市販の風邪薬(特に「総合感冒薬」と呼ばれる物)は、風邪のさまざまな症状(発熱、頭痛、喉の痛み、咳、鼻水、鼻づまり、くしゃみなど)をひろく緩和させるために、複数の成分を組み合わせていることが多いです。そして、その一部の成分が「尿閉(尿が膀胱にたまっているのに排尿できない状態)」を引き起こしている可能性があります。
鼻水を抑える働きをもつ「抗ヒスタミン薬」や「抗コリン作用薬」は、膀胱の筋肉に働いて尿を出しにくくする副作用があることが分かっています。また、気管支を拡げる作用がある「エフェドリン(交感神経刺激薬)」は、交感神経系に影響を与えて尿道括約筋を収縮させるため、尿が出にくくなることがあります。
こうした成分が含まれる風邪薬のパッケージや説明書には、禁止事項として「排尿困難のある人や前立腺肥大症の人は服用しないでください」といった記載があります。特に、前立腺肥大症(加齢などが原因ですっきり排尿ができない病気)の人は尿閉を起こす危険性が高いとされています。
尿閉は、激しい腹痛を伴ったり、放置すると腎臓や膀胱の機能に障害が出たりする危険性もあります。風邪薬の服用をやめ、速やかに泌尿器科を受診してください。
回答者:桑満おさむ
五本木クリニック 院長