共済組合担当者のための年金ガイド
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- 【第114回】2025年12月号
ちょっと複雑な「子の加算」
-改正後の事例をイメージトレーニング-
今月(2025年12月)も先月(2025年11月)に引き続き、制度改正後の「子の加算」について、事例でみていきたいと思います。
なお、図表番号は2025年11月号からの通し番号としています。
また、先月号でも述べたとおり、基本的に、基礎年金は「子の加算額」「子の加算」、厚生年金は「子に係る加給年金額」「子の加給年金額」「子の加給年金」と記述していく予定ですが、文章の流れによっては、単に「子に係る加算額」「子に係る加算」「子の加算」などと、ひとつの文言で表記することもありますので、ご了解ください。
老基から「子の加算額」を加算され受給している父が、
厚年の被保険者になって、
在職定時改定で120月に達すると・・・?
老齢基礎年金に「子の加算額」が加算され、老齢基礎年金を受給するようになった65歳の父(国民年金の保険料納付済・免除期間120月、厚生年金の加入期間100月)が、65歳で引き続き、厚生年金保険の被保険者で就労し続け、厚生年金の被保険者期間が120月に達するとどうなるのでしょうか?
在職定時改定で、「子に係る加給年金額」が老齢厚生年金に加算されるようになるのでしょうか?
65歳の時点で、厚生年金の加入期間が100月あり、100月の加入期間に相当する老齢厚生年金が支給されていた場合でも、厚生年金の加入期間が在職定時改定で、120月以上になれば、在職定時改定がされる10月分の老齢厚生年金から、「子に係る加給年金額」が加算されるようになるのでしょうか?
そして、そのとき、老齢基礎年金に上乗せして支給されていた「子の加算額」はどうなるのでしょうか?
先月号の【図表2】【「子に係る加算の基本的な考え方」について】を思い起こしてください。
120月となるに至った当時、
生計を維持していた子がいれば、
老齢厚生年金の「子に係る加給年金額」が発生!
先月号で記述した内容を前提に、制度改正の理解を深めるため、次の【事例2】をイメージトレーニングとして考えてみましょう。
【図表5】をご覧ください。
【事例2】を踏まえ、Q2の回答について考えてみましょう。

厚生年金保険法をみると、在職定時改定の条文は、第43条第2項に規定されています。
また、改正後の老齢厚生年金の加給年金額の規定(厚生年金保険法第44条)は、【図表6】でお示したとおりです。

改正後の老齢厚生年金の加給年金額の規定(厚生年金保険法第44条)は、【図表6】でお示ししたように(基本的に、赤字で記し、赤の下線を引いた箇所を読んでいただくとわかりやすいかと思います)、120月となるに至った当時、生計を維持していた子がいれば、老齢厚生年金の「子に係る加給年金額」が発生する、ということが読み取れると思います。
この【事例2】(この時点における「子に係る加給年金額」の金額を30万円(注)と仮置きしています)では、在職定時改定により、120月となるに至った当時、生計を維持していた子がいますので、老齢厚生年金の「子に係る加給年金額」である定額の30万円(老齢基礎年金の「子の加算額」では満額に相当する額)が支給されるようになります。
(注)仮置きした30万円とは、『法定額269,600円×国民年金の新規裁定者の改定率』により設定。
基礎と厚年のいずれにも子に係る加算の受給要件を満たす場合、
厚年を優先し併給調整!
そして、老齢厚生年金の「子に係る加給年金額」が優先なので、老齢基礎年金の「子の加算額」12万円(この事例では、保険料納付済期間・免除期間120月に相当する金額)は支給停止となります。
先月号の【図表2】【「子に係る加算の基本的な考え方」について】で述べたように、「基礎年金と厚生年金のいずれにも子に係る加算の受給要件を満たす場合は、厚生年金を優先し併給調整を行う」ということになります(この事例の場合、改正後の国民年金法第29条の2参照。【事例3】で条文を示します)。
ということで、Q2の回答であるA2は、「(質問者の)お見込みのとおり」ということになります。
国年の保険料納付済期間・免除期間が、
父親:200月・母親:300月で、
父親が「主として生計を維持」している場合、
老基の「子の加算額」はどうなるのか・・・?
制度改正の理解をさらに深めるため、イメージトレーニングとして、次に【事例3】を考えていきましょう。
【図表7】をご覧ください。

【事例3】では、夫婦(夫67歳・妻65歳)に16歳の子どもがいるという設定にしてあります。
夫は65歳到達時、国民年金の加入期間は保険料納付済期間・免除期間も含め200月あります。
妻が65歳到達時(夫は67歳になっている、子は16歳)、妻の国民年金の加入期間は保険料納付済期間・免除期間も含め300月あるという設定になっています。
ただし、夫婦ともに、厚生年金の加入期間は120月未満なので、厚生年金に「子に係る加給年金額」は発生しません。
そして、この時点における「子の加算額」の満額を、30万円と仮置きします(法定額269,600円×国民年金の新規裁定者の改定率)と、夫(67歳)の老齢基礎年金には、20万円の「子の加算額」が発生しています(算定式は以下のとおり。詳細は2025年11月号【図表3】参照)。
夫の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」
30万円✕200月/300月=20万円
一方、妻(65歳)の老齢基礎年金には、30万円の「子の加算額」が発生します(算定式は以下のとおり)。
妻の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」
30万円✕300月/300月=30万円
さて、ここからがイメージトレーニングのクエスチョン(Q3)です。
Q3 妻が65歳に到達した時点で、夫が『子について主として生計を維持している』(改正後の国民年金法第29条の2第1項第2号)と認定される場合、子の加算額はどうなりますか?
さぁ、どうなるのでしょうか。
<選択肢>を3つ用意しました。
<選択肢A> 夫の老齢基礎年金に「子の加算額」20万円が引き続き加算・支給され、妻の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」30万円は全額支給停止になる。
<選択肢B> 夫が『子について主として生計を維持している』と認定された場合でも、妻に加算される「子の加算額」30万円のほうが多いのだから、子育てを支援するという制度改正の趣旨を踏まえ、妻の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」30万円が全額支給され、夫の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」20万円が全額支給停止になる。
<選択肢C> 夫が『子について主として生計を維持している』と認定された場合、夫の老齢基礎年金に「子の加算額」20万円は引き続き加算・支給される。一方、妻の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」30万円については、夫の老齢基礎年金に加算・支給される20万円に相当する部分の額については支給停止になる。したがって、妻の老齢基礎年金に加算される「子の加算額」30万円については、「30万円-20万円」=10万円が支給される。
夫婦両方に老齢基礎年金の「子の加算額」が出るときの、
一方の支給停止を規定した条文
「答え合わせ」をしましょうか。
夫婦両方に老齢基礎年金の「子の加算額」が出るときの、一方の支給停止を規定した条文は、【図表8】で示したように、改正後の国民年金法第29条の2に規定されています。
条文の規定とその解釈については、【図表8】に記したとおりですが、「配偶者(この事例では、夫)に支給する加算の額に限る」部分が、支給停止される規定になっていますので、詳しくは【図表8】の【条文の規定と解釈】をお読み取りください。

ということで、Q3の回答であるA3は、<選択肢C>ということになります。
条文だけだとわかりにくいかもしれませんので、Q3とA3に関するイメージ図を作成しましたので、【図表9】をご覧ください。
なお、【図表9】の【参考】に記しましたように、妻が65歳に到達したときに、妻が「主たる生計維持者」となる場合については、妻に「子の加算額」30万円が全額支給され、夫に加算された「子の加算額」20万円については、全額支給停止になります。

『子について主として生計を維持している』とは・・・?
さて、改正後の国民年金法第29条の2第1項第2号に関し、『子について主として生計を維持している』については、国民年金法第29条の2第2項で政令で定めるということになっています。
(加算額の支給停止)
第29条の2
(筆者注:第1項は【図表8】に記載済みなので省略)
2 前項第二号の規定の適用上、配偶者等によつて主として生計を維持していることの認定に関し必要な事項は、政令で定める。
筆者が思うところ、国民年金法の「主として生計を維持していることの認定に関し必要な事項」について、国民年金法第29条の2第2項で定められる予定の政令は、これまでの申請免除の判定・年金生活者支援給付金における収入・所得の判定と同様に、個人住民税のデータを用い、日本年金機構が判定することになると思われますので、「収入(または所得)の多い者を主たる生計維持者とする」ことを政令で規定するではないか、と推測しています。
いずれにいたしましても、政令が公布されましたら、あらためて情報を提供したいと考えておりますが、現時点ではそのように認識しております。
本年も1年間ご愛読ありがとうございました。
深く御礼申し上げます。
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なお、本稿を執筆するにあたり、厚生労働省の元・年金局長で、現・日本総合研究所特任研究員・高橋俊之氏が日本総合研究所のホームページに連載している『年金制度改正の議論を読み解く』、とくに【18. 年金制度改正法案の解説(その3)】の「7(2)老齢基礎年金の子の加算の新設」を、たいへん参考にさせていただきました。
この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。
あわせて、本年12月25日に、「年金制度の理念と構造―2025年改正と今後の課題」が社会保険研究所より刊行される予定とのことですので、一読をおすすめいたします。