打ちつ打たれつ

アイデアをまとめたり、自分の行動を振り返ったりするために、皆さんはどんな方法をとっていますか。声に出さず「どうすればいいかな?」「今日の失敗は何が原因だろう?」と自問自答することが多いかもしれません。

でも、こんなときは誰かの力を借りてみるのもおすすめです。同僚でも家族でも誰かをつかまえて、話し相手になってもらうのです。人と話すためには、頭の中にあることを言葉にしなければなりません。言葉にしながら、頭の中の「もやもやした何か」に少しずつ形を与えていく。相手が質問してくれれば、それに対して答えながら、自分の考えがより整理されていきます。

「今、こういうことをやってみようと思ってるんだ」と伝えれば「どうやって実現するの?」と問い掛けてくれたり、「今日、こんな失敗しちゃって」と話したら「それでどうなったの?」と続きを促してくれたりするかもしれません。

今度は、それに対し「こんな方法でやってみたい」「その結果、こんな事態に陥って、対応方法に困っている」などと自分の答えを言葉にして説明することになるでしょう。そういうやりとりを繰り返していると、現状が見え、自分の「考え」や「すべきこと」が自然と見えてくるものです。

相手の客観的な発言も役立ちます。

「今の話を聞いている限りでは、私はこう思う」「私だったら、こうするなぁ」といった他者の感想やアドバイスを聞き、「その手があったか」などと新たな気付きが得られることも。

考えがまとまらないときは、誰かに話してみる。これを「壁打ちの相手になってもらう」と表現した人がいて、うまい言い方をするなぁと感心しました。考えを整理したいとき、もやもやしたことをすっきりさせたいとき、壁打ちの相手を探してみてはいかがでしょう。

ただし、相手選びはくれぐれも慎重に。自分が信頼でき、リラックスして話せてこそ、壁打ちの効果も上がるはずです。頭を整理するための壁打ち。ぜひお試しを。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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