サインを見逃さない
本人がストレスに気づき自分で対処する「セルフケア」に対し、管理者や上司が職場環境の改善や指導・相談などを行うことを「ラインケア」と呼びます。毎日一緒に働く部下の姿を間近で見て、職場の環境をよく把握し、改善点を見つけ、また、本人が困っているようなら、適切に対応すること。メンタルヘルス対策の要ともいえるケアです。
ラインケアを十分に行うためには、何よりもまず、部下の「いつも」の姿を知っておく必要があります。よく話す人の口数が減った、おしゃれな人が身だしなみに気を使わなくなったなど、いつもと違うサインがあれば見逃さず、声を掛けてください。
これらのサインを「やる気がない」「手を抜いている」「勉強不足」などと誤解せず、適切に対処する必要があります。サボっているように見えても、本人にそんなつもりはなく、心の病気が潜んでいる可能性があることを管理者は知っておかなければなりません。対処次第では事態を悪化させてしまうこともあるので、見極めが肝心です。
適切な対応をとる
職場で気に掛かる人がいると、元気づけようと励ましたり飲みに誘ったりしがちですが、逆効果になることが多くあります。何よりも、まずはその人の話をゆっくり聞いてください。
心の不調の度合いや原因は多種多様です。相談者の個性や状況によって、とるべき対応が違うことをきちんと理解しておきましょう。話を聞くときは、相手が安心して話せるよう、落ち着ける場所を選びます。途中で自分の意見を挟まずに、相手を受け入れ、聞き役に徹します。体の状態、今の気持ち、困っていることなどを、自分のペースで話してもらいます。話す様子にも十分に注意を払い、状況の整理・理解に努めます。
相談された側も一人で抱え込まずに、上司や他の職員、相談機関や医療機関などと連携して対応に臨みましょう。ただし、相談内容は秘密厳守が原則です。問題解決のために他の人に相談内容を伝える必要がある場合は、必ず事前に本人に了承を得てください。また、そのことによって、本人が不利益を被らないよう注意を払うことも忘れてはなりません。
部下の信頼を得るリード法
いくら部下の変化に気づいても、信頼されていなければ心を打ち明けてはもらえません。部下を思ってとった行動が、気づかぬうちに部下を傷つけていることがあるかもしれません。よい関係を築くために、管理者自身が「上司としてのあり方」を省みることも必要です。