お話
NPO法人メンタルレスキュー協会 理事長
下園壮太しもぞのそうた
1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。初の心理幹部として、多数のカウンセリングを経験。退職後はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、自治体、企業などに向けてストレスコントロールなどの講演・トレーニングなどを提供。『令和時代の子育て戦略』(講談社)、『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)など著書多数。
家族にきつく当たってしまう
疲れがたまると、つい感情的になって言い過ぎたり、イライラを表情に出してしまったりして、家族にきつく当たってしまう―。他人に対しては、嫌なことがあってもニコニコしていられるのに、家族の前では、感情をむき出しにしてしまうという人は少なくないはずです。
実は、家族に「素直に感情を表現できる」のは、「本当の自分を受け止めてもらえる」という信頼関係があるからこそ。誰しも怒りや不安、イライラといったネガティブな感情をもつものです。ただ、誰彼構わずその感情をぶつけるわけにはいきません。もし、それが家でさえも解消できないとしたら……。きっと心が悲鳴を上げてしまいます。そう、家族に自分の感情を出すこと自体は、悪いことではないのです。
問題なのは、家族が相手だからといって、攻撃的な感情の発散がエスカレートしてしまうこと。「言い過ぎているな」と気付いたら、とにかく相手との距離を置くのが鉄則です。「別の部屋に行く」「外の空気を吸う」などして、気持ちをクールダウンしましょう。疲れているときほど、感情がエスカレートしてしまいがち。こんなときは、好きなものでも食べて早く寝るに限ります。
また、冷静になったら「ごめんね」の一言を忘れずに。どうしても気まずくて謝りにくいときは、「そういえば~」などと会話の方向転換をして、「自分はもう怒ってない」「いつもどおりだよ」ということを伝えるのもよいかもしれません。
日頃から、家族内で自分がどんな感情を抱えているかを共有する時間を設けるのもおすすめです。「職場でこんなことがあってモヤモヤした!」「友達からこんなことを言われて腹が立った!」など、素直に話し合うことにより、「八つ当たり」以外の形で感情の発散ができるはずです。もし言い争いになったとしても、「勝ち・負け」を追求しないこと。家族だからこそ、ときには当たり、当たられる「お互いさま」の気持ちを忘れずに、ほどほどのところで切り上げるよう心掛けたいものです。