時にはちょっぴり背伸びして

この春小学生になった甥っ子は、大抵の子供がそうであるように好奇心旺盛。大人がすることをじっと見ていて、「それやってみたい」とどんなことでもトライしてみます。庭の草取り、ミシンがけ、ホットケーキ作り……。まだ言葉も拙かった3歳ごろ、「〇〇ちゃんも、それ"できたい"の!」とよく言っていました。「できるようになりたい」という意味です。「やりたい」には好奇心が、「できたい」となると向上心まで表れているようで、ほほ笑ましく思ったものです。

小さな子供は、未経験のことに対して、ためらうことなく果敢に挑戦し、トライ&エラーを繰り返します。そして、いつの間にかいろいろなことができるようになり、大人から見れば驚くほどのスピードで能力が向上します。

人は年齢を重ねるほどにできることは増えますが、慣れてくるとつい「自分のできることはこれ」と線引きするようになりがちです。小さな子供のように、何でも「やらせて!」「できるようになりたい!」と主張することは減っていきます。「今さら新しいことを覚えるのも大変だし」と何かを諦めたり、見なかったことにしたり……。

でも、未経験のことに挑戦し、何か一つでもできるようになったら、何歳であっても楽しいはず。例えば、新しいレシピを試して料理がおいしくできれば、うれしい気分になれます。未知の分野や作家の本を読んでみたら、自分の知識や考えが深まります。興味をもったスポーツを始めてみたら、予想外に運動能力が高まって、自分の伸び代に気付くこともあるかもしれません。

今ある能力を超えて何かに取り組むことを「ストレッチ」といいます。何歳になっても、昨日の自分よりほんの少し背伸びをして、できることを増やす。このストレッチを成功させるにはあえて宣言することにより、自分の意識を高めることです。また、宣言を聞いた側も、「本当にできるの?」などと茶化さず、「応援しているよ」と伝えること。こうしたコミュニケーションが互いの成長を支えてくれるのです。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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