などとアドバイスをせず、「そうなんですか」「注意しても全然聞かないんですね」などと話に寄り添い、応じていました。すると、男性がこうこぼしたのです。
「あなたに話を聞いてもらっているうちに自分の気持ちがよく分かりました。ボクは、ただ単純に娘がボクの言うことをちゃんと聞いてくれないことが寂しかったんだと…」
人の悩みや愚痴は、「とにかく聞いてほしい」という場合が多く、アドバイスなど求めていないこともあります。話を徹底的に聞くというのはことのほか難しく、つい自分の考えを述べたくなるのが常です。ですが、アドバイスしたくなっても、「まだ早い」と自分にブレーキを掛けることも時には必要ではないでしょうか。聞き手がじっくりと耳を傾けていくだけで、話し手は自分の内面を見つめ直すことができ、本当の気持ちに自ら気づくことができるのです。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『はじめての後輩指導』(経団連出版)、『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)など。