現代人のアゴは、どんどん小さくなっているそうです。アゴが小さくて、面長の顔は確かに今風ではありますが、これを歯科医学の視点で見れば、アゴを使う機会が少なくなった結果だといわれています。 つまり、現代人は食物を噛まなくなって、アゴがきゃしゃになったということ。原因は、よく噛まなくてもすぐに咀嚼でき、飲み込めるやわらかい食べ物が多くなったことです。 しかし、噛む回数が減れば、分泌される唾液の量も減少します。唾液には、消化吸収を促進し、雑菌を殺し、口のなかやのどの粘膜を保護し、発がん物質の毒性をも消すという、さまざまな物質が含まれています。さらに、唾液腺からは粘膜や皮膚、神経細胞を若返らせるホルモンが分泌されます。 時間に追われて、あわただしく食事をしていませんか。その10分を惜しまずに、よく噛んで元気になるホルモンの分泌をお忘れなく!
唾液腺ホルモンの分泌が高まり、その作用で皮膚や粘膜、血管、神経などを若返らせます。
「噛む」行為は脳の中枢神経を刺激するので、噛めば噛むほど脳の働きが活性化していきます。それがほかの中枢神経にも影響を与え、脳の老化防止にも役立ちます。
唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素は、ガン細胞をつくる活性酸素の働きを抑えるといわれています。
奥歯でしっかり噛むと、その刺激によって歯を支えている歯根膜が強化されます。また、噛むことで分泌が促される唾液には殺菌作用があるので、よく噛むほど口のなかがきれいになり、歯周病を予防します。
一般的に食事を始めてから脳が満腹感を得るまでの時間は約20分。よく噛んでゆっくり食べれば消化吸収酵素の分泌が活発になり、少量でも満腹感が得られ、食べすぎにブレーキをかけることができます。
こんな症状があったら要注意、すぐに歯科医で診察を受けてください。
■ 歯を磨くときに歯ぐきから出血する。 ■ 口臭がある。口がくさいと他人に言われる。 ■ 歯のあいだに食べ物がよくはさまる。 ■ 朝起きたとき、口のなかがねばつく感じがして不快。 ■ 歯ぐきがむずがゆい、歯が浮いたような感じがする。 ■ 歯ぐきが赤く充血したり、痛みがある。 ■ 歯が長くなったように見える。
●毎食後、正しくブラッシングしよう ●歯ブラシはやや硬めで、小さめのものを選ぼう ●必要に応じて、デンタルフロスや歯間ブラシを併用しよう
ブラシの届く範囲は人によってまちまち。いくつかの磨き方を組み合わせ、歯をすみずみまで掃除しましょう。
ブラシの毛先を歯に直角に当て、小刻みに振動させて磨きます。基本的な磨き方です。
上の歯は上から下へ、下の歯は下から上へ、歯ぐきから歯に向かって回転させて磨きます。ただし、歯周病のある人にはすすめられません。
歯と歯ぐきのさかい目にブラシを45度にあて、小刻みに振動させて磨きます。歯と歯ぐきのあいだのみぞのなかも清潔にでき、歯周病の予防に好適です。
●1口30回を目標に、ゆっくりよく噛んで食べよう ●カルシウムをたっぷりとろう ●ながら食い、だらだら食いはやめよう
新聞を読みながら、テレビを見ながら食べるほうだ
仕事をしながら、打ち合わせをしながら食事をすることがある
週に数回は立ち食いスタンドを利用している
昼に丼物やラーメンを食べることが多い
食事はたいがい15分以内ですませている
チェックマークがひとつでもある人は、早食い、ながら食いの傾向があります。立ち食いや丼物、ラーメンは早食いになりがち。また、ながら食いはゆっくり噛まないで飲み込みがちなので気をつけましょう。
●カルシウムの利用を高めるために、適度に体を動かそう ●睡眠と休養を十分にとろう ●大いに笑おう。ストレスをためない工夫をしよう
神奈川歯科大学の斎藤滋教授が弥生時代から戦前までの6つの時代の料理を復元し現代の食事と噛む回数の比較を行ったところ、現代人の咀嚼回数は弥生人のなんと6分の1だったとか。
固い餌を与えたネズミと軟らかい餌を与えたネズミに、迷路を抜ける実験をしたところ、固い餌のネズミのほうが早く抜けられるようになり、よく噛むと学習能力が高まることがわかりました。
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