こくほ随想

超高齢社会への趨勢は変わらず

1月末、新しい人口推計が発表された。2010年の国勢調査を踏まえて一定の仮定を置き、50年後の2060年までの将来人口推計を行ったものである。


わが国では、移民による人口移動はごく小さいので、出生と死亡の2つの要素が人口変動の決定的要因になる。そのそれぞれについて、「高位」「中位」「低位」の3つの仮定を置いて推計が行われているが、一般的には中位推計により将来人口が語られている。

前回推計以後の実績では、合計特殊出生率は中位推計を上回る実績がみられた。一方、死亡率が中位推計を超えて低下したため、寿命は中位推計を若干上回って伸びた。この実績を踏まえて、新推計では合計特殊出生率および寿命ともに、前回推計よりも高く設定している。

合計特殊出生率の推計は、「婚姻モデル」に基づく。結婚した夫婦から子どもが生まれることを前提に置くもので、国際的にはわが国独自のモデルだと言われている。

わが国の婚外子(非嫡出児)の割合は、上昇傾向にあるとはいえ2.1%(2010年)で、欧米諸国に比べ極めて低い。それに対して、最も高いスウェーデンは54.7%(2008年)、低いイタリアでも17.7%(2007年)だから、欧米諸国では婚姻モデルは成り立たない。

婚姻モデルでは、生涯未婚率が出生率の決定的な要因になる。その上で、初婚年齢、夫婦完結出生児数(結婚した夫婦から生まれる子ども数)、離死別再婚効果係数(離死別、再婚により変化する子ども数)が影響する。前回推計以降、初婚年齢の上昇傾向は変わらないが、他の3つの要因には改善する傾向がみられる。そのため、合計特殊出生率については、旧推計の1.26から新推計では1.35に回復するという仮定が置かれた。

しかしそれでも、将来推計人口の基調は前回推計とほとんど変わらない。総人口は2048年(前回は2046年)に1億人を割り、2060年には8,674万人へと減少し、現在の3分の2になる。

推計の最終年次の高齢化率も、前回の40.5%が今回は39.9%に改善するにとどまる。合計特殊出生率の上昇による若返り効果の一部が、寿命の伸長により打ち消されている。今後、生活習慣病対策や介護予防対策等の政策効果が発揮されれば、新推計を超えて寿命が伸びる可能性がある。

主要先進国の2060年の高齢化率(国連推計)をみると、30%を超えるのはイタリア(31.4%)とドイツ(30.1%)のみで、わが国はその両国をも大きく上回る。

わが国の2060年の高齢化率は、中位推計では39.9%であるが、出生・死亡がともに低位のケースでは44.2%、ともに高位のケースでも35.8%である。いずれも前回推計(2055年)とほとんど変わらない。どう転んでも、わが国が突出した高齢化を遂げることは避けられない。

しかも、高齢者の年齢構造がより高年齢層にシフトする。2060年には、65歳以上の高齢者のうち約3分の2が後期高齢者、ほぼ2分の1が80歳以上になる。

この現実にどのように向き合うか。課題は高齢者も含めて全国民が能力に応じて支え合う社会を構築することだろう。




記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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