医療費適正化計画

厚生労働省は、平成28年3月31日に、第3期の医療費適正化計画の策定に向けた基本方針を告示した。今後、各都道府県で、原則平成30年度までに新しい医療費適正化計画が策定されることになる。

医療費適正化計画は、18年の医療保険改革により導入され、20年度から5年を一期とした計画策定が行われることになった。これまで医療費見込みのほか、医療費適正化の取組目標として、特定健診・特定保健指導実施率、平均在院日数の短縮が設定されてきた。

医療費適正化計画については、昨年5月に成立した国民健康保険等の一部改正法で見直しが行われ、都道府県が設定する医療費目標は、@病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえること。A住民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進により達成が見込まれる医療費適正化の効果を踏まえることとされた。また、計画期間は医療計画とあわせるために、5年から6年(第3期は30〜35年度)に変更された。

今回の基本方針は、この法改正を受け、全面的に見直しが行われた。

都道府県の医療費目標についてだけ述べると、まず、入院医療費については、これまでは平均在院日数の短縮が目標とされていたが、今回は、今後医療計画において高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4類型で病床機能の分化と連携が図られることから、この成果を踏まえることに改められた。

また、外来医療費については、第一段階として、平成35年度に向け、@特定健診実施率目標70%以上、特定保健指導実施率目標45%以上、A後発医薬品の使用割合80%以上の全国目標が達成された場合の医療費の縮減額を反映する。そのうえで、なお残る一人あたりの医療費の地域差について、データヘルスの推進、糖尿病重症化予防の推進、重複投薬の是正などの取組を推進することにより、地域差の縮減を図ることとしている。

翻ってみると、医療費適正化計画は、小泉政権下の18年の医療保険改革で難産の末に生み出された。当時の経済財政諮問会議では民間議員から、医療給付費の伸び率管理という考え方が示された。これは、まず、医療給付費の伸びは基本的には経済成長の伸びの範囲に収めるように目標を設定する。そのうえで、目標を上回って医療給付費が伸びる場合には、保険給付の範囲の見直し(患者負担増)、診療報酬体系・支払い方式の見直し、診療報酬の大幅なマイナス改定などの措置を講じ、目標管理を実現するというものであった。

これに対し、当時の厚生労働省は、医療給付費がその管理の目標を超えた場合に、患者負担の引き上げや診療報酬の引き下げ等の政策を発動するというルールをあらかじめ決めておくことには問題が多い、それは、将来のその時点で改めて国民的議論を行い、決めなければならない事柄であると主張した。

そのうえで、厚生労働省は、保険財政における医療給付費を目標管理するのではなく、医療費全体について、健康づくりや入院医療機能の強化を進めることによって、コントロールしていくという医療費適正化計画を提案し、これが、経済財政諮問会議でも了解が得られ、ようやく一連の議論は決着した。

近年、医療費の伸びは比較的落ち着いている。このすべてが医療費適正化計画によるものではないだろうが、現在の基調が維持できれば、再び伸び率管理のような議論を引き起こすこともないだろう。

医療費適正化については、目標の設定は比較的容易である。しかし、実際に目標を達成するのは、容易ではない。病床機能の分化と連携は各医療機関の病床再編が必要になるし、外来医療費の適正化についても医療機関の診療の在り方の変化がもとめられる。健康づくりには国民一人一人の行動変容が必要である。国、自治体、医療機関、保険者、地域住民の総体的な取り組みが求められている。


記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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