誰もが誰かの応援団

30歳の頃、恩師に出した年賀状の返事に、こんなメッセージが添えられていました。

「いつも応援団のつもりでいるよ」。

新しい仕事へ変わろうとしている時期だったため、この一言にはずいぶん勇気づけられました。たびたび年賀状を取り出しては眺めたものです。

この恩師は、中3の生意気盛りだった私たち生徒の話をよく聞いてくれた先生。私が50代になった現在も年賀状のやりとりが続いています。

人を励ますとき、つい「頑張って」と声を掛けてしまいますが、言われた側は、その一声をうれしく感じつつも、「もう十分頑張っているのに……」と思うこともあるでしょう。それは、「頑張って」という言葉の陰に、「あなた」という主語が隠されているから。「(あなたが)頑張れ」。懸命に頑張っているとき言われれば、プレッシャーにもなりかねません。

一方、「応援団のつもりでいるよ」は、「(私は)応援団」というように、主語は「私」。「自分主語」で伝えられる言葉は、素直に受け止めやすくなります。余計なプレッシャーは与えずに、ちゃんと見守っている、気にかけていることは十分に伝わります。応援され、力もより湧いてくるかもしれません。

私たちは決して一人で生きているわけではありません。必ず誰かに支えられて生きています。

助けてもらいたいと思ったら、まずは自分の周囲の誰かを応援してみましょう。同僚でも家族でもすれ違った誰かでも構いません。誰かを「応援」しようという気持ちがあれば、どこかの誰かから自分もまた「応援」してもらえる日が、きっとやって来ます。

ある方に、こんなことを言われたことがあります。「よくGive and Take.(ギブ・アンド・テイク)と言うでしょう?本当は、Give, Give and Take.なんだよね。たくさんGiveすると、誰かからいつか返ってくる。そのくらいの気持ちでいることが大事だよ」と。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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