貧血は女性だけの病気ではありません。慢性的な出血や血液をつくる機能の障害など、
背後に重大な病気が隠れていることもあり、男性も注意が必要な病気です。
ここでは、一番多い鉄欠乏性貧血について説明しています。
貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが減ってしまい、体のすみずみにまで酸素がゆきわたらなくなってしまう状態です。そのため、肺は酸素を取り入れようとし、心臓はたくさんの血液を送ろうとしてふだん以上に働くため、息切れや動悸を起こすのです。貧血が進行すると、顔色が悪くなる、めまい、足がむくむなどの症状が出ます。
ヘモグロビンの材料になるのが鉄。貧血のほとんどは鉄不足による鉄欠乏性貧血で、女性に貧血患者が多いのは、月経による出血で鉄が多く失われることや、ダイエットによる偏った食生活などの影響があるといわれています。
日本人が1日に必要な鉄の量(推奨量)は、成人男性で7.0~7.5mg、成人女性は月経がある場合10.5~11.0mg、月経がない場合6.0~6.5mg。妊婦(中期・末期)の場合はさらに15.0mg、授乳期は2.5mgをプラスします。
鉄には、体内で吸収されやすいヘム鉄と、吸収されにくい非ヘム鉄がありますが、吸収されやすいからとヘム鉄の食材ばかりではバランスが悪くなるので要注意。非ヘム鉄もビタミンCの多い食材などと一緒にとれば吸収されやすくなります。
ビタミンCのほか、赤血球をつくるもとになるたんぱく質や造血作用のあるビタミンB群や葉酸も貧血の予防・改善には欠かせない栄養素です。
「ふらっとして倒れる」、貧血にはそんなイメージがあります。そのため混同されがちなのが「立ちくらみ」。立ちくらみとは脳貧血のことで、急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になり、立っていられなくなる状態のことです。これは、脳の血流量を保つための調節機能が間に合わずに血圧が低下し、脳が瞬間的に酸欠状態になって起こる一時的なもの。同じ酸欠でも、貧血はヘモグロビンの量が少ないために酸素量が慢性的に不足するもので、脳への血液循環は正常です。
このように、立ちくらみ(脳貧血)と貧血は、発生のメカニズムがまったく違います。
脳貧血は急に立ち上がったりしたときに起こりやすく、倒れると思わぬけがをすることがあります。
予防するためには、ゆっくり立ち上がること。手すりにつかまるなど体を支えながら行動しましょう。脳貧血が起こったら、軽いときはその場に静かにしゃがみ、安静にして治まるのを待ちましょう。
監修:砂山 聡(水道橋メディカルクリニック院長)