女性が閉経を迎える年齢の前後5年ずつ(一般的に45〜55歳頃)を「更年期」と呼びます。更年期には女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が急激に減少するため、ホットフラッシュ(ほてり、発汗)や動悸、頭痛、目まい、睡眠障害、肩凝り、不安など、心身にさまざまな不調が現れます。
更年期の女性の不調を調べると、別の病気が潜んでいる場合もあります。特に、血管や心臓を守る役割を担っているエストロゲンの減少が原因で、更年期以降の女性では心疾患が増える傾向があります。例えば、心臓の細い血管の血流が一時的に減少する「微小血管狭心症」があります。一般的な狭心症より症状が長く続き、安静時にも起こるのが特徴です。女性の狭心症は、胸以外にも、肩や顎、背中、腹部も痛むなどの性差がみられます。他にも、頻度は低いながら悪性腫瘍などの命に関わる疾患が見つかることもあります。
こうした病気があっても、更年期の症状と重なっていると診断が難しく、また、ご本人が「不調は更年期のせい」と思い込み受診が遅れがちな場合があります。「更年期症状」とは、更年期に起こる全症状を指すのではなく、「他の病気が原因でないもの」とされています。つらい場合は医療機関を受診し、他の病気がないかも確認しましょう。
自覚症状が多い場合、事前に紙に書き出してから受診すると、診断がスムーズに進むでしょう。更年期症状は多岐にわたりますが、伝え漏れを防ぎ、医師の理解を助けます。
症状ごとに「いつから」「どのように」「どこが」などを自分の言葉でまとめます。また、一番気になる症状や、症状の変化、月経周期(閉経)との関連なども分かるとよいでしょう。
検査結果、お薬手帳を医師に見せます。ない場合はメモでもOK。
回答者:片井みゆき 政策研究大学院大学 保健管理センター所長・教授
日本性差医学・医療学会 理事長