監修/イシハラクリニック院長・医学博士 石原結實

からだに必要な栄養素を取り込み、体内の有害物を便として排出する腸は、私たちの健康を根幹から支えているところ。と同時に、冷えやストレスの影響を受けやすく、そうなれば、からだ全体の調子にすぐに影響します。日々のストレスに加え、冷房などで冷えやすくなった現代人のからだは、腸の健康にとってピンチの連続。便秘に悩む人が年々増えているのもその表れです。気温が下がり始めるこの季節、腸内環境をしっかり整えて、丈夫な腸をつくりましょう。

便秘で悩む現代人が増えている!

便秘の有訴者率(人口千対)
―自覚症状を持っている者の割合―

(※厚生労働省「国民生活基礎調査」より)

心身の病気を招く腸内のメカニズム

あなたの腸内環境は大丈夫?

悪玉菌が増えるほど、汚れた血液が全身に

腸の役割というと、食べ物の消化・吸収を思い浮かべますが、実はそれだけではありません。私たちの腸の中には約100種類、約100兆個の細菌がすんでおり、それらの働きは、全身の機能と密接にかかわっています。健康なときには、ビフィズス菌や乳酸桿菌(かんきん)などいわゆる善玉菌が優勢になり、消化・吸収を促進します。そして腸が元気になれば、免疫の働きを高めてウイルスや病原菌の侵入を防いだり、発がん物質の吸収を妨げたりなど、有用な働きをしてくれるのでからだも元気です。

ところが、食べ過ぎたり、からだを冷やしたり、たばこやお酒の量の多い生活や、ストレスの多い生活をしたりしていると、悪玉菌が増殖し、腸の中でさまざまな有害物質をつくりだします。これらの有害物質は血管を通じて肝臓へ吸収され、肝臓から全身へと運ばれます。腸と肝臓は「門脈」という太い血管で直接結ばれており、腸の状態は、すぐに全身に影響するようになっているのです。肌あれや吹き出物が出やすくなるのも、その一つの表れです。

睡眠や精神活動を司るホルモンの働きにも影響

ところで、昔から「腹が立つ」や「腹黒い」など、日本には“おなか”は精神の象徴であるようにとらえたいい回しがたくさんあります。実はこれは、科学的にもうなずける話なのです。

なぜなら、脳と同じホルモンが腸の中でもつくられているからです。食べたあと眠くなる、イライラすると潰瘍(かいよう)になる、緊張すると下痢をするなど、腸が脳と似た反応をからだにさせるのは、このホルモン分泌と関係がありそうです。腸が汚れてくれば、ホルモンの分泌リズムにも影響が及び、心の状態まで不安定になることもあるのです。

おなかは「お中」とも書くように、心身の健康の中心になるところ。おなか=腸を健康に保つこと、つまり腸内環境を整えることが、毎日の健康を維持するうえでいかに大切かがわかります。

水のとり過ぎは、
冷えを招くもと!

水分の補給は大切ですが、、とり過ぎると体内にたまり、からだに悪影響を及ぼします。みぞおちを叩くとポチャポチャと音がしたり、おなかに手をあてて冷たく感じたりしたら、水分過剰のサインです。
 運動や入浴で代謝をよくして、利尿・発汗を促したり、腹巻きなどでおなかを冷やしたりしないなどの対策を。特にこれからの季節は、果物の食べ過ぎにも注意が必要です。

血管の老化・免疫力の低下・内蔵の機能低下など 睡眠障害・うつ病など 心身の病気の引き金に 汚れた血液が全身に循環(解毒のために肝臓がフル活動) 脳内ホルモンの分泌に影響 腸内環境の悪化 1.老廃物、腐敗物などの有害物質がたまる 2.善玉菌が減り悪玉菌が増える 3.免疫細胞の働きが低下する 4.ホルモンバランスが乱れる 食べ過ぎ・暴飲暴食 からだの冷え 心身の疲れやストレス 運動不足 睡眠不足 加齢

こんな人は要注意!

 食事は肉食が中心
 発酵食品が苦手
 たばこやお酒の量が多い
 運動不足が気になる
 睡眠時間が少ない
 肌あれや吹き出物が多い
 からだが冷えやすい
 いつもストレスを感じる

腸を元気にする食べ物で

毎日スッキリ快腸!

食物繊維と発酵食品が腸内環境改善のカギ

元気で若々しい腸内環境をつくるには、まずお通じをよくして体内の有害物質を排出し、腸内の善玉菌を増やすこと。そのためには、毎日の食生活が重要です。

肉中心の食事は悪玉菌が増えやすくなるのでほどほどに。逆に、積極的にとりたいのは、穀物、豆類、野菜、海藻類など「食物繊維」が多く含まれる食品や、ヨーグルト、みそ、しょう油、納豆、ぬか漬け、キムチなどの「発酵食品」です。

食物繊維は善玉菌のエサになり、有害物質を吸着して体外に運び出す働きがあります。発酵食品に含まれる乳酸菌などの善玉菌は、悪玉菌を減らして腸内環境を整えてくれます。

また、おなかが冷えていたり、腹筋が弱いと、便を押し出す力も弱くなります。適度な運動や、からだを温める習慣を持つことも便通をよくするための有効な手段です。まずは下で紹介するショウガ紅茶と腹筋運動から始めてみてください。1〜2週間続ければ、きっとその効果を実感できるはずです。

腸の働きを高める4大ポイント
食べ過ぎない
(特に肉などの
動物性食品)
食物繊維と
発酵食品を
しっかりとる
運動で腹筋を
刺激し排せつ
力をつける
入浴で
体温を上げ
血行をよくする

ショウガ紅茶と腹筋運動で「きちんと出る」体質に!

ショウガ紅茶

ショウガは食物繊維が豊富である上、殺菌作用や保温・発汗作用などの薬理効果があります。紅茶の色素成分に含まれる抗酸化作用・殺菌作用、ハチミツの緩下(かんげ)作用との相乗効果により、腸内環境を整え、排便を促します。

つくり方

熱い紅茶におろしショウガを1〜2つまみ入れ、ハチミツでお好みの甘味に。

※カフェインが苦手な人は、お湯に入れてショウガ湯でどうぞ。


らくらく腹筋運動

仰向けになり、足をおなかに近づけたり伸ばしたりします。膝は最初から曲げたまま行っても結構です。足を固定して上体を起こす腹筋運動よりもらくにできます。毎日続けましょう。

※10回単位で3セット。慣れてきたら徐々に回数を増やしていきましょう。

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