未治療ハイリスク者対策の現状と課題

特定健診の目的の一つは、未治療ハイリスク者を把握し治療を促すことで、高額医療の発生を予防することである。現状ではどの程度の未治療ハイリスク者が、健診をきっかけに治療を開始しているのだろうか。

ここでは、血圧を例に国保保険者の実データを分析して、その現状と課題について述べたい。

下図は、ある年度の健診において高血圧グレードI、グレードU、グレードVであった未治療者を対象として、翌年の健診受診状況と治療状況を評価したものである。

まず、高血圧未治療であった受診者のうち、高血圧グレードIの約3分の1が翌年の健診を受診していないことがわかる。高血圧区分が高くなるほど未受診率は高く、グレードVでは約半数の人が受診していない。

翌年の受診者のうち治療中ではない人を見ると、高血圧グレードIでは約半数が正常域となっているのに対し、グレードU以上ではほとんどが高血圧域にとどまっている。さらに翌年受診者の治療の有無を見ると、高血圧区分が高くなるほど治療する割合は高いが、グレードVであっても治療を開始した人は約半数にとどまっていた。

以上のことから三つの課題が浮かび上がってくる。

1.高血圧未治療者で特定健診を継続受診しない人が多い。

特定健診を受診させることは、高血圧未治療者を把握する唯一の方法である。現状では高血圧区分が重症となるほど翌年の未受診率が高いが、こうした問題への取り組みはほとんど行われていない。翌年の未受診者は保健事業の対象から漏れてしまう。

まずは、健診で要治療区分となった人を継続受診させることが重要である。前年度の未治療ハイリスク者に重点的な受診勧奨を行って未受診を防ぎ、保健事業の枠組みからドロップアウトしにくい仕組みを構築したい。

2.高血圧の程度により、翌年に正常域となる割合が大きく異なる。

軽症な高血圧未治療者は、翌年に正常域となる割合が高い。対して、高血圧区分がグレードU以上の人の多くは翌年も高血圧域にとどまり、高額医療の可能性が高まる。従って、一回目の健診結果による重点的な受療勧奨の抽出基準は、高血圧グレードU以上が現実的である。軽症な高血圧未治療者を対象とする場合は二回以上継続して高血圧区分となる人を対象とする方がよい。

保健事業の効率を高めるためには、高額医療リスクの高い対象者を優先するなど対象者選定方法にも注意したい。

3.高血圧区分が高くても、翌年までに治療を始める人は少ない。

現状では、高血圧未治療者で翌年治療している人の割合は30%程度にとどまっている。未治療ハイリスク者は健診時に医師などから指摘を受けても、未治療のままであることを考慮しなくてはならない。

今後は文書に加え、電話や訪問など密度の高い受療勧奨を行って、積極的に受療を促す仕組みを構築し、治療に結びつける必要がある。


記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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