自分にだけ甘くない?

ある心理学の本に以下のような一節がありました。
「人は他者の言動については、“そういう人だから”と、その人自身を原因にしてしまうが、自分の言動については、“そういう状況だったから”と状況に影響を受けていると解釈しやすい」。

これを読んだとき、思い当たることが多々あったため、目からウロコが落ちました。

例えば、友人が約束の時間に遅れてきたとしましょう。以前にも何度か遅れてきたことがあると、それらの経験から「彼(彼女)は、遅刻をする人だから」と思い込みやすいのです。もちろん、自分も約束の時間に遅れることもあるでしょう。しかし、自分が遅刻したときは、「今日はたまたま電車が遅れたからだ」と、状況を原因にしてしまうのだそうです。

職場やプライベートなどで人間関係を冷静に観察していると、この考え方が当てはまるケースは多いように思います。

後輩から提出された書類などの成果物に誤字が多かったとき、「前回も誤字が多かったような……」などと思っているうちに、「この後輩は、誤字を気にしないタイプだ」とレッテルを貼ってしまいがちになります。実際は、たまにある誤字を目にしただけだったとしても、「彼(彼女)は、いつもチェックが甘いんだよな」などと、その「人となり」に原因があるように決めてかかるのです。

しかしながら、自分が作成した資料の誤字を部下や同僚から指摘されると、「ああ、納期まで短くて急いで作ったから。誤字あった?ごめんなさぁ~い」と済ませてしまいます。自身の場合は、「私はチェックが甘いわけではなく、今回は急いで作らなければならない状況だったから、誤字があっても仕方ない」と考えてしまいがちです。

誰かをネガティブに評価しそうになったら、そういう「状況」だったのかも、と考えてみることが他者にやさしくなるコツです。

Profile

たなか じゅんこ1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。

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