よし!〇〇しよう!

「そろそろ来月のスケジュールを考えないと。しなければならないことを洗い出して、優先順位もつけなきゃ」。

あるとき、同僚のこんな独り言が耳に入ってきました。それを聞きながら、ふと「なぜ、“しなければならない”なのだろう?」と疑問に思いました。

「しなければならない」が頭に引っ掛かった私は、日常を振り返ってみました。私自身も何と多くの「しなければならない」を口にしていることでしょう。職場では「今日は提案書を仕上げなきゃならない」「お客様にメールを出さなければ」「経費の精算、しておかなければ」など、朝から晩まで何度も「しなければならない」を連発。家庭でも同じです。「洗濯しなきゃ」「ゴミを出してこなければ」「掃除もしないといけないし」と片付けるべき家事を一つひとつ挙げて、全て「しなければならない」と無意識のうちに言っていたのです。

1日に何度も口にする「しなければならない」。この言葉には「義務感」が漂い、「したいわけじゃないけど、仕方ないことだ」というニュアンスが含まれているように思えます。

一方、「今日は、提案書を仕上げよう」「お客様にメールを出そう」「洗濯を済ませてしまおう」「ゴミを出してこよう」というように、「しなければならない」を使わないようにするとどうでしょう。一つひとつの行為を自分の意志で取り組むように聞こえます。あらゆる物事に対して自分が主体になれるような気がします。

冒頭の同僚に「『しなければならない』ではなく、『しよう』『したい』と言った方が、前向きな気持ちになれると思うけど」と伝えてみました。「確かに!」と同意してくれました。

「しなければならない」と受け身で考えるのではなく、「私の意志でやるのだ」という感覚はとても大事です。言葉遣い一つで、ずいぶんと心持ちは変わります。「しなければならない」と口にしているのに気付いたとき、そのうちのいくつかでも「しよう」「したい」に変えてみるのもおすすめです。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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