生活習慣病に負けないからだづくり

内臓脂肪が招く血糖値の上昇 油断していると血管はピンチ

糖尿病とメタボリックシンドローム

内臓脂肪から分泌される物質がカギ

食事をすると、健康な人でも血糖値が上がります。それは、食物の糖質がブドウ糖に変換され、血液中に増えるためです。するとすい臓からインスリンというホルモンが分泌され、ブドウ糖を細胞に取り込むように働くので、血糖値が下がります。しかしインスリンの分泌量が不足したり、働きがわるかったりすると、ブドウ糖をうまく取り込めず、血糖値が下がらなくなります。これが糖尿病です。


なぜ、インスリンの働きがわるくなってしまうのでしょうか?このメカニズムに強く関係しているのが、実は内臓脂肪なのです。脂肪細胞からは、インスリンの働きを活性化させる「アディポネクチン」という善玉物質が分泌されていますが、内臓脂肪が増え過ぎると、この物質の分泌が減り、インスリンの働きがわるくなることがわかりました。


と同時に、内臓脂肪が増え過ぎると、内臓脂肪から「グリセロール」などの物質が大量に分泌されます。

片やインスリンの働きが低下して糖がうまく取り込めなくなり、一方で、糖を分解する力が弱くなって糖が利用されにくくなる。こうなれば高血糖状態が続いてしまうのも当然です。

リスクも高まり、 動脈硬化が加速度的に進行

さらに、この高血糖の状態が続けば血液はドロドロになり、血管壁もボロボロになり、その結果、動脈硬化も急速に進むことになるのです。


ところで、メタボリックシンドロームの診断基準では、空腹時血糖値は110mg/dl以上。これは糖尿病の診断基準から見ればまだ糖尿病とはいわれない境界型です。それなのにメタボリックシンドロームで該当してしまうのは、内臓脂肪がたまっていれば、それだけ血糖値も上がりやすく、また複数のリスクが重なることで、動脈硬化が進行しやすいからなのです。血糖値を下げるためにも、まず内臓脂肪を減らすこと。これが先決です。

生活習慣の改善で糖尿病の発症率が4割減!

平均年齢55歳、糖代謝に軽い異常が見られた522人を対象に行った研究によると、「体重を5%減らす」「脂肪の摂取を総エネルギーの30%未満にする」「運動を毎日30分続ける」などの生活習慣の改善を実行したグループは、何もしないグループよりも糖尿病にかかる確率が約4割も減ることがわかりました。



(出典:N Engl J Med 2001, Vol344,pl347)

食後のウォーキングや散歩がおすすめ!

こまめに歩いて1日1万歩を目標に!

内臓脂肪を減らし、血糖値をコントロールするためには運動が大切。なかでも簡単にできて続けやすいのが、毎日歩くことです。できれば1日に1万歩を目標に、歩く時間を多くつくるようにしましょう。 特に、食事の30分〜1時間後、血糖値が高くなる頃に歩くと、上昇が緩やかになるので効果的です。