“オウム返し”使ってみない?

相手の話に対して知識がない、興味がないというとき、会話の進め方に困惑することがあります。

例えば、野球好きの相手から「地元の草野球で試合をしたんだけど、7回コールドで負けてしまったよ。それが悔しくて」と言われたとします。もし、聞き手である本人が野球に詳しくなかった場合、「7回コールド」が理解できずに、どう反応したらよいか分からなくなってしまうのです。

「楽しそうに話しているのに、腰を折っては申し訳ない」などと考え、適当に話を合わせてしまう人もいます。でも、話し手は反応の悪さを敏感に察知するため、会話は全く盛り上がりません。正直に「野球に詳しくないんだけど、コールドとはどういう状況なの?」と質問すれば、野球好きの話し手は丁寧に説明してくれるはずです。「コールド負け」の意味を理解できたら、改めて「なるほど。試合が途中で決着してしまうってことなんだね。それは残念だったね」と共感的に応じることができるでしょう。

「相手の話に知識や興味があれば、会話を続けられるよ」という人もいるでしょうが、相手の話に知識や経験があると多くの人が自分のことを話したくなります。

相手が「今度の昇格試験、面接でうまく答えられるか心配で」と言ったとします。聞き手が前年に同じ試験を受けていると、「事前の予行演習が大切だよ。さほど厳しい質問はされないから、落ち着いて話せば大丈夫!」などとアドバイスしてしまうのです。

このような会話で最初にすべきことは、相手の話に耳を傾け(傾聴)、受容し、共感を示すこと。「昇格試験の面接が特に心配なんだね!」と相手の気持ちを言葉でそのまま返してみるのです。きっと相手は「自分の話をちゃんと聞いてくれて、自分のことを受け止めてくれている」と思え、お互いの心の距離を縮める第一歩になります。

「傾聴」「受容」「共感」。この3つを心掛けるだけで、誰でも「聞き上手」になれます。ただし、上達するには会話のたびに自分自身に言い聞かせることが大切です。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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