破裂しやすいプラークに集まっていた免疫細胞
 動脈硬化の大きな原因は、血管の内壁を膨らませているプラーク。その中身は、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールや白血球の死がいです。

 血液中のLDLコレステロールが血管壁に侵入し、酸化して真の悪玉に変性すると、白血球の一つ、マクロファージという免疫細胞がかけつけて、酸化LDLを食べて処理をします。ところがマクロファージは満腹になると動けなくなり、そのまま血管壁に堆積されるためプラークは膨らんでいきます。

 プラークにはかたいタイプとやわらかいタイプの2種類があり、かたいタイプは少しずつ大きくなり内径を狭くし、進行はゆっくりです。一方、やわらかいタイプはまだ小さくてもちょっとした刺激で破裂する危険があります。これまではやわらかいプラークができる原因は不明でしたが、最近の研究で、やわらかい部分にはT細胞と呼ばれる、マクロファージとは別の免疫細胞が多く集まっていることが判明しました。

 T細胞は、外部から侵入してくるウイルスや細菌と闘う免疫システムの中では、司令官のような存在です。私たちの体を守ってくれるはずのこの免疫細胞が、実は血管の老化にも深くかかわっていたということです。なぜそうした反応が起こるのか、はっきりしたことは今後の研究成果を待たなくてはなりませんが、可能性として考えられるのが免疫バランスの崩れです。
免疫バランスを保つには腸の働きがカギ
 免疫細胞には、マクロファージやT細胞、NK細胞などさまざまな種類があり、さらにT細胞にもいくつかの種類があることがわかっています。

 このT細胞の種類のバランスが崩れたときに、過剰な免疫反応が起こり、血管などに炎症をもたらしているのではないかといわれています。

 そこで大切になるのは、免疫システムのバランスを保っておくことです。腸は免疫細胞が体の中で最も多く集まる、いわば免疫システムの最前線です。その中にいる免疫細胞のバランスが保たれ、それぞれの細胞が元気に働くためには、食べ物がとても重要です。そこで、まずは下に挙げたような食事を心掛けましょう。

 また、免疫の働きをコントロールしている自律神経のバランスも大切です。夜更かしや運動不足、ストレスが多い生活は自律神経の乱れに通じ、免疫システムのバランスを崩すもとになります。

 特に免疫細胞は、主に夜眠っているあいだにつくられるので、睡眠時間が不足すると、免疫細胞も十分につくれません。

 きちんと睡眠をとること、運動すること、リラックスすることは、血流の循環を促し、動脈硬化の予防にもつながります。ぜひ習慣にしてください。
腸の働きをよくする食習慣
●食事の量は腹八分
あぶらっこいものや肉などの動物性食品のとり過ぎは、腸に大きな負担を掛け、腸内の免疫機能の低下につながります。特に寝る直前の飲食は避けましょう。
●食物繊維をたっぷりと
食物繊維は善玉菌のエサになる上、腸内の有害物質を吸着して体外へ排出してくれます。さつまいもやにんじんなどの根菜類、こんにゃく、海藻類など、食物繊維を多く含む食材をバランスよくとりましょう。
●発酵食品を積極的に
みそやしょうゆなどの麹菌や、チーズやヨーグルトの乳酸菌は、腸内で善玉菌として働いて、免疫細胞を活性化します。また大豆を発酵させて納豆をつくる納豆菌も善玉菌が増殖しやすい環境をつくります。