• 田中淳子
  • トレノケート株式会社 人材教育コンサルタント/
    産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント

Profile|たなか じゅんこ●1986年日本DEC入社。IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(共著、日経BP社)など。ブログ「田中淳子の”大人の学び”支援隊!」も好評更新中。

4月 たかが一歩、されど一歩

あるとき、後輩からこんな相談を受けました。「僕は、先輩たちが切り開いてきた道を歩いているだけで、自分ならではの武器や強みが見つかっていません。こんな状態で40代になろうとしているのですが、自信がなくて、不安でたまりません」と。

周囲からの評価が高い後輩がそう打ち明けたことに驚く一方、「私も同じだな」と思ったものです。その当時の私は50代に差し掛かっていましたが、さしたる自信もなく、「どうすればもっと確信を持って生きられるだろう」と自問自答していたからです。


このままでは何も変わらない――。そこで私は、新たな一歩を踏み出そうと資格試験に挑戦することを決意します。しかし、50代になってからの資格挑戦は、想像以上に困難を極めました。単語や数字が覚えられない。覚えたそばからどんどん忘れていく。泣きそうになりながら、半年間毎晩、休日になれば5時間も6時間も勉強して、どうにか合格することができました。

この挑戦のおかげでほんの少し自信がついただけでなく、小さな一歩を踏み出せば何かが変わることを学べたことは、私にとって大きな収穫となりました。


もしも何かに迷い、悶々(もんもん)とした日々を過ごしている人がいれば、とりあえず「一歩踏み出す」ことをおすすめします。踏み出しても、すぐに状況が打開できるとは限りませんが、その過程で自分の新たな一面を発見したり、新しい出会いがあったりと、小さな変化がきっと起こるはずです。

例えば、昼食は外食ばかりだったけど、お弁当をつくってみる。すると、栄養や彩りが気になり、お弁当の本を買って研究するようになるかもしれません。職場にお弁当を持参したら、普段はあまり会話をしない同僚から「お弁当おいしそうですね!」と声をかけられて、コミュニケーションが生まれる可能性もあります。


新たな一歩を踏み出すことは、自分を変える絶好のチャンスとなります。今までにやったことがないことであれば、どんな小さなことでも構いません。「こんなこと!?」と思うようなことでもよいので、自分の直感で、やりたいと思ったことを始めてみてはいかがでしょう。