「持ちつ持たれつ」「情けは人の為ならず」とか「Give and Take」という言葉があります。
これらの言葉は、「誰かのために何かをすること」と「誰かに何かをしてもらうこと」は
バランスを取るものだよ、といったことを教えてくれているような気がします。
これはまさに、心理学の「ソーシャル・サポート」という考え方。
自分を助けてくれる周囲の誰かや支援のことを指すのですが、4種類に分類できるとされています。
自分を取り巻く人間関係を思い出し、誰がどのサポートに当たるのかを考えてみるのは面白いものです。「Aさんは、道具的サポートを提供してくれるけれど、愚痴は聞いてくれないから情緒的サポートはないな」とか、「Bさんは情報的サポートでもあり、評価的サポートでもある」と考えてみます。すると、思っていた以上に自分が他者に助けられて暮らしていることが分かります。
では、自分が誰にどのサポートをしているかという視点で考えてみるとどうでしょう?「私は誰にどういう道具的サポートをしているだろう」「あの人は私から情緒的サポートを受けていると思っているだろうか」…こう考えていくと急に不安になってきます。「私はCさんに情報提供もしているし、褒めてもいるから、情報的・評価的サポートの両方を担っていると思うけど、Cさんはそう思ってくれているのだろうか?」と自信がなくなるのです。
私たちは、自分が他者に対してどんなことをしているかという点になると、分からなくなりがちです。どう思うかは相手次第というのが理由のひとつですが、自分が人からしてもらうことは強く意識するものの、他者に何かをすることには無頓着になりやすいからです。
以前、私が受講した「心理学」講座で、教授が次のように述べていました。「ソーシャル・サポート・ネットワークを充実させるには、“Give and Take”を心掛けることです。誰かのサポートをすることが、誰かからサポートを得ることに繋がるので、“Give”から始めると良いですよ」
人は多くの人に支えられて生きていますが、多くの人に支えてもらうために、自分も誰かを支えていく必要があるのですね。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『はじめての後輩指導』(経団連出版)、『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)など。