監修:寺本民生(帝京大学臨床研究センター センター長)

「糖尿病」とは

体のエネルギー源となる「血糖」が使い切れず、血液中で余っている状態を「高血糖」といい、それが続くようになると「糖尿病」と診断されます。
血糖値は食事により上がり、血糖値を下げる働きをもつ「インスリン」というホルモンの働きで次第に下がります。しかしインスリンの働きが悪くなったり、分泌量が減ったりすると、血糖値が下がりにくくなってしまうのです。また、HbA1cは血糖と結合したヘモグロビンの量を示す検査で、検査値は過去1~2か月の血糖値の量を反映しています。

検査の基準値。1 基準範囲 血糖値 100㎎/dl未満 HbA1c 5.6%未満、2 保健指導判定値 血糖値 100〜125㎎/dl HbA1c 5.6〜6.4%、3 受診勧奨判定値 血糖値 126㎎/dl HbA1c 6.5%以上。※特定検診における基準値

なぜ高血糖になるの?

活動に必要な量より多く、食事をとっているためです。
特に「糖質」は食後すぐに「血糖」に変換されるので、「高血糖」になりやすい食品です。主に穀類(米飯・めん類・パン・とうもろこしなど)や砂糖、果物、いも類などに多く含まれています。

こんな習慣が高血糖を招く!朝食を抜きがち。おやつや夜食をよくとる。主食の量が多い。野菜をあまり食べない。あまり歩く機会がない。座っている時間が長い。スポーツや運動の習慣がない。

高血糖の何が問題?

放っておくと血糖が酸化して血管を刺激し、動脈硬化を引き起こします。肥満の人は高血糖になりやすいので特に注意を。どちらもメタボリックシンドロームのリスクです。
放置すると三大合併症(右参照)の危険が高まり、さらに脳卒中や虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)を引き起こして生命が危ぶまれる場合も。

糖尿病の三大合併症。末梢神経障害、手足の感覚のマヒなどから始まり、重症化すると下肢切断が必要な場合も。網膜症、目の網膜の血管が傷んで起こる。成人の失明の原因の第2位。腎症、腎臓の血管が傷み、機能が低下。人工透析が必要になると、生活に大きな制限が。
検査結果別 「高血糖」から引き返す食事と身体活動

はじめに肥満をチェック!

■肥満(BMI*25以上)の人は減量を。
体重の3%前後の減量で改善の見込みがあります。
*BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
■あなたの体重の3%は?
現在の体重kg × 0.03 = あなたの3%kg
基準範囲の人は、血糖値を上げない基本的な習慣を身につけましょう。保健指導判定値に近づいている場合、この段階での習慣づけ大切です。食事の見直しでは、朝食・昼食はしっかり、夕食は軽めに。主食・主菜・副菜をバランスよく。甘い物は控えめに。お酒は適量の範囲で。身体活動の見直しでは、エネルギー消費のため、できるだけ歩く。気晴らしには体を動かして!保健指導判定値の人は、より積極的な食習慣や身体活動の改善を。自分にできそうな目標を立て、毎日の生活状況を日記やメモに残すとなお効果的です。基準範囲の人の見直し点に加えて、食事では、点糖の吸収を抑える野菜や海藻から先に食べる。寝る前2時間は何も食べない。油脂の多い料理は1食1品まで。飲み物は無糖に。自分が食べている食事のエネルギー量を意識し、包装やメニューなどで確認。身体活動では、上下2階分(1階から3階など)は階段を使う、家事や趣味で積極的に体を動かす、食後に散歩などの有酸素運動をする(血糖値は脂質より前にエネルギーとして使うため)。受診勧奨判定値の人は、生活習慣の改善だけでは、検査値の改善は難しくなってきました。継続的にかかりつけ医を受診しつつ、前述のような生活習慣の改善も並行して行いましょう。あきらめず、根気強く続けることで、進行は食い止められます。
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