監修:寺本民生(帝京大学臨床研究センター センター長)

「肥満」とは

体に体脂肪が過剰に蓄積された状態を肥満といいます。体脂肪を構成する脂肪細胞が大きくなり過ぎると、血圧を上げたり、脂質異常を起こしたり、血糖値を上げたりする「生理活性物質」を分泌しやすくなったりします。特に内臓脂肪はその働きが強く、生活習慣病になるリスクが高まります。
一般に肥満の判定はBMIで行い、内臓脂肪型肥満の目安として腹囲を用いています。

BMIの判定基準。やせ BMI 18.5未満、標準 18.5~25未満、肥満 25以上。※BMI22のとき、もっとも病気にかかりにくいとされています。腹囲の判定基準、男性85㎝以上 女性90㎝以上で内臓脂肪型肥満 ※いずれも、内臓脂肪面積100㎠に相当。

なぜ肥満になるの?

使うエネルギー量より摂取するエネルギー量が継続的に多いと、肥満になります。一般的に、年齢を重ねるほどに活動量は減りがち。体の代謝も悪くなるため、必要なエネルギー量は徐々に減っていきます。
肥満予防のためには、食事量や生活習慣も見直していく必要があるのです。

こんな習慣が肥満を招く!運動時間がない・少ない。座っている時間が長くなりがち。外出時にあまり歩かない。エレベーターやエスカレーターをよく使う。朝食をとらない。おやつをよく食べる。食べながらテレビや新聞を見る。外食の後、家でも食べる。

肥満の何が問題?

肥満、特に内臓脂肪型肥満は、高血圧・脂質異常症・高血糖(糖尿病)などを招きやすく、動脈硬化を進行させるメタボリックシンドロームの要因です。
これらは同時に進行し、放っておくと糖尿病が重症化して合併症(神経障害・網膜症・腎症)を起こしたり、脳卒中や虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)を引き起こしたりするのです。

メタボリックシンドロームの診断基準 腹囲 男性85㎝以上 女性90㎝以上(息を軽く吐き、おへその高さで測定)+①~③のうち2つ以上に該当 1 血清脂質 中性脂肪 150㎎/㎗以上 HDLコレステロール 40㎎/㎗未満 のいずれかまたは両方 ②血圧 収縮期血圧 130㎜/Hg以上 拡張期血圧 85㎜Hg以上 のいずれかまたは両方 ③血糖 空腹時血糖 110㎎/㎗以上 ※特定健診における基準値とは異なります。
検査結果別 肥満から引き返すエネルギー過剰の予防の工夫

はじめに肥満をチェック!

■BMIの計算式で、自分の肥満度をチェックしよう。
あなたのBMI(BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))   あなたの腹囲cm
■あなたの体重の3%は?
現在の体重kg × 0.03 = あなたの3%kg
※最終的には標準体重(標準体重=身長(m)×身長(m)×22)を目指しますが、まずは3%減量すると、体全体にいい影響が出る見込みがあります。
標準範囲の人は、肥満にならない基本的な習慣を身につけましょう。食事もその他の生活習慣も、この段階でのしっかりした習慣づけが大切です。野菜類をたっぷり、食事の最初に食べる。油脂を使った調味料・肉の脂身などを控えめに。食品のパッケージやメニューに書いてあるエネルギー量を確認。ゆっくり噛んで食べる。毎日、体重を測定する。なるべく遠回りをする・車を使わない。気晴らしに運動をする。標準範囲を超えた人は、より積極的に食事やその他の生活習慣の見直しを。毎日の生活自体を身体活動の機会ととらえ、ちょっとした機会でも体を動かしましょう。毎日の体重と食べたもの、歩数を記録しておくと、なお効果的です。調理方法を揚げる・炒めるから焼く・蒸す・ゆでるに変える。主食と主催の量を1割ずつ減らす。飲み物を無糖に。間食は時々のご褒美程度に。就寝2時間前は食べない。階段を積極的に使う。喫煙者なら、禁煙する。電車やバスでは、30分程度までなら立つ。積極的に家事をして大きめに体を動かす。実践方法を決め、期限を切って減量目標を立てる。受診を勧められた人は、BMI30以上の肥満や、体重以外にも基準値を超える検査結果がある場合は、医師や管理栄養士に相談を。上記の生活習慣改善も継続しましょう。体重・歩数・1日に食べるもの(高血圧の人は血圧も)の記録を見えるところに貼っておく。減量宣言をして協力者に定期的に報告。
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