臨床心理士、心理学博士 関屋 裕希せきや ゆき

東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野客員研究員。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて特任研究員として勤務。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、コンサルティング他、執筆活動を行っている。

永遠の命題「やりたくないことをやらなければいけないとき」

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「やりたくない。けれど、やらなければいけない。」

この、誰しも経験があるちょっとつらいシチュエーション。もちろん私にも心当たりがあり、その一つが洗濯です。ハンガーにかけて干すという作業が面倒に感じられて、どうしても先延ばしにしてしまうのです。「やる気が出たら洗濯しよう」と思うのですが、そんな日はいつまで経っても来ず、洗濯かごがいっぱいになってしまいます。

ここで試したいのが、心理学で明らかになっている原則「やる気よりも変えやすい行動に注目」です。たとえ洗濯へのやる気が出なくても、洗濯機のスイッチを押すことはできますよね。やる気が出なくてもまず行動してみる。おすすめは、小さな一歩を踏み出すことです。例えば、私のように原稿を書くときならば、まずは1文字書いてみる。1文字書いてみて、1行書いてもいいなと思ったら、1行書く。それでもやる気が出ないとなれば、やめてもいいことにしていますが、一度取りかかってしまえば思ったより進んだ、なんてことが多いのです。私たちは最初から全部を終わらせることを考えて、おっくうで面倒な気持ちをふくらませているのかもしれません。(ちなみに私の洗濯問題は、乾燥機付き洗濯機の登場によってあっという間に解決しました。環境に働きかけるという手もあります。)

もう一つ提案したいのが、自分の「やりたい」ツボを押してくれる何かと絡める方法です。目の前に、「やりたくないけどやらなければいけないこと」と「自分の好き・楽しい・面白い何か」を並べて、この2つをどうにか結びつけられないか、頭をひねってみるのです。例えば、取りかかるのに気が重い資料を作らなければいけないときには、「かっこいい!真似してみたい!」と思った資料のレイアウトに似せてみようと思うとやる気が出ませんか。いやいや、そんな簡単に思いつくわけない!と思う方は、練習問題で試してみましょう。

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「歯ブラシ」と「カピバラ」。

この2つの共通点を探してみてください。

人のもつ力は不思議なもので、一見つながるはずがないこの2つに、きっと何らかの共通点を見いだせたはず。この力を生かして、やらなければいけないことを「やってみてもいいかな」に変えるのも一つの手ですよ。

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