お話
NPO法人メンタルレスキュー協会 理事長
下園壮太しもぞのそうた
1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。初の心理幹部として、多数のカウンセリングを経験。退職後はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、自治体、企業などに向けてストレスコントロールなどの講演・トレーニングなどを提供。『令和時代の子育て戦略』(講談社)、『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)など著書多数。
“NO”と言えない自分にモヤモヤ
上司や先輩から頼まれた仕事を「無理です」「できません」と平気で断る人を見て、「なんて自分勝手なの!」「忙しいのは皆同じなのに」と腹立たしく思う。その一方で、結局は面倒な仕事を回避できているその人が、少しうらやましくもある……。
人は誰でも、自分とは違うやり方をする人に対し、違和感を抱いたり、受け入れ難さを感じたりするものです。ただし、「人は人、私は私」と割り切れず、心のどこかで「あんな風にやれたらいいのに」「うらやましい」と感じるようなら、自分自身のやり方に疲れを感じているサインかもしれません。
こんなときにおすすめしたいのは、試しにその人のようにやってみること。例えば、いつもなら相手の気持ちを考えたり、その場の空気を読んだりして無理に引き受けていた仕事を、思い切って“NO”と断ってみる。そして、そのときの自分の気持ちを確かめてみてください。もしかしたら、こなせる以上の仕事を抱え込み、がんじがらめになっていたことから解放されて、心がふっと楽になるかもしれません。逆に、同じように断ってはみたものの「やっぱり落ち着かない」「後味が悪い」と、後悔の方が大きくなる可能性もあります。それでも、一度試してみることによって、「断るのは気が引けるけど、締め切りを延ばしてもらえるか相談してみよう」「誰かに協力してもらえればできるかも」などと、“引け受ける”か“断る”以外の現実的なアイデアを思いつくこともあります。
やり方を変えることを、今までの自分を否定しているように感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、働く環境も働く人のスタンスも多様化し続ける時代、一つのやり方に固執するのはもったいないと思いませんか。
大切なのは、能力を最大限に発揮できるように、常に自分を“アップデート”していくこと。自分とは違うタイプの人にモヤモヤを感じたときには、“自分自身を見直し、磨きをかけるチャンス”と捉えてみてはいかがでしょうか。きっと何かプラスになることが見つかるはずです。