お話
NPO法人メンタルレスキュー協会 理事長
下園壮太しもぞのそうた
1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。初の心理幹部として、多数のカウンセリングを経験。退職後はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、自治体、企業などに向けてストレスコントロールなどの講演・トレーニングなどを提供。『令和時代の子育て戦略』(講談社)、『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)など著書多数。
迷って決められない自分がいやになります
選択肢の多い現代、迷ってなかなか決断できないというのは、珍しい悩みではありません。また、普段なら苦にならないことも、疲れているときはしんどい……。そういうこともあります。
一昔前は、買い物をするなら、自ら店まで足を運ぶ必要がありました。行ける範囲の店には限りがあり、また、その店の品揃えも決まっていました。しかし、今はどうでしょう。スマホひとつあれば、それこそ世界中のありとあらゆる商品が一瞬で目の前に現れます。選択肢が増え、喜ばしい反面、何を選べばいいのか途方に暮れてしまう場面がぐっと増えました。
実は私たちは、選択の幅が広ければ広いほど、自由になればなるほど、ストレスを感じやすくなります。常に選択を迫られるストレスにさらされることになるからです。選択し、決断するという行為は、思っている以上にエネルギーを使います。選択肢が増えれば増えるほど、決断するための労力も時間も増えます。自分で選ぶ、という責任もついて回る。選択した後にも、「これでよかったのか」と不安になることもあるでしょう。自分の選択が周囲から浮いていないか、気になって仕方がない、という人も多いはずです。
おすすめしたいのは、何の制約もない状態ではなく、ほんの少し、一部だけルールを決めて、その中で物事を決定すること。それだけで、迷うことに対するストレスはだいぶ減るはずです。
例えば、身近に頼れる人がいれば、どんどん頼ってしまいましょう。ランチをどこに行くか迷うなら、仲の良い同僚と一緒に行き、同じメニューを注文する。曜日によって店を決めてしまうのもいいかもしれません。何を着るか迷うなら、ワードローブは必ず決まった店のものと決めてしまい、それをローテーションで着る。靴下などは、全て同じにしてしまえばそもそも迷う余地がありません。それで気持ちよく過ごせればそれでよし、「たまには違うものがいいな……」となったら、そのときは思う存分、選べる自由を堪能してください。