お話
NPO法人メンタルレスキュー協会 理事長
下園壮太しもぞのそうた
1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。初の心理幹部として、多数のカウンセリングを経験。退職後はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、自治体、企業などに向けてストレスコントロールなどの講演・トレーニングなどを提供。『令和時代の子育て戦略』(講談社)、『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)など著書多数。


衝突しがちな兄弟、どう付き合う?

そもそも「兄弟は仲が良くて当たり前」と思っていませんか。多くの相談を受けている私には、その考えは現実的ではないと感じられます。兄弟は、親の愛情や財産を奪い合う、いわば「ライバル」。大人になるとお互いの配偶者が関わってくる他、家業の継承、親のケアや財産分与など、利害関係が絡んだ事柄で衝突するのが当たり前。それでもお互い独立して生活していれば程よく距離を置けるものですが、身内である以上、全く関わらない訳にもいきません。冠婚葬祭や季節の行事など避けて通れない場面は必ずあるもの。お互い気持ちよく付き合うための工夫はしておいても損はないですよね。
トラブル防止のためにすぐできる心掛けとして、お互いの近況の確認を欠かさないことをおすすめします。子供の頃はお互いのことをよく知っていても、疎遠になればなるほど、相手がどんな生活をし、どんな悩みを抱えているかなど見えない部分が多くなってきます。すると何かあったとき、どうしても相手の意図を悪い方から捉えがちに。久々に顔を合わせた際は、まずは近況の確認を。年賀状やお歳暮などをきっかけに近況を伝え合うだけでも意味はあります。
何か話し合いをするようなときは、テーマを絞り、その場で結論を急ぎすぎないこと。それぞれが一旦家に持ち帰り、配偶者などと問題を整理する時間を取るべきです。その時間を惜しむと、結局後で結論が覆ったり、しこりを残したりする結果を招きかねません。ヒートアップしてしまいそうなら、信頼できる親戚などに「調整役」を依頼するのもおすすめ。中立的な立場で話し合いに参加してもらうことで、意見が言いづらい人も議論の外に置き去りにされることが減ります。
仲が良い、悪いに関わらず、小さなやり取りを面倒がらず重ねるプロセスこそが、少しだけ心地よい兄弟関係を築く下地になります。それは、いずれやってくるかもしれない難しい局面で、思いやりや助け合いなど、見えない力となり、家族を支えることにもつながるでしょう。