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指導/島村トータル・ケア・クリニック院長・医学博士 島村 善行

たばことがん

最近の調査研究でもわかった「禁煙」こそ最も確実な予防策

 

日本人の死亡原因でいちばん多いのが「がん」。突然襲ってくる不運な病気と思われがちですが、実はれっきとした生活習慣病です。部位別死亡率で最も高いのは肺がんで、その最大の危険因子がたばこであることは、どなたもご存じのとおりです。

しかし、喫煙の害は肺がんだけにはとどまりません。2005年に厚生労働省が発表した多目的コホート研究の報告によると、たばこを吸う人は、がんの発症率が高いことがわかりました(左上図)。

たばこの煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素などの多くの有害物質が含まれており、なかでもタールは10種類以上の発がん物質が含まれています。発がん物質には、眠っているがん遺伝子を目覚めさせる「イニシエーター」と、目覚めたがん細胞の分裂を促進させる「プロモーター」があり、たばこの煙にはこの両方が多く含まれているのです。同研究でも、たばこを吸っていなければ、男性がん患者の約3分の1は発症を防ぐことができたとしています。

禁煙に遅すぎるということはありません。毎日喫煙していた人も禁煙を続ければ、がんの死亡率が低下することもわかっています(左下グラフ)。

また、たばこの火から立ち上る副流煙や吐き出される煙には、吸っている煙の何倍もの有害物質が含まれており、受動喫煙による被害も指摘されています。自分のためにも、家族やまわりの人の健康のためにも、たばこをやめる努力を。それが最も身近で確実ながん予防法です。

非喫煙グループと比較した
喫煙グループのがん発症リスク
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※厚生労働省がさまざまな病気の原因究明と、有効な予防法の開発を目的に、1990年より全国14万人の追跡調査を実施。データ解析によって検証されたさまざまな研究結果を発表しており、統計学的にも現時点で最も根拠あるデータです。
   
禁煙後の全がんの
死亡率の低下(単位:倍)
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自分に合った方法で、さあ、喫煙習慣から脱出を!
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グラフ

非喫煙者の死亡率を1とし、喫煙者の禁煙後の死亡率の変化を示す。禁煙年数が増すにつれ死亡率は低下している。
※ 平山雄らによる計画調査より
  • インターネットで
    自分の生活に合わせて進められるのがインターネットの利点。個人に応じたプログラムやアドバイスが得られるサイトなど、禁煙をサポートするさまざまなネットがあります。
  • 禁煙教室・禁煙外来で
    ニコチン依存度の高い人には、ニコチンガムやニコチンパッチでニコチンの量を減らしていく「ニコチン代替療法」が有効。いずれにしても禁煙は、1人で続けるより、専門医と二人三脚で進めたり、禁煙仲間と励まし合いながら頑張ったりするほうが挫折が少ないもの。医療機関や実施機関については、地域の保健所や市区町村役場へ問い合わせを。

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