監修:寺本民生(帝京大学臨床研究センター センター長)

「脂質異常症」とは

「脂質異常症」とは、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロール(以下LDL)が増え過ぎるか、HDL(善玉)コレステロール(以下HDL)が不足する病気です。
中性脂肪は血液中の貯蔵エネルギーで、使われないと体脂肪になります。
コレステロールは細胞を作る成分で、LDLは体にコレステロールを届け、HDLは余分なコレステロールを回収していますが、両者のバランスが崩れると動脈硬化のリスクが高まり、全身に合併症が起こりやすくなります。

検査の基準値。1 基準範囲 中性脂肪 150㎎/dl未満 HDLコレステロール 40以上 LDLコレステロール 120未満、2 保健指導判定値 中性脂肪 150~299㎎/dl HDLコレステロール 35~39 LDLコレステロール 120~139、3 受診勧奨判定値 中性脂肪 300㎎/dl以上 HDLコレステロール 34以下 LDLコレステロール 140以上。※LDLコレステロールに代えてNon-HDLコレステロールを測定する場合の基準値は、基準範囲 150未満、保健指導判定値 150~169、受診勧奨値 170以上(単位:mg/㎗)です。※特定健診における基準値

なぜ脂質異常症になるの?

肥満、特に内臓脂肪型肥満になると中性脂肪やLDLが増えやすく、HDLが減りがちになります。
また女性は閉経すると女性ホルモンが減少し、LDLが増えやすくなります。
このほか、遺伝による家族性の脂質異常症もあります。
いずれの場合でも、右図のような習慣は脂質異常症を悪化させます。

こんな習慣が脂質異常症を招く!揚げ物や炒め物をよく食べる。野菜・果物・青魚・大豆製品をあまり食べない。甘いものを毎日のように食べる。たばこを吸う。お酒をよく飲む。あまり歩かない。座っている時間が長い。スポーツや運動をあまりしていない。

脂質異常症の何が問題?

脂質異常症はほかの生活習慣病がなくても動脈硬化を進めるため、虚血性心疾患や脳卒中の大きなリスクになります。特にLDLが高いと心臓や脳の血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
また中性脂肪が増えると血管を傷つけてLDLが血管に入り込みやすくなることも知られています。

脂質異常症と関連しておこる重大な病気。虚血性心疾患、突然死の原因第1位で、心臓の冠動脈が詰まる狭心症や心筋梗塞。上記の検査でいずれも異常となった場合でもリスクが高まる。脳卒中、介護が必要になる主な原因の1つ。血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血などがある。
検査結果別 タイプ別血管の老化を防ぐ生活習慣

はじめに肥満をチェック!

■肥満(BMI*25以上)の人は減量を。
体重の3%前後の減量で改善の見込みがあります。
*BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
■あなたの体重の3%は?
現在の体重kg × 0.03 = あなたの3%kg
※Lは高LDL、Hは低HDL、中は高中性脂肪、全はすべてのタイプに共通の対策です。基準範囲の人は、検査項目(上記※参照)別に、対策をまとめました。実践する生活習慣の確認を。全 味わいつつゆっくり食べる。L、中 野菜や海藻、きのこ類をとる。中 お酒は適量の範囲で。全 早歩きや散歩で有酸素運動。姿勢を良くして効果アップ!保健指導判定値の人は、上の検査項目で「2」レベルの項目がある人は、検査項目別に、より積極的な対策を。自分にできそうな目標を立て、毎日の状況を日記やメモに残すとなお効果的です。全 食事でとる脂肪を晴らす。L、H コレステロールを多く含むものを控える。L 動物性のあぶらは、できるだけ控える。L 大豆製品や青魚など、良質なあぶらを。ただし、取りすぎは肥満のもと。L LDLの吸収を防ぐ食物繊維を多く含む食品をとる。中 炭水化物(甘い食品や主食など)を控えめに。中 お酒は糖質が多いので控える。全 水泳や水中ウォーキングで有酸素運動を。全 筋トレで筋肉を増やす。 全 喫煙者は禁煙を! 肥満の人は…急激なダイエットは避け、1か月1~2kg程度のペースで減量を。受診勧奨判定値の人は、目立つ症状は現れにくいですが、必ず継続して受診を。特に生活習慣病のある人は、動脈硬化がさらに進みやすくなります。虚血性心疾患や脳卒中の発作のもとは体内で着々と進む動脈硬化。上記を参考に生活習慣の見直しもお忘れなく!
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