目の疲れというと軽く考えがちですが、膨大な視覚情報があふれる現代では、私たちの目に掛かる負担は想像以上。
目のオーバーワークは、首や肩のこり、頭痛、イライラなど、さまざまな不快な症状を招きます。
これらは、多くの人が日常的に感じている症状。
目の疲れは、現代人の不調の入口になるといっても過言ではありません。
特に花粉が飛び、紫外線が強くなる春は、目にとってはつらい季節。上手にいたわることが、全身の疲れの軽減につながります。
※あてはまる項目が多いほど、目に負担が掛かっているといえます。
目は、周囲の情報をキャッチし、生きてゆくための重要な感覚器。脳の情報の80%以上が視覚を通して集められているともいわれ、「脳の出張所」とも呼ばれます。
それだけに、目の健康には日頃から十分に注意する必要がありますが、テレビ、パソコン、携帯電話など、現代の生活は、目にとっては過酷な環境。特に携帯電話のような小さな画面は、顔を近づけて凝視するため、目にとっては大きな負担となっています。また、パソコンを使ってデスクワークをしている人も、長時間画面にピントを合わせ続けるため、目の疲労は思っている以上に深刻。厚生労働省の調査でも、パソコンを使って作業をしている人の9割以上が目の疲れや痛みを感じていました(右グラフ)。
パソコン画面を長時間見ている人の9割以上が目の疲れを感じています。
厚生労働省「平成20年技術革新と労働に関する実態調査結果」より
また、最近増えているドライアイも、実は目の疲れと密接に関係しています。
健康な目の表面は涙で覆われており、まばたきをするたびに涙がゆきわたり、目をほこりや乾燥から守っています。ところが、何かを集中して見ているときほど、まばたきの回数は少なくなります。例えばパソコン作業時の1分間の平均回数は、リラックス時の3分の1以下に減ってしまいます(右図)。そのため目が乾き、ドライアイが生じやすくなります。
さらに、紫外線やエアコンによる室内の空気の乾燥、現代人に多い夜型の生活も、涙の分泌を抑制させる大きな要因。夜中までテレビやパソコンの画面を凝視する生活は、目にダメージを重ねる生活です。こういう人で、肩こりに悩まない人はいないでしょう。
目は紫外線の悪影響を受けやすいところ。多く浴び過ぎると、角膜を傷めたり、レンズ部分の水晶体が白く濁る白内障の原因になったりします。日差しの強い日は、帽子や日傘、サングラスを用意して目を守りましょう。
※坪田教授の研究データより
実際に、目の疲れからくる首や肩のこり、頭痛などは、多くの人が経験していることでしょう。また、目が疲れて集中力が落ちたり、注意力が散漫になったりすることも少なくありません。
こんな状態が続いていると、精神的な疲れやイライラにつながる場合も多く、自律神経のバランスが崩れて、涙の分泌量が更に減少するという悪循環を招くことになりかねません(下図)。
ドライアイの人は、それだけで心身ともに疲れやすいということ。ため込まないように、こまめに目をいたわることが大切です。
目を酷使するとまばたきが減り、涙が減少。その結果、目が乾いて目の疲れが増大します。
目の健康管理で大切なのは、疲れをためないこと。目を使う作業をするときは、右記のような目にやさしい環境づくりを心掛けるとともに、30分に1回は目の休息タイムをとるようにしましょう。
遠くの景色を眺める、目を閉じて深呼吸、席を立って体を動かすなどでも、緊張がほぐれます。また、疲労感や目の乾きを感じたときには、目の周りを軽くマッサージしたり、温かいタオルで目を温めたりするのもよいでしょう。乾きが強い時には目薬が必要ですが、頻繁に点眼するなら防腐剤が入っていないものを。防腐剤入りの目薬は、必ず点眼の回数を守ってください。
その代表が、ブルーベリーや黒大豆などの色素に含まれるアントシアニン。目から脳への情報伝達を助ける成分が含まれています。また、ほうれんそうなどの青菜に含まれる栄養成分ルテインも、目を疲労や老化から守る成分として注目されています。
目は思っている以上にデリケートな感覚器。必要な栄養と休息をとると共に、下記のように日頃からいたわる生活習慣をもちましょう。目の酷使は、目だけの疲れにとどまらず、心身までをいじめる結果になるということをお忘れなく。
慢性的な眼精疲労の原因で、意外に見られるのが、過矯正や、度が合わなくなったメガネやコンタクトレンズを使っているケースです。年に1度は、眼科で度数を確認し、目に合ったものを着用しましょう。また目の健康に自信がある人も、老眼かなと思ったら我慢は禁物。専門家に相談しましょう。
※ドライアイに詳しい眼科医・施設の情報はドライアイ研究会のホームページをご覧ください。http://www.dryeye.ne.jp/
1955年東京生まれ。’80年慶応義塾大学医学部卒業後、日米の医師免許を取得。’85年アメリカのハーバード大学に留学、'87年角膜クリニカルフェロー修了。2001年日本における最初のアンチエイジングの学術団体、日本抗加齢医学会を有志の医師と立ち上げる。『10秒間まばたきをせずにいられますか?』(日本評論社)、『長寿遺伝子を鍛える』(新潮社)など著書多数。
http://www.tsubota.ne.jp/