栄養の供給や有害物質の解毒など、500種類以上の機能をもつ肝臓。病気がかなり進行するまで自覚症状がないため「ものいわぬ臓器」と呼ばれています。静かに頑張る肝臓を病気から守るには、働かせ過ぎて弱ってしまわないよういたわることが肝心です。
肝臓病はウイルス感染によるものと、生活習慣に起因するものとに大別され、ほかに薬害や遺伝が原因のものもあります。
日本人に最も多いのはウイルス感染で、ルートは2つ。飲食物からの経口感染と、感染者の血液や体液からの感染です。感染に気づかず症状を慢性化させてしまう場合があります。肝炎ウイルス検査は全国の保健所で受検できるので、受けたことがなければぜひ受けてみましょう。
生活習慣が原因の肝臓病は、過度の飲酒によるアルコール性肝障害が有名ですが、近年お酒を飲まなくても同様の症状が起きるケースが増えています。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれる症状で、肥満や糖尿病との関連が深く、今後も増加することが危ぶまれています。
肝臓の健康を大きく左右するのが食生活とお酒。脂肪や塩分、甘いもののとり過ぎに気をつけ、肝細胞の主成分であるたんぱく質をしっかりとりましょう。お酒は飲めば飲むほど肝臓に負担をかけます。飲み過ぎは避け、週に2日連続して休肝日を設けてください。
肝機能が低下している場合は原則として禁酒を。また、ビタミン不足にならないよう心がけて。便秘で腸内に発生するアンモニアなどの有害物質も肝臓にダメージを与えるので注意が必要です。
そのほか、たばこのニコチンやタール、薬も肝臓にとっては解毒・分解の対象。喫煙や必要のない薬は肝臓に余計な負担をかけます。
脂肪肝はその名の通り肝臓に脂肪がたまっている状態です。生活習慣による肝臓病の初めの一歩ともいえ、ここから肝炎・肝硬変・肝臓がんへと進行します。痛みなどの自覚症状はありませんが、高血圧や脂質異常症、動脈硬化を招きやすく、心臓病や脳卒中などの引き金になることが懸念されています。
脂肪肝はよく知られているお酒の飲み過ぎのほかに、肥満や偏食なども原因となります。肥満の上に食べ過ぎたり、過度の偏食によりたんぱく質が不足したりすることで、肝臓に脂肪がたまります。
このようなアルコールを原因としない脂肪肝は、新しい生活習慣病として注目をあびているNASHの前段階でもあります。以前は非アルコール性の脂肪肝からは肝硬変などにはならないと考えられていましたが、NASHは進行性の病気で肝硬変や肝臓がんに進んだ例も報告されています。
監修:砂山 聡(水道橋メディカルクリニック院長)